中村史朗 院長の独自取材記事
ウィル動物病院
(川越市/霞ヶ関駅)
最終更新日: 2023/01/22
埼玉県霞ヶ関にたたずむウィル動物病院は美容院のようにおしゃれな動物病院だ。飼い主が気軽に訪れることができるよう広く開放的に作られた待合室の奥には、こだわりの新型機器が揃う治療室が控えている。地域の動物医療の中核を担う総合診療施設を目指したいと、中村史郎院長は話す。治療の際には検査結果を飼い主にできる限り共有できるよう工夫し、ともに病気に立ち向かっていこうという飼い主の気持ちを大切にしている。スタッフとともに飼い主に丁寧に寄り添う姿勢の根本には、この地が中村先生の生まれ育った地元だということもあるのだろう。中村院長にペットドックの大切さや今後力を入れていきたい分野など、日々の診療への思いを訊いた。 (取材日2015年10月8日)
春・秋に実施するペットドックで健康状態を把握してほしい
2007年に開院されたとのことですが、この地に開院されたのはなぜですか?
生まれも育ちも川越だったので、開院するなら自分の慣れ親しんだ地元の飼い主さんの役に立ちたいと思ったからです。私は高校時代までサッカー少年でして、ここ霞ヶ関のグラウンドでもよく練習していました。いずれは自分の動物病院を開院したいと考えた時、やはり気心の知れた自分の好きな土地で、と思っていました。
医院はとてもおしゃれな外観ですし、待合室も素敵です。
ありがとうございます。ある意味病院らしくない、ペットも飼い主さんもリラックスして診療が受けられるような医院にしたいという思いがありました。その方向性にてデザイナーに依頼し、設計してもらいました。診察室は病院としての使い勝手が良いようコンパクトに作っていますが、待合室は天井も高く、明り取りの窓を設けるなどして広く作っています。訪れる飼い主さんにも好評ですね。入口ドアにはハロウィンの可愛いお化けなど季節に合わせたシールをスタッフが工夫して貼ってくれていますよ。
診療対象について教えてください。
全体では犬と猫が中心で割合としては7〜8割。近年、人間と同じくペットも高齢化していますので、犬ではがんや心臓の弁膜障害、猫では腎不全が多いと感じています。そのほかウサギやフェレットなどの小動物が2〜3割といった感じです。インコやオウムなどの小鳥も診察対象にしようといま勉強中です。ただ、すべての動物を完璧に診療するためには勉強時間も膨大に必要になりますから、対象動物のことをしっかりと専門的にキャッチアップし続け、もしも対象外の動物が持ち込まれた際には素直にその旨を申し上げた上で可能な限りの治療や案内をしたいと思っています。
ペットドックにも力を入れていらっしゃるようですね。
ええ、春と秋にキャンペーンで利用しやすい料金で実施しているので、期間中は多くの方にご利用いただいています。ドック検診の内容は血液検査が中心で、そのほか便、尿、腸の検査や血圧測定など。また、今年8月に眼科専用の診察機器を導入しましたので、来年からは眼科検診も項目に加える予定です。高齢のペットでは緑内障、あと若い子でも網膜の疾患などは最近多いので、そうした症例に対応できるように導入しました。目は飼い主さんも気づきにくいですし、周辺の動物病院でも眼科は専門外というケースも多いので、当院ではこれから眼科に力を入れていくつもりです。犬猫は人間の4〜5倍早く歳を取りますので、年2回検診を受けることで、前回のデータとの比較で現在の健康状態が把握できます。早期に異常を発見できれば、それだけ予後の結果も良く、長く幸せに飼い主さんと過ごしていただけるので、なるべく定期的に健診を受けていただければと思っています。実際ペットドックがきっかけで病気が見つかり、手術まで行った事例はけっこうあります。また、何も病気が見つからず健康だったとしても、その子の性格や健康時の状態をこちらでつかめますので、その後異常が起きた際にいち早く病気に気づく一助になります。その意味でもペットドックをお勧めしていますね。
モニターを一緒に観ながら説明し、相談の上で治療方針を決定
診療方針を教えてください。
できるだけ飼い主さんとモニターを一緒に観ながら、ご相談の上で治療方針を決定していく、いわゆるインフォームドコンセントをポリシーとしています。耳道内などをモニターに映し出すワイヤレスカメラも備えていますが、そうしたわかりやすい検査で動物の体内を飼い主さんに診てもらうことで、その治療が必要な理由の理解が進み、我々獣医師との一体感が生まれると考えています。また、診療方針とは違うのですが、以前勤めていた動物病院が高度な医療にも対応し、専門的な機器を多く導入していたので、このクリニックでも設備の充実には力を入れています。開業時は広々としていたオペ室も機器を新たに導入していくうちに窮屈に感じられるようになり、もっと広く作ればよかったな、と思っています(笑)。最近では眼科診療を強化すべく、眼底カメラを導入しました。
眼底カメラではどのようなことがわかるのでしょうか?
視神経や網膜の検査時に使用しています。緑内障による視神経の異常や 網膜の変性、高血圧時の眼底出血などの検出に役立ちます。検査は飼い主さんと一緒にカメラで読み取った画像では視神経が緑色になって現われますが、その状態を診て何らかの病気にかかっていないかどうかを飼い主さんと一緒にモニター画面で確認しながらわかりやすい説明を心がけています。もともと眼科は興味を持っていたのですが、医療機器も高額ですし、本腰で取り組まなければ難しい分野です。機器を十分に使いこなせるよう眼科セミナーにも定期的に参加し、ようやく現場で使用できるレベルとなりました。
ペインコントロールも治療の特徴と伺っています。
そうですね、痛みの緩和にも力を入れています。がんや骨折治療など、単に治すだけでなく、その過程でなるべくペットが痛くないように麻酔薬、鎮痛剤などを投与するというものです。ワンちゃんによってあまりに痛そうにしていれば、場合によっては麻薬系の薬を使用することもあります。ペットはしゃべれないので、気づいてあげる、察してあげるということが大切だと考えています。
専門性の高い治療を行うことで、地域のペット医療レベルを上げていきたい
獣医師をめざされたきっかけはなんですか?
幼少期から野良猫を拾ってきては育てるなど、動物の飼育をしていたことですかね。直接のきっかけとなったのは高校時代に小児ぜんそくにかかって入院した際、その間にぜんそくに悪いと考えた親が鳥などのペットをすべてペットショップに譲り渡してしまったことです。それが本当にショックで、人と動物がうまく暮らしていけるようにできる職業として獣医師を志しました。小さなお子さんがいらっしゃる家庭でしたら、ペットについているノミやダニなどに由来とするアレルギーにならないようアドバイスもしています。もともと父方の祖父が医師、母方の祖父は歯科医師と、医療関係者が身近にいたこともこの道を選ぶ後押しになったと思います。
休診日にはどのようにお過ごしでしょうか。
休診日にもセミナーに参加したり、ゴールデンウイークや正月にもペットホテルの運営がありますので、なかなかまとまった休みを取る機会がないですね(笑)。セミナーはオンラインも含めますと年間で60コマほど参加しています。時には診療時間の短縮や休診となって飼い主さんにはご迷惑をおかけしています。そうした情報は事前にホームページで告知するようにしていますので、ご確認ください。趣味としては、幼い頃から好きなプロ野球を年に4〜5回、東京ドームに応援に行っています。それ以外は細かい作業が好きなこともあり、時間があればプラモデルづくりを楽しんでいます。以前は雑誌付録で毎号部品がそろっていくものがありますが、それでロボットをつくりました。歌って踊り、言葉を話すロボットでしたが、1年半くらいかけてつくりました。腕の関節をどう再現するかなどメカニカルな部分は整形外科に通じるところがあり、大いに参考になりましたね(笑)。
飼い主さん方へのメッセージをお願いします。
飼い主さんにはいつも観察の大切さをお話しています。「食欲はあるか?」「元気であるか?」などが基本ですが、例えばワンちゃんが散歩に行きたがらなくなったり、食欲はあるのだけれど寝る時間が長くなるなどしたところから、整形外科の病気や緑内障が見つかることがあります。それまでの生活から変わったということは、その子の何かが変化したということなんです。日頃から食欲だけでなく、飲水量や便の状態、睡眠時間、散歩などをトータルで観察する目が大切です。当院の展望としては、街の個人開業医としての域に留まらず、高度な機器や他の専門分野のドクターを招くなどして、高度な医療にも対応できるペット医療の総合診療施設を目指していきます。より高いレベルの医療を提供し、地域の方の力になりたいですね。