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渡辺英一郎 院長の独自取材記事

夕やけの丘動物病院

(横浜市青葉区/市が尾駅)

最終更新日: 2021/10/12

港北ニュータウン・見花山の近くにある夕やけの丘動物病院。通り過ぎる人に、ヘアーサロンのような印象を与えるガラス張りと印象的なポップアートの壁面は、地元横浜中心に活躍するアーティストRocco Satoshi(ロコサトシ)さんに依頼したもの。「夕やけ橋から見た夕焼けに感動しそのまま院名にしたんです」言葉を選びながら話す姿に獣医師としての志の高さが感じられる渡辺英一郎院長先生を取材しました。 (取材日2007年1月23日)

病気の時だけでなくトータルな診療ができる地域で開業したかった

この場所に開業した理由から教えて下さい

いろいろ候補物件があった中で、自分で最もやりたい診療ができることを大切にした結果、この場所を選びました。開業は2001年6月。センター南・北、仲町台という新興住宅地は、人口比で飼育頭数が多いだけでなく、ペットに対しての意識そのものが高い。そもそもペットを飼う事を想定して引越してきているヤングファミリーも多く、ペットを家族として受入れることを当たり前と考える人が多い。そういう街でトータルな診療がしたい。それがここを選んだ理由です。日頃のケア、食事の摂らせ方、しつけの方法。極端な事を言えば、「どういう犬を飼ったらいいのか?」といった相談からアドバイスもできると思い、ここで開業しました。

ポップアートが印象的ですが、開業に当たってこだわったのはどんなところですか?

外のウォールペイントは、知人の紹介で、横浜を中心に活躍されているアーティスト、Rocco Satoshi(ロコサトシ)さんにお願いしました。待合室の立体アートは昔から好きだったジェームズ・リジィの作品です。どれもポップなイメージですが、若い家族の多い街だからということだけではなく、昔のとっつきにくい、窓の小さな動物病院のイメージを払拭したかったんです。前面だけでなく、内部もガラス張りを多くしました。どんな診察をしているのかがわかることは、とても大切だと思うのです。診療の様子を他の飼い主にオープンにすることで、飼い主として必要な情報を持ち帰ってもらう事ができる。そういう意味でガラス張りにこだわってショッピングの帰りに気軽に連れてきてもらえるような敷居の低いオープンな病院でありたいと思っていたんです。

何年先かわからないけど、野生動物に関わりたいというのが夢

やはり幼い頃から獣医師を目指していたのですか?

高校で進路を考える頃には獣医師になる事を決めていました。野生動物に関わる仕事に進みたいという思いもありました。しかし、現実的にはそれで生活していくのは難しい。そう判断して獣医師への道を選択しました。実はいまだに野生動物に関わる仕事に携わりたいというビジョンを持っているんです。10年先か、20年先かわかりませんが。今は人間が作った、人間の家族として存在する動物を幸せにする事で収入を得ていますが、いつかはそれを野生動物に対して還元したい。絶滅が心配される希少動物とかいうよりも、例えば、人里に下りて来る事が社会問題になっている、野生のクマやシカたちの生活圏を守る活動に興味があります。問題の原因を突き詰めると、結局、人間が作り出している事に気付く。山に人間の手が入って、野生動物の生活圏が狭まり、食料を探しに人里に下りてくる。そこには、畑という簡単に食事にありつける環境がある。畑に依存する事で野生から離れ、自然淘汰される数も減り、更に数が増え、生態系バランスが崩れる悪循環。野生動物を保護する事ももちろん大切だけど、その前に環境を整備する必要がある。自分ひとりでできることじゃなく、多くの人が関わるプロジェクトだから、人的ネットワークや資金も必要だと思う。いつかそういうプロジェクトに関われるようにいまから自分自身、準備を始めていきたいと思っています。

診察をされていて多くの飼い主に共通する課題はありますか?

やはり、しつけの問題が一番大きいと思います。歴史的な背景が違うから仕方ないけれど、日本ではちょっと前までは家の中で飼っている犬を「座敷犬」という言葉で区別するくらい珍しかった。外にいる「番犬」だから、同じ家族として生活するために必要な「しつけ」を身につけさせてこなかった。だから欧米に比べて、いまだに多くの公共施設に入れない。粗相の問題とか、吠えてしまうとか。飼い主のしつけやモラルの向上が、犬と一緒に行ける場所を拡げることは間違いない。そしてしつけは仔犬の時が大切。陽気な性格の犬はまだ良いが、シャイな犬の場合、大きくなってからでは治せない。うちの病院では日曜日に「パピーパーティ」という、しつけ教室を開催しています。子犬同士を対面させ、遊ばせながら、犬の基本ルールを学ばせること。知らない人間との出会いに慣れさせること。小さな頃に、多くの犬と多くの人間に接することができるかどうかで性格が変わるからです。しつけの重要性を鑑みると、獣医がもっと積極的に関わらなくてはいけないと思っています。高齢者が大型犬を飼うのは、体力的に難しいと言われていますが、しつけの問題がクリアになれば、もっと楽にケアできるはずです。

休みの日には家内と愛犬のユリアと、油壺にスキューバやつりに行きます

プライベートはどう過されているのですか?

緊急な場合に備えて、いつも携帯に連絡をもらう体制になっているので、完全にON、OFFが分かれているわけではないんですが、休日には時々ドライブに出掛けます。油壺には、家内と愛犬のロットワイラーのユリアとスキューバダイビングや釣りに行きます。犬は本能で泳げると思っていたんだけど、ユリアが泳げなかったのはびっくり。仕方が無いので泳ぎ方を教えました(笑)。アメリカンショートとチンチラのミックスのレオンは残念ながらいつもお留守番です。

今後どういった診療を目指されますか?

病気になる前に、獣医師にできることを探したい。例えば体脂肪測定を通じて、数字で飼い主さんが「あげすぎ」を自覚できれば食事を改善できるはず。病気になる確率も格段に下がる。来院頻度が増えれば、獣医自身も細かい変化に気付き、より適切な診療をすることができると思う。また横浜夜間動物病院との提携によって、急な夜間診療への対応や、迅速にCT検査を受けられる体制も整えた。これからも何でも相談できる獣医師になるための努力を続けたいと思っています。

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