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山本剛和 院長の独自取材記事

動物病院エル・ファーロ

(大田区/武蔵新田駅)

最終更新日: 2023/01/22

東急多摩川線武蔵新田駅から徒歩6分。ドラッグストア「ぱぱす」の横に、明るいラテン調の建物がある。燦々と輝く南国の太陽を思いおこさせるような、このクリニックが「動物病院エル・ファーロ」。院名はスペイン語で「灯台」を意味する。動物たちの希望の光になれるようにという、山本剛和院長の思いが込められている。山本先生は動物の傷の治療に対し、消毒をしない、乾燥させないという「湿潤療法」を取り入れた第一人者。そのため、全国から先生を頼って相談が相次いでいる。東日本大震災の支援活動の一環として、被災者が飼えなくなったペットを引き取るなど、動物への愛情は計り知れない。山本先生の優しさは動物へも伝わるらしく、引っ掻き傷のないきれいな手をしているのが印象的だった。 (取材日2014年7月31日)

困っている動物たちや飼い主の道しるべとなるために

まず、病院名の意味について教えていただけますか?

「エル・ファーロ」というのは、スペイン語で「灯台」という意味です。広い海のなかで心の拠りどころとなる灯台のように、病気に悩む動物たちやそのご主人の道しるべになりたいと、そういう思いを込めました。もともと、スペインを旅行した際に、土地の風土や文化をとても気に入ったということもありますし、ダリ、ピカソといった画家の作品や音楽など、スペインに由来するものが好きなんですね。それで、この国の言葉を使いたいなと思いました。

そんな先生の思いに惹かれて多くの方が来院されているだけでなく、ネット上でもたくさんの質問が来ているようですね。

おかげさまで(笑)。今のところ、ネットでの質問というのは、当院の特色の一つにもなっています。もともとは、私自身が新しい治療法などについて興味を持って調べたり、勉強したりするなかで、ほかの先生から相談を受けたり、飼い主さんを紹介されるようになりました。さらに、飼い主さんのほうからも、別の病院で治らなかったり、手術に不安があったりする場合に相談を受けることが増えてきたんです。困った方の役に立てるのであればぜひ相談に乗りたいですし、紹介も受け付けるようにしています。

傷口を乾かさない、消毒しないという新しい治療法

診療の面で先生がこだわっている部分はどんなところですか?

まず第一に、飼い主さんの話をよく聞くということですね。今どんな問題や不安を抱えていて、それに対しどんなことを希望されているのかをきちんと把握する。あまりこちらの考えを押しつけるような診療にならないように心がけています。たとえ獣医学的には正しいと思われることでも、一方的に押し付けるような診療は獣医師の自己満足になってしまう可能性があると思っています。ですから、出来る限り飼い主さんが納得されたうえで検査・治療を受けていただけるように心がけています。また、個人的に興味を持って勉強しているのは、傷の治療についてです。実は、獣医師の場合、人間では形成外科にあたるような、創傷を専門に扱う分野がないので、手探りで調べたり、研究したりしながらもう10年以上になりますね。

先生が実践する傷の治療とはどういったものなのですか?

かつては、傷ができると、ばい菌が入ってはいけないからといって消毒し、それでジメジメして蒸れたりすると、治らないから乾いたガーゼで覆って、また消毒して、また乾かして……という方法が一般的でした。このような”消毒して乾かす”という治療法は100年くらい前から殆ど変わって来なかったんです。ところが近年になって、実はこのような方法は理論的に間違っているということが様々な研究から明らかになってきたんです。つまり、傷は乾燥させずに、湿潤な状態に保つのが正しい管理法なのです。ヒトや動物の体表は表皮に覆われて乾燥から守られていますが、傷が出来て部分的に表皮が失われると、真皮や皮下織、筋肉は乾燥して壊死し、その結果傷が深くなって治り難くなってしまい、また組織が乾燥することで強い痛みが生じます。これに対し、傷を乾かさないで治療すると治りが早く痛みも少ないので、結果として患者に与える負担が少なくて済みます。傷を湿潤状態に保つために使用する保護材を創傷ドレッシング材と言います。ドレッシング材には目的や傷のタイプによって色々な種類があり、これらを適切に選んで使うことで、かなり広範囲の皮膚欠損創でも手術という方法を用いずに治ってしまうケースもあります。このように、ドレッシング材を使って保存的に傷を管理する方法を、それ以前の「乾燥・消毒による方法」と区別するために、「湿潤療法」という名称で呼ぶこともあります。

これまでのやり方では、何が問題になるのですか?

傷を乾燥させることに加えて、消毒という行為にも問題があります。消毒というのは、ばい菌を殺す目的で行う訳ですが、実は傷を治そうとする生体そのものの細胞も殺してしまうんです。しかも菌を殺すよりもずっと低い濃度の消毒薬でも、生体細胞は障害を受けます。つまり傷を消毒すると「敵(ばい菌)」を殺すよりもずっと効率良く「味方(生体細胞)」を殺していることになるんですね。ここで大切なのは、そこに存在している菌が実際に感染を引き起こしているか、つまり生体に対して悪影響を与えているのか、という点なんです。ヒトや動物の体表には常在菌と呼ばれる細菌たちが住み着いています。常在菌に守られている、と言ってもいいかもしれません。細かい数字は省略しますが、これらの常在菌や、傷の上で一時的に増殖する一時菌などの細菌は、異物や血行不良、壊死などが存在する場合の特殊な状況を除いて、感染状態を引き起こすレベルにまでは増えないのです。ですから、そもそも必要のない殺菌・消毒をしようとして、逆に治癒に必要な細胞を殺滅してしまったり、必要のない抗生物質を投与して耐性菌を作ってしまったりすることが問題になります。

そのような治療法でどんな傷でも治ってしまうのですか?

いいえ、ドレッシング材を使って傷を保存的に治療するという方法は、幾つもある選択肢の中のひとつです。ひとつの方法だけを”押し付ける”ようなことはしていません。「ドレッシング材による創傷管理」のみに拘っている訳ではなく、私は動物の皮膚形成外科全般に興味を持っていますので、もちろん皮膚移植や皮弁手術などの形成外科的なテクニックを用いたり、他の方法を併用することもあります。特に受傷から長期間が経過して慢性化した創傷は保存的な方法では非常に治り難いので、多くの場合は手術的な方法を選択します。傷のタイプや状態、位置、動物の性格や飼い主さんの希望などにより、状況に合わせてベストな方法を選んで頂くようにしています。ただ、褥創(床ずれ)の場合は、手術による方法はあまりお勧めしていません。褥創の場合は継続的なケアが出来ないと、手術で一時的に治ってもすぐに再発してしまいます。また褥創が出来る動物は大抵、高齢で全身麻酔のリスクが高く、褥創自体も1ヶ所とは限らないので、手術による負担も大きくなります。褥創のような傷こそ、いわゆる「湿潤療法」の良い適応となります。

褥創(じょくそう)とはどのような症状なのですか?

主に高齢で寝たきり状態になった動物に発症する病気です。寝たきりになると本来地面に接する場所ではない部分が、長時間地面やベッドに接触することで圧迫されます。それによって血行不良が発生し、圧迫を受けた組織が壊死してしまうのです。若い動物でも脊髄損傷などで寝たきりになれば、褥創が発症する可能性があります。褥創の発症率がここ最近で急に増えたというわけではありませんが、飼い主さんの意識の変化で来院や相談数が増加したという印象です。これまでは褥創を「病院に行ってもどうせ治らない」と考えていた飼い主さんが、「治してあげたい」と考えるようになったのでかもしれません。残念ながら褥創の場合は完治前に最期を迎えてしまう動物も多いので、治療というよりケアと考えていただいた方が良いかもしれません。しかし完治させることはできなくても、適切なケアをすれば症状はかなり改善させることができます。痛みや臭いを抑えてあげられるので、「最期をできるだけ良い形で迎えさせてあげたい」と願うならば、褥創をケアするクリニックがあるということを知っておいて欲しいですね。

動物に対する愛情から被災者支援まで

傷の治療以外の診療では、内視鏡を導入されたそうですね。

一昨年に内視鏡を導入したことによって、当院で対応できる診療内容の幅が大きく広がったと感じています。内視鏡の用途は大きく分けると二つあります。一つは、誤って飲み込んでしまった体内の異物を発見して取り除くこと。実際の例としては、ワンちゃんが間違って飲み込んでしまったボールや靴下、オモチャ、吸盤などを、内視鏡で見つけて取り除きました。そしてもう一つは胃腸の病気の検査です。犬や猫でよくみられる慢性の下痢は食事療法や投薬治療で治ることも多いのですが、なかにはそれだけでは改善しないケースもあります。その場合の検査の一環として、内視鏡を使った腸の組織検査によって原因究明を行う場合があります。組織検査にしても異物採取にしても、お腹を切開せずに解決できる可能性があるので、動物たちの体に負担が少ない形で検査・治療ができるようになりました。

先生は小さい頃から動物が好きだったんですか?

そうですね。子どもの頃から動物に関係する仕事に就きたいとは思っていました。実は子供の頃に福島県の南相馬市に住んでいたことがあるんですが、そのころ近くに馬やポニーのいる牧場があったんです。すぐに馬がとても好きになり、小学3年生くらいから中学校に入るくらいまで、夏休みも冬休みも毎日のように牧場に通いつめ、馬に乗ったり世話をしたり牧場の仕事を手伝ったりと、まさに馬漬けの日々を過ごしていました。そこには馬の他にも犬や仔牛などもいたんですが、そうして動物たちに囲まれて過ごしているうちに、“獣医師”という仕事があることを知り、将来の目標のひとつとして考えるようになったんだと思います。その牧場は今もあるのですが、東日本大震災にともなう福島第一原発の事故の影響で、馬たちは南相馬市の牧場から別の場所へ避難させられて、現在は牧場としては機能していない状態だそうです。震災後当院では、福島県から避難してきたものの、住宅の事情などで飼い続けることができなくなってしまった方の犬を預かったりしていましたが、みんな元の、あるいは新たな飼主に引き取られて行きました。今後も色々な形で、飼い主の方や動物たちのお役に立つことができればと考えています。

最後に読者へメッセージをお願いします。

犬や猫などの動物たちとともに暮らすということはとても素晴らしいことです。しかし、いつも楽しいことばかりとは限りません。当然、怪我をしたり病気になることもありますし、鳴き声による騒音や咬傷事故などのトラブルが起きてしまう場合もあります。また動物だけでなくヒトも病気になります。自分に何かあったときにかわりに面倒を見てくれる人がいるのか?仕事で海外に転勤になったらどうするのか?まぁあまり細かいことまで考え過ぎて、動物と暮らすことが怖くなってしまっては元も子もありませんが、やはりある程度のことは想定しておく必要があると思います。そして、当たり前のことですが、“命には限りがある”ということを知っておいて欲しいと思います。これは見方によっては悲しいことかも知れませんが、犬や猫など小動物の寿命はヒトのそれよりずっと短く、だから彼らは私達よりも早く齢をとります。だからこそ、彼らと過ごす時間を大切にして、出来るだけ幸せに暮らせるように全力で彼らを守らなければなりません。獣医師はそのお手伝いをすることは出来ますが、基本的にこれは飼い主さんの役割です。ですから、実際に動物を飼う前に、まずはその動物についてよく勉強して欲しいと思います。動物を家族として迎え入れるためには、事前に様々な準備が必要です。ワクチンや病気のこと、食事のこと、躾の方法、困ったときにどうすればよいか、知っておくべきことが沢山あります。家族の一員として愛情を注ぐのはもちろんのことですが、また同時にヒトとは違う動物である、ということを認識するのも重要なことです。ヒトとは食事の内容も違いますし、コミュニケーションの取り方やしつけの方法、病気の際の症状も違います。愛情を注ぐことと擬人化することには大きな違いがあると思います。最近は何かを調べるのにインターネットで検索するのが一般的ですが、ネット上の情報にはかなりいい加減なものや偏った情報が含まれています。動物の健康や命に関わるような重要な事柄は、やはり専門家である獣医師に相談して頂くのが一番良いと思います。それから最後にもう一言。現在、日本国内では、毎日数百頭もの犬・猫たちが処分されています。もしもこれから動物を飼おうと思っている方がいましたら、ペットショップで流行りの犬や猫や珍しい動物を“買う”のもいいですが、このような動物たちの里親になるのも選択肢のひとつである、ということも覚えておいて欲しいと思います。

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