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山崎泰輔 院長の独自取材記事

そよかぜ動物病院

(さいたま市中央区/南与野駅)

最終更新日: 2023/01/22

南与野駅から徒歩2分。多数の獣医師、看護師、トリマーを擁する「そよかぜ動物病院」を訪ねた。総勢16人のスタッフを束ねる山崎泰輔院長は腰が低く、「患者さんから教わることが多い」と謙虚に話す努力家だ。開業してから研鑽を積み、緑内障手術、膝前十字靭帯の手術、難治性の皮膚病治療、さらにはがんの免疫療法など、他の動物病院がなかなか手掛けない専門的な診療技術も身に付けた。何より飼い主とのコミュニケーションを重視し、少しでもペットの病気を良くしようという思いを共有しようと心がける。インタビューでは、同院の診療や運営の方針、特に力を入れている診療について、わかりやすく語っていただいた。 (取材日2015年6月11日)

獣医師8人が得意分野を生かして幅広く診療

大勢のスタッフが働く、大規模な動物病院ですね。

2015年6月現在、獣医師8人、看護師4人、トリマー4人で計16人が勤務しております。埼玉県内全域から来院されますし、県境をまたいで栃木県や東京都内から来られる方もいらっしゃいます。遠方から来院される飼い主さんの相談内容は、ペットの海外渡航に関することが多いですね。予防接種や書類の手続きなどいろんな準備が必要ですが、当院の副院長が成田空港の検疫所に勤務していた経験を持つため、この分野の知識が豊富だからです。もちろん、来院される方のほとんどは、さいたま市周辺の住民です。この地域には動物病院が多数ありますが、飼い主さんの意識も高くて、セカンドオピニオンで来院される方も多いですね。

多くの獣医師がいることのメリットは、何でしょうか?

それぞれの獣医師が得意分野を持っています。例えば、私は犬、猫がメインで、軟部外科、内科が得意です。副院長は特に子犬と子猫に強く、ハムスターやウサギなどの小動物も得意です。各獣医師がこうした得意分野を生かして診療しますから、幅広い診療が可能です。また、特に、皮膚科、整形外科、眼科、再生医療は専門的で高度な診療を行って、他の動物病院にはない特徴を打ち出しています。さらに、多くの手術などを実施するためには、獣医師も看護師も人数が必要です。多数の症例を経験することが、診療のレベルを高めることにつながります。

皮膚科の診療の特徴をお教えください。

皮膚科では、長年、皮膚病に悩まされ、他の動物病院で治療してきたがなかなか治らないといった事例を、引き受けさせていただいています。皮膚科専用の詳細な聞き取りシートがあり、症状、これまでの治療、飼育環境や、全身の状態まで時間をかけて細かくチェックし、飼い主さんと相談して個々の動物に合わせた治療や生活指導を行います。他院の治療への不満を口にされる飼い主さんが多いのですが、私たちは客観的で科学的な視点で改めて検査や診断を行い、治療法をご提案することを心がけています。

眼科の緑内障手術、整形外科の膝前十字靭帯手術に注力

眼科や整形外科の診療に力を入れておられるのは、なぜでしょうか?

私自身が不得意であったからですが、私だけではなく、大多数の獣医師がそうなのです。獣医師はオールマイティに幅広い分野を学びますが、眼や骨はどうしても後回しになりがちです。そこで、逆にこうした領域は他の病院も手掛けないので医療ニーズが高いだろうと考えました。眼科では、特に緑内障治療のニーズが高まっています。高齢化で緑内障にかかる犬や猫が増えていますが、目薬をさす程度ではコントロールできない疾患です。視野狭窄だけでなく、強い痛みもありますから、その痛みからペットを解放してあげたくて、緑内障手術について研鑽を積みました。整形外科では犬の膝の手術が全体の半分を占めます。特にトイプードルやチワワは、先天的に膝蓋骨の脱臼症を持っていて、前十字靭帯断裂を起こしやすいのです。そのため、前十字靭帯断裂の手術には積極的に取り組んでいます。

先端的な治療も行っていると伺いました。その概要をお話しください。

代表的なものは、がんの免疫療法です。犬や猫も、人間と同様に死因のトップはがんです。そして、がんの標準治療法は、手術、抗がん剤、放射線と、これも人間と同じなのですが、どれも身体にダメージを与える治療です。飼い主さんたちは、あまり積極的にそれらの治療を望まないことが多いのです。そこで、なるべく副作用の少ない治療でがんと付き合っていく方法として、当院では自己のリンパ球を体外で培養し、再び体内に戻してがん細胞を攻撃させる免疫療法を導入しました。もちろん、手術や抗がん剤治療も行っていますから、それらと併用することも可能です。免疫療法はQOLの向上には高い効果が期待できますから、標準治療の副作用で弱った身体を回復させることも期待できます。ただ、費用が高額になりますから、そこが問題ですね。

そうして次々に、専門的な治療や新しい治療に挑戦されているのは、なぜですか?

飼い主さんに感謝されたいという思いが強いのです。有効な治療法があって、私がもう少し努力すれば、それを提供できるのであれば取り組むべきだと考えます。昔、眼科や整形外科が苦手な時代は、目の前にニーズがあっても、大学病院に紹介するなどで逃げることしかできませんでした。ずいぶん悔しい思いをしました。新しいことに挑戦する勇気と、セミナーに通う少しの努力があれば、飼い主さんに喜んでいただけるのです。今でも、皮膚科、眼科、整形外科のセミナーには通っています。

飼い主との信頼関係を築いて、「あきらめない医療」を提供

16人もの所帯になると、院長としてスタッフをまとめていくのも大変だと思いますが。

私は、厳しく管理するというより、スタッフの自主性に任せるというスタンスです。スタッフとのコミュニケーションも、院長権限を振りかざすということではなく、冗談も言い合いながら和気藹々とした雰囲気で接しています。飼い主さんの中には「何を笑っているんだ」と感じる方もいるかもしれませんが、多くの方がやはり笑顔があふれている環境の方が好ましいと感じると思います。何より、スタッフにとっては楽しく仕事できる環境なら、伸び伸びと実力を発揮できると考えています。この職場が好きであれば、スタッフが自主的に「ここを良くするために何かをしよう」と考えてくれますし、お客様を大切してくれます。

飼い主さんとのコミュニケーションでは、どんなことを心がけていますか。

多くの飼い主さんは私より年上で、人生の先輩です。獣医師という立場で上から教えるのではなくて、むしろ飼い主さんからいろいろ教わるつもりで接しています。実際、飼い主さんの中には、人間の医師もいらっしゃいまして、教わることも多いです。どうしたら若輩の私に心を開いてくださるのかと常に考えながら、一緒に病気と闘っていくという気持ちを持っていただけるように努力します。10分ほどの診療時間内に飼い主さんと信頼関係を築くのは難しいので、診療後にフォローアップの電話をするなどして、獣医師が飼い主さんと気持ちを分かち合うような姿勢を見せることが大切です。スタッフにもそう指導しています。人間なら難しい病気でもあきらめず、治療に不満なら別の病院に行きますが、動物の病気では飼い主さんが先にあきらめてしまうことも多い。あきらめずに治す、少しでも良くするという気持ちを持っていただきたいのです。

先生が獣医師をめざした理由をお聞かせください。

医療にはもともと興味があり、人間の医師に憧れた時期もあったのですが、私の性格では人の死を受け入れることはできないと思って断念しました。獣医師の魅力は一生にわたる付き合いです。医師は診療科で細分化されていますから人の一生の一部しかみませんが、動物病院の獣医師は動物が生まれて家族となり、死ぬまでずっと見守ります。動物を通して飼い主さんと長くお付き合いできるのが獣医師です。大学でも、卒業後に勤めた動物病院でも、私は人間関係がいかに大切かを学びました。

今後の展望と、読者へのメッセージをお聞かせください。

今後も獣医師一人ひとりが責任を持って診療し、飼い主さんの信頼を得られるように努力していきます。知識を振りかざすのではなく、人間と人間の付き合いを重視し、泥臭くもがく獣医師を育てたいと思います。2014年9月に北与野に分院を開設しましたが、こちらでも同じ方針で診療します。来院者が増えて、本院だけでは長くお待たせすることもありましたので、分院の開設はサービスの向上につながると思っています。私はこれからも「あきらめない医療」を提供していきます。セカンドオピニオンでも、サードオピニオンでも良いので、悩みを打ち明けていただければ全力で、お応えします。

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