秋山 隆宏 院長の独自取材記事
湘南藤沢ペットクリニック
(藤沢市/藤沢駅)
最終更新日: 2023/01/22
木をふんだんに取り入れた、シックな外観が目をひく「湘南藤沢ペットクリニック」。箱根駅伝のコースとして知られる「遊行寺の坂」近くにある同院は、2009年4月の開業。以来、皮膚科・眼科・内科・腫瘍科・外科・麻酔科など幅広い領域をカバーする地域密着型のクリニックとして、ペットオーナーのニーズに対応している。院長の秋山隆宏先生は、大学では内科系、大学院では外科系の研究室で研鑽を積んだキャリアの持ち主。高度な医療を提供する一方で、「治療だけでなく、日常生活のあらゆる悩みに対応するのがホームドクターの使命」と語り、病気の予防やしつけ教室、パピークラスなどにも力を入れている。一つ一つ丁寧に言葉を選びながら、真摯に質問に答える秋山先生に、同院の特徴や診療方針について話を聞いた。(取材日2016年1月25日)
医療だけでなく各方面の悩みに応えるホームドクター
広々としていて、落ち着いた雰囲気の素敵なクリニックですね。
ありがとうございます。温かみのある空間にしたかったので、木をふんだんに取り入れたデザインを採用しました。広さに関しては、正直に言うともう少し狭くても良かったのですが、病気の治療だけではなく、犬のトレーニングやしつけ教室、パピークラスなどもやっていこうと思っていましたので、待合室のスペースを広く取りました。奥には猫専用の待合スペースを設置していますので、他の動物が苦手な猫も安心してご来院いただけます。
院長先生の、開業までのご経歴をお教えください。
山口大学農学部の獣医学科では動物の内科的疾患の診断や治療、予防法などを研究する内科学研究室に所属し、大学卒業後は、東京大学大学院の獣医外科学系の研究室に入室して診療と研究に携わりました。その後は兵庫県の動物病院に3年ほど勤務し、当院を開業したのは2009年の4月です。もともとは関東の出身なので、勤めていた関西ではなく関東で開業しようと思っていました。そこで、暖かくて飼育環境も良さそうな神奈川県の湘南・藤沢エリアを選んだんです。実際に住み心地も良いので今ではとても気に入っています。
開業を決意されたきっかけは?
大きなきっかけはありません。ただ、大学と大学院で内科と外科両方の学術的アプローチを学び、勤務医として経験を積むうちに、スペシャリストとして1つの分野を極めるよりも「町のお医者さん」として診療するほうが自分には合っていると感じるようになりました。それならばペットやオーナーさまとの距離が近いところで診療するホームドクターになろうと考えたのです。ただ、自身も高度医療を学んできた者ですから、単に「浅く広く」ということでなく、ある程度まで掘り下げたところでの幅広さが私に課せられた責務だと思っています。常に研鑽を積み、専門医の先生から見ても「ベストを尽くしているな」と言っていただける診療をしていきたいですね。
ペットと健康で楽しく生活していくためのサポートを
こちらで行っているパピークラスについて、教えていただけますか?
6ヵ月までの子犬を対象に、遊びを通じて他の犬とのコミュニケーションを学んだり、人と一緒に暮らすためのルールを身につけたりするクラスです。吠え癖や噛み癖、トイレなど、犬が成長していく過程で起こるさまざまな問題を予防することはもちろんですが、小さいうちから病院に慣れておくことで、いざ病気になったとき治療への抵抗感が少なくなるというメリットもあります。実際に、パピークラスに参加した犬は当院を大好きになってくれるんですよ。犬が家族の一員として幸せに生活できるように、医療だけでなくいろいろな方面からサポートしていきたいと思っています。
診療対象動物と、どんなご相談が多いのかお聞かせください。
犬と猫を中心に、うさぎ、フェレット、ハムスター、小鳥などを対象に、内分泌・消化器・泌尿器・血液などの内科をはじめ、皮膚科、眼科、腫瘍科、外科などさまざまな領域の診療を行っています。ご相談として多いのは犬の皮膚病ですね。皮膚病の治療はシャンプー療法が基本的になりますので、ほとんどの場合で薬用シャンプーを使った薬浴をご提案しています。体質的に皮膚病と長くお付き合いしていかなければいけない子が多いので、かゆみや赤みなど皮膚症状がひどいときには集中的に薬浴し、症状が落ち着いた後も症状を予防するために、2週間に1度程度の薬浴をお勧めしています。それぞれの症状に合った薬用シャンプーをお出しして、ご自宅でオーナーさんが洗ってあげることもできますし、ご自宅でのシャンプーが難しい場合やプラスアルファの効果を期待される場合には、当院での薬浴も可能です。
人間の場合、歯周病が全身の健康に悪影響を及ぼすと言われていますが、動物でも同じでしょうか?
はい。歯周病は歯垢の中に潜む細菌が原因で起こる感染症です。歯茎が腫れ、歯の周辺組織を破壊して最終的には歯が抜け落ちてしまいます。口腔内の細菌が心臓や肝臓、腎臓などの臓器に広がって、内臓の病気を引き起こす可能性があるのも人間と同じです。犬自身の健康はもちろんですが、お口の中に細菌がたくさんいる犬にキスをしたり、舐められたりするのはオーナーさんにとっても衛生上好ましくありません。食後の歯磨きができないときは、デンタルガムや歯石の付きにくいペットフードなどを利用するのも良いと思います。歯石を予防・除去するスプレーもありますので、犬の歯に直接スプレーしたり、飲み水に混ぜたりするのもいいですね。
ペットとオーナーが笑顔になれる診療をめざして
動物用のマイクロチップも導入されているそうですね?
はい。マイクロチップは皮下埋め込み型の個体識別用チップです。チップには世界で1つだけの個体識別番号が書き込まれており、番号を専用の機器で読み取ることで確実に個体を識別することができます。チップを埋め込むとMRI検査の画像が若干荒くなるというデメリットもありますが、ペットが迷子になったときや、地震などの災害時にはぐれてしまった場合には、オーナーさんのもとに戻る助けになると思います。マイクロチップを導入したのは、ニーズに幅広くお応えするために、引き出しをたくさん用意しておきたいと考えたからです。夜間診療や往診を行っているのもそのためです。当院の獣医師は私一人なので、24時間いつでも連絡が取れるわけではなく、ご迷惑をおかけすることもありますが、それでもオーナーさんの不安を少しでも解消できればと思っています。また、仕事をしている方にも利用しやすいように、平日は夜8時まで、日曜も診療しています。
先生が獣医師になろうと思った理由を聞かせていただけますか?
残念ながら、カッコイイ理由はないんですよ(笑)。ただ、子どもの頃に文鳥を飼っていたのですが、小鳥を診てくれる動物病院が、当時の私の身近にはなかったということが獣医師をめざしたきっかけの一つになっているとは思います。先生から説明をされても知識がないので、わからないことがもどかしかったんです。大学時代には犬を飼っていたこともあり、ちょっとしたことでも相談できるホームドクターの存在の必要性を強く感じたというのもありますね。治療の結果、病気が良くなったり、オーナーさんからのご相談に対してアドバイスしたことで問題が解決して、「ありがとう」と感謝の言葉をかけていただけると、獣医師になって良かったと感じます。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
来院したペットには、どの子にも「できる限りのことをしてあげたい」という思いで診療しています。しかし、現実的には手間や費用の問題や、病院が大嫌いで何も治療をさせてくれないような子もいます。結局は、ペットが自宅で家族の一員として元気に過ごしていて、その様子を見てオーナーさんが笑顔になれるというところが治療の目標であり、動物病院に求められることだと思うので、オーナーさんが治療を望み、ペット自身もそれほど嫌がらずに治療を受けてくれる状況であれば、いつでも最善の獣医療を実施できるよう常に研鑽を積んでいきたいと思っています。これからもペットとオーナー様の気持ちに寄り添って、より笑顔になっていただける病院づくりをめざします。困ったことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。また、当院ではもしもを想定して、災害時にも電気が使えるような体制を整えているので、安心して通院していただければと思います。