―飼い主と接する際に気をつけていることはありますか?
私は診療前に、飼い主さんとたくさんお話するようにしています。「名前はどうやって決めたの?」、「どうしてこの子を選んだの?」など、簡単なお話からはじめることで、飼い主さんとの距離を縮めていきたいのです。その間は、ペットたちは診療台には乗せずに飼い主さんに抱っこしていてもらっています。そうすると、だんだんペットたちの緊張感も解れて場所にも私にも慣れてくれます。また、飼い主さんが私と仲良く楽しく話している姿を見ることで、ペットたちも私を信頼して心を開いてくれるのですよ。ペットたちは飼い主さんの表情や行動を見てその気持ちを読み取ってしまうもの。そのため、例えば注射をする時でも、針が刺さる瞬間に飼い主さんの顔が強張ってしまうと、ペットたちも恐怖心が強まってしまうのです。そのため当院では、飼い主さんにも気付かれないように会話の途中で注射をしたりしています。そうして、いかにペットたちに「怖い」という感情を与えないように診療していきたいと思っています。
―先生の治療方針をお聞かせください。
私は、必要以上の診療はしたくないと思っています。経過観察で済む可能性があるにも関わらず、とりあえずの検査をしたり、副作用の強いお薬を処方したり、症状がほとんど出ていないのに念のため注射をしたり。そういった必要以上の診療は、ペットたちの体や、飼い主さんの金銭面や時間面など、余分な負担をかけてしまいます。私が大切にしたいのは、何より毎日を元気で過ごしているかどうか。起きて、ご飯を食べて、遊んで。トイレも問題なく行っている。もちろん、この先悪化する可能性がある場合にはしっかりと治療していきますが、経過を見ていても問題ない場合は過剰な診療はしたくないのです。治療や検査の優先順位をはっきり提示することで、必要最低限の診療だけを行っています。
―最後に、今後の展望をお願いします。
どんな病気であっても、どんなペットであっても、気軽に来院できる医院でありたいと思っています。来ていただければ、それがどんな病気なのかを診断し、ペットそれぞれに合わせた治療を行っていく。専門外であるならば、よりよい治療が受けられる医療機関をご紹介しています。飼い主さんにとって何が最善なのか? それを提供していくことこそ、開業医の役目なのだと思うのです。私はこれまで、どんなペットでも症状でも、診断だけはしっかりと付けられる獣医師になりたいと考えて勉強してきました。そのため、開業する際には診断に必要な超音波やレントゲンなどの機器もそろえました。そうして、「何かあればとよす動物病院に来れば大丈夫」と思っていただけるよう貢献していければうれしいですね。めざすのは、飼い主さんと心の距離が近い動物病院。体重を測りに、爪を切りに、お顔を見せに来てくれるだけでも構いません。そんな、気軽に立ち寄れる身近な存在になれるよう精一杯尽力していきたいと考えています。
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