永井 岳 院長の独自取材記事
ナガイ動物病院
(我孫子市/我孫子駅)
最終更新日: 2023/01/22
常磐線、我孫子駅から徒歩5分の地に建つ「ナガイ動物病院」。大きな一枚ガラスが取り囲むクリニックは、テラスにベンチが並び、まるでカフェのような趣だ。窓から陽射しが降り注ぐ待合室は、明るくて広々としている。院長の永井岳先生が2009年に開業してから6年、同院は近隣住民の間で地域のホームドクターとして着実に根付いてきた。土日祝日も開院し、平日も含め夜は20時まで診療するなど、忙しい飼い主に配慮した体制を整えている。多忙のため趣味の温泉旅行にはなかなか行けないという永井院長だが、代わりに大好きなお酒でリフレッシュするそうだ。帰りが遅くても、野菜中心のメニューを自らつくるほどの料理好きという一面も持つ。丁寧な話し方と笑顔が印象的な院長に、治療のことからプライベートまでお話を伺った。 (取材日2015年10月20日)
治療だけでなく、健康診断で予防医療にも力を入れる
我孫子で開業した理由を教えてください。
私は生まれも育ちも我孫子で、大学もここにある実家から通っていました。ですから、小さい頃から暮らしている我孫子でいずれは、開業したいと思っていました。この辺りは5、60年前に分譲された土地に住む高齢者の方々と、ここ10年くらいでできた大型マンションの若いファミリー層が混在している地域です。開院した頃は、高齢者の方々がだんだん動物を飼うのをやめているなという印象でした。最後の猫なんです、犬なんです、と来られていたので。その反面、ファミリー層は、子育てがひと段落して、やっと飼い始めたという方がいらしたり、世代が少しずつ入れ替わってきている感じがします。飼い主さんの傾向としては、共働きの方もいますが、家でワンちゃんネコちゃんと接する時間がある方が思ったより多い印象です。病気として連れてくるのも比較的早い段階で、悪化してから駆け込んでくるという感じではなく、飼い方にゆとりがある方が多いようです。
健康診断で来る飼い主さんも多いそうですね。
はい。その目的で来院される飼い主さんがどんどん増えています。こちらからも受診しやすいように、いろいろとご提案することがあります。例えば、フィラリアとか狂犬病の予防の診療のときに血液検査も一緒にやりましょうとお勧めしたり。フィラリア予防のときに採血するのですが、その時に同時にすれば、1回ちくっとするだけで済みますし、そこで病気を見つけていけるわけです。結果を見た飼い主さんが「犬にもコレステロールがあるんですね」と驚かれたりします。貧血気味とか、肝臓の値が高いとか、血液検査については、本当に人間と同じです。あとはレントゲン、超音波検査、尿検査なども、希望に応じて検査することができます。
どんな症状が見つかりますか?
最近だと生活習慣や高齢などで、肝臓を悪くする子が多いですね。ご存じのとおり、肝臓は症状が出づらいのですが、本人元気なのに普段の食生活から脂肪肝気味だったり、食べ物の影響などで胆のうに泥状のものが溜まる胆泥や、胆石ができたりします。検査すると、症状が無くてもそういうことがわかります。逆に症状が出たときは重症になってしまっているケースがある。症状が現れにくい病気も発見できるのがやはり検査のメリットですね。ですから、健康診断を受けにきて、その結果、では治療しましょうというケースが結構多いです。全般的に、乱れた食生活と高齢化が原因の疾患が増えていると思います。
飼い主の気持ちに沿って、必要な情報を的確に伝える
最近増えているという肥満について教えてください。
人間と同様に、食事が豊かになりすぎていることが大きな要因です。人間のごはんをあげたり、いろいろなおやつが売っているので、買って与えたくなってしまう。暇だとついつい余計なおやつを食べてしまう、というのは人間も同じですよね。動物は、飼い主さんが構ってくれないと、一人で寝ているか、もしくは食べること以外にやることがなくなってしまいます。飼い主さんもワンちゃん・ネコちゃんが遊んでほしがっているのか、お腹が空いているのか、よく観察せずにとりあえず何か与えてしまう。対応としては、食事を変えるのはもちろん、飼い主さんの意識を変えることが大切です。できるだけ遊んでやるとか、何かあげるとしてもコングなどの知育系のおもちゃをうまく使って与えるような工夫があるといいですね。飼い主さんの意識ではビスケット1枚くらいと思っても、動物の体重が人の30分の1とすると、飼い主さんが30枚食べるのと一緒なのです。
こちらの病院の特徴を教えてください。
何でも相談できる総合診療をめざしています。他の先生にできないことをやるというよりは、何でもできることはすぐにやってあげようという考えなので、特殊な治療はありません。遠くの病院を紹介するのは、飼い主さんにとっても動物にとっても負担なことなので、なるべく診てあげたいんです。また紹介したとしても、戻ってきてうちで面倒が見られるところはやりたい。そう思っていたら機器類が増えてしまいました(笑)。一次診療に必要なものは一通り揃っています。それから、ご要望が多いので、ホテルとトリミングもやっています。高齢になった動物はなかなか対応してもらえないというので、患者さんのために始めたサービスですね。泥パックや炭酸マイクロバブルのメニューもありますが、これは皮膚病の治療の一環としてという側面もあります。
診療の際にどんなことを心がけていますか?
患者さんがたくさんお待ちになっていることもありますので、必要な情報をこちらで選んでインフォーム(お伝え)していくように心がけています。全部伝えるには何時間あっても足りないし、専門的すぎて理解できない部分もあります。動物の状況、ご家族のお仕事や時間のゆとり具合などを見ながら、最善の選択肢を挙げるよう工夫しています。最初からできないことをご提案しても仕方ありませんし、できる中で必要な選択肢を2つか3つ程度、会話をしながら、こちらで選んでご提案します。「先生に決めてほしい」という方もいますし、飼い主さんによってタイプは違いますので、よくお話ししながら選択肢を示すように気をつけています。
信頼関係を築き、めざすは地域のホームドクター
獣医師になろうと思ったきっかけから開業までの経緯を教えてください。
幼少の頃からずっと飼っていて犬が好きでした。家族としてかわいがっていたのにフィラリアで亡くなってしまったという経験が、きっかけとしては大きいですね。小学生の頃は外で遊ぶことしか考えていない子どもでしたが(笑)、当時から興味があって、ずっと科学雑誌を読んでいました。それで高校の頃、将来どうしようかと思った時、宇宙に携わる仕事と迷ったのですが、獣医師は犬とも関われるし、広い分野でやりたいことができるのがいいなと考えて決めました。学生時代は「木曽馬」という日本の在来馬の保護、育成のお手伝いに取り組みました。長期の休みには長野の牧場に通っていましたね。卒業後は、開業を視野に入れていたので、6年間に3つの病院で勤務しました。最初から約2年ずつと決めて、そのこともお話ししたうえで働かせていただきました。先生によってやり方が違いますので、とても勉強になりました。
今までで印象に残っていることはありますか?
いっぱいありますが、特に印象に残っているのはうれしいことですね。ずっと病気を診てきた子を最後まで看取ったあと、飼い主さんは感謝してくださいますが、やはりその後お会いする機会はありません。ペットロスのようになってしまったり、しばらくは飼えない、となる方もいます。それが、1、2年後に「先生、また飼っちゃった」といらしていただくのは一番の喜びです。「悲しい気持ちを克服して新しく飼うことができたんだな」ということや、「当院を信頼してまた来てくださった」ということを、とてもうれしく感じます。開院して6年近くが経ち、そうやって長く通ってくださる飼い主さんと信頼関係ができてきていることが励みになりますね。
今後の目標とメッセージをお願いします。
地域のホームドクターとして、気軽に来て、相談してもらいやすい病院にしていきたいです。最近は患者さんが増えてきて、お待たせすることもあるので、来院していただきやすいように改善していかなければいけないと思っています。飼い主のみなさんにお伝えしたいのは、やはり動物たちと一緒に楽しく過ごす良い方法をみつけて欲しいということです。お忙しいとは思いますが、できれば決まった時間に一緒に遊んであげてほしいです。人間と同じで、動物も規則正しいサイクルで生活するのがいいことなので。決まった時間にごはん、散歩(遊び)というのが理想ですね。なかなか難しいと思いますが、一定の時間をワンちゃんネコちゃんにとっていただけたらと思います。