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- 田村 博昭 院長、石田 美紀子 先生
田村 博昭 院長、石田 美紀子 先生の独自取材記事
ときわだいら動物病院
(松戸市/新八柱駅)
最終更新日: 2023/01/22
JR武蔵野線新八柱駅、新京成線常盤平駅から車で5分。県道松戸鎌ケ谷線沿いにある「ときわだいら動物病院」は、1998年の開業以来、アットホームな雰囲気の中で獣医療を提供する動物病院だ。取材に訪れると、2頭のゴールデンレトリバーがひょっこり現れ、ひとしきり愛嬌を振りまいてくれた。その人懐こい姿からも、スタッフの動物たちへの深い愛情が感じられる。同院では野良猫の不妊・去勢手術を積極的に行っていることも一つの特徴。「野良猫に餌をあげることは、猫から喜びをもらっていること。その猫が命を全うできるような環境をつくることもわれわれの責務だと思います」と田村博昭院長は話す。今回はそんな田村院長と、ともに診療にあたっている石田美紀子先生に話を聞いた。 (取材日2020年7月21日)
獣医師6人体制で質を重視した獣医療を提供
こちらの動物病院の特徴についてお聞かせください。
【田村院長】当院は受診に際して飼い主さんの負担をできるだけ軽減できるよう配慮しています。飼い主さんとのコミュニケーションも大切にしており、待ち時間もできるだけ少なくしています。また、新型コロナウイルス感染症の院内感染対策を徹底するとともに、待合室で密にならないよう、外や車の中でお待ちいただくなどご協力いただいています。医療体制は常勤の獣医師が4人います。そのほかに専門分野を診る非常勤の獣医師が2人おり、いずれも私の大学院時代の同級生です。循環器内科を診ている岩尾琢先生は、獣医師漫画の主人公のモデルとなった優しい先生です。もう一人、アレルギー科と皮膚科を担当なさっている荒井延明先生も話しやすい方です。症例はスタッフ全員で共有し、気になることがあれば先生方と相談して治療計画を立案しています。地域の方々に気軽に来てもらえて、お互い「こんにちは」と挨拶できるクリニックをめざしています。
開業までの経緯について教えてください。
【田村院長】生まれは長野県松本市です。最初に憧れたのは生物学者でした。高校時代の生物の教師がその楽しさを教えてくれたんです。その後、北海道大学に進学、大学院を卒業後、基礎研究を学ぶために研究所に勤めました。ただキャリアを重ねるうちに管理職を任されるようになり、純粋に研究ができなくなってきたのです。そこで「これは違う」と思い退職しました。幸いにも大学院は獣医学研究科を修了していましたから、思い切って獣医師をめざすことにしたのです。その後、東京都内と神奈川の動物病院に勤務した後、1998年、妻の実家の近くでなじみのあったこの場所に開業しました。ちなみに設備投資にあまりお金をかけたくなかったので、自分で病院の設計図を描きました。そしてそのレイアウト通りに大工さんが建ててくれたのです。
石田先生はなぜ獣医師をめざされたのでしょうか。
【石田先生】私は単純に動物が好きという思いから獣医師となり、埼玉の動物病院に勤務した後、2012年からこの病院に勤めています。こちらでは何があっても院長が助けてくれるという安心感があります。また、獣医師向けのセミナーにも通わせてくれるなど、勉強もできて、働きやすい環境だと感じています。
飼い主が気兼ねなく話しやすい雰囲気を大切に
飼い主さんには普段どんなことを心がけていますか。
【田村院長】飼い主さんが、主訴以外のことでも「実はここも気になるんです」と言いやすいよう、世間話なども交えながらお話を引き出すようにしています。それは自分が病院にかかったとき、医師の先生が忙しそうだったり、問いかけをしてくださらなかったりして、言いたかったことを切り出せなかった経験があるからです。 【石田先生】私もそうですね。子どもを小児科に連れていったとき、どうしてもあと一つ言えないことがあるんです。そんなことから私も、例えば手術のためにペットをお預かりするときや術後にお返しするときに、どんな手術をするのか、どんな手術を行ったのかをご説明するだけでなく「心配していることはないですか」とお聞きしています。また、病気のペットの場合、ご自宅でのケアが重要になってきます。ご自宅のケアで困っていることや悩んでいることについてもよく話を聞いてアドバイスしています。
例えばどんなことがあげられますか。
【石田先生】例えば薬の飲ませ方です。特に、猫の場合、投薬が難しくなかなかうまく飲んでもらえないことが多いのです。餌に薬を混ぜても薬だけ上手に避けて残す場合も多いのです。そんなときは、私も猫を3匹飼っていますので、うちではこうやっています、など自分の経験をお話ししています。猫を飼っていることで、飼い主さんと共有できる点も多いですね。
動物との生活の中で、飼い主が大事にしなければならないことは何でしょうか。
【田村院長】耳掃除や爪切り、歯磨き、お尻回りのチェックや体をよく触るなどして、日頃から動物の様子をよく観察することです。動物の気持ちもわかるでしょうし、異変にも気づきやすいと思います。また、新型コロナウイルス感染症について、飼い主さんが感染しないよう注意することは当然ですが、猫にも感染するという報告も出ていますので、特に注意してください。最近では自然災害も多いですが避難するときは、ペットと一緒に避難することが原則となっています。安全に避難でき、周りに迷惑にならないよう、基本的な健康管理のほか、ケージやキャリ―バッグに慣らしておく、無駄吠えさせないなどの必要なしつけをしておくとよいでしょう。
野良猫や地域猫の不妊手術にも注力
こちらでは野良猫の去勢・不妊手術も積極的に行っていると伺いました。
【田村院長】はい。野良猫のほとんどは病気で死んでしまったり、別の動物から被害を受けたりしています。そうした過酷で不幸な生き方を送る動物を増やさないためにも、その子の親を不妊手術することが必要だと考えています。地域猫に餌をあげることは、猫から喜びをもらっているんですね。そんな動物たちが命を全うできるような環境にすることも、動物のおかげでご飯が食べられている私たちの責務だと思っています。松戸市も飼い主のいない猫の不妊手術に対して助成を行っています。また、これまでの経験から、野良猫の対応などをまとめたハンドブックやペットロスに対する心構えを著わした本の翻訳書など4冊出版しています。必要な飼い主さんには差し上げて読んでいただいています。そのほか、当院では子犬のしつけ教室や歯磨きレッスン、ペットを亡くした悲しみをお聞きするカウンセリング講座も開いています。
2頭のゴールデンレトリバーがいますが、こちらで飼われているのですか。
【田村院長】はい。当院で飼っているバナナちゃんとみかんちゃんです。彼らは供血犬として輸血が必要になった時に、仕事をしてもらっています。診療中はハウスにいますが、子犬と飼い主さんが集まるパピーパーティに参加したりしています。
院長先生にはプライベートの時間についてもお聞きしたいと思います。趣味は何かお持ちですか。
【田村院長】登山ですね。今年で11年目になります。ほぼ単独、日帰りです。興味を持ったきっかけは、当時、幼稚園の年長だった息子と富士山に登って、成功体験を味わわせてあげたいと思ったことから。その後、富士山登頂も一緒に果たしましたが、今は私のほうが楽しくなってしまって(笑)。険しいことで有名な長野と岐阜にまたがる槍ヶ岳の北鎌尾根というルートを歩いたこともあります。また富山県にある剣岳の早見尾根ルートも日帰りで行きました。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
【田村院長】今後もできるだけ長く地域に密着したホームドクターとして誠意ある診療を続けていきたいと思います。私たちの仕事は動物を治すことだけでなく、飼い主の気持ちをしっかりとくみ取り、理解してあげることも大切です。例えば費用面。「治療費がかさむから手の施しようがない」と言ってしまうような獣医師にはなりたくありません。相手の経済的状況も鑑みながら、その時々の最良の選択肢を提案できるよう努めています。もちろん「とにかく延命治療を」を飼い主の方がおっしゃる場合は適切な医療機関に紹介しています。ただし、入院して高度医療を受けるペットが幸せであるとは限りません。良かれと思って動物にしていることが実はその動物にとって必ずしも良くないこともあるのです。日々の生活の中で動物から癒やしと喜びをもらっているわけですから、そういうことを推し量るのも飼い主の努めだと思います。