伊藤 洋一 院長の独自取材記事
伊藤動物病院
(南埼玉郡宮代町/東武動物公園駅)
最終更新日: 2023/01/22
東武スカイツリーライン東武動物公園駅から徒歩約12分。大学に隣接した住宅街の中にある、「伊藤動物病院」は1988年の開院。開院30周年を前に建て替えも視野に入れている。年中無休の診療体制や、飼い主それぞれの思いに真摯に対応してくれる伊藤洋一院長の温かな人柄に惹かれて、同院を頼りにする飼い主はとても多く、厚い信頼を得ている動物病院だ。院内は家庭的な雰囲気で、診察室や手術室はもちろん、入院施設、ペットホテルもあり充実。犬と猫の待合スペースは別々に用意されており、駐車場も17台分が確保されている。いまなお母校の北里大学で研究を続ける勉強熱心な伊藤院長に、日々の診療に対する思いから趣味のことまで、幅広く話を聞いた。 (取材日2016年9月7日)
飼い主と信頼関係を築き、想いに寄り添う医療を
開業30周年が近づいてきましたが、この間に時代の移り変わりを感じられたことは何でしょうか?
もちろん学術的な知識や技術、医療機器の進歩は目覚しいものがありますが、飼い主さんの意識も変わってきたように思います。人間の子どもの数よりもペットの数のほうが多いといわれる時代になって、今は人間と同様の治療を求められる方が多いですね。そしてよく勉強なさっていて、感心させられます。また、定期健康診断や健診コースなどの予防医療への関心も高まってきました。当院でも外部の検査機関と協力して健康診断などを行っており、病気の早期発見、早期治療のためにも、そうした検査をお勧めしています。
日々の診療で心がけていらっしゃることはありますか?
第一には動物をしっかりと診させていただくこと。そして、飼い主さんのお考えや思いをお聞きすることですね。私たち獣医師も飼い主さんも、大切なペットに最大限のことをしてあげたいと思っています。その思いは共通ですが、細かいお考えなどはみなさん違います。飼い主さんと一緒に、その子にとって一番良いことをしてあげたいと思っています。そのためには十分にコミュニケーションをとって、信頼関係を築いていきたいと考えています。また私が人間の方の医者に行った時などもそうなのですが、医師には言いづらいことってあると思うんです。そんな気配を感じ取ったら、看護師から飼い主さんに聞いてもらうようにしています。そうやってさまざまな情報を集めようと思っています。
獣医師の仕事の難しい点は何でしょうか?
獣医師に限った事ではないと思いますが、やはりコミュニケーションの大切さですね。獣医師をめざしている子どもたちに言うんですけれど「獣医師の前に、きちんとした社会人たれ」ということなんです。飼い主さんにも尊敬の念を持って接し、自分という獣医師を選び信頼していただいて、大切なペットの命をあずけて下さることへの感謝の気持ちを忘れてはいけません。また、独りよがりの診療にならないように気をつけるべきでしょう。自分が常に正しいと思わず、時には他の獣医師の意見も仰いで判断すべきです。絶えずさまざまな情報を取り入れて、治療に全力を尽すこと。本当にその子のためになる治療とは何か、を常に考えて行かなくてはいけないと思います。
年中無休診療。常に向学心を忘れずに
年中無休というのは大変ではないですか?
もともとここは自宅を兼ねていました。休診日でも在宅していれば急患の場合インターフォンがなりますので、ならば入院施設もあることだから年中無休でお役に立とうと考えたのです。いつでも診察可能な動物病院があれば、飼い主さんも少しは安心していただけるかな、と思っています。他院が開いていない日曜や祝日は遠方から来られる方もあって多少混み合いますが、いつでもこられる安心感があるからなのか、すごく混む曜日が決まっているというわけではありません。また当院にはペットホテルもありますので、すぐ近くのレジャー施設にいらしたご家族がペットを預けに来られることもあります。予防接種の履歴や健康状態を確認させていただいてから大切にお預かりしています。
4人のお子さまのうち、3人が獣医師をめざしていらっしゃいますね。
うれしいことに上から3人がみんな獣医学部に通ってくれています。一番下はまだ中学生ですので、進路決定はこれからです。獣医学部の4年生ぐらいになると病院での実習が始まりますので、学術的な話もするようになり、私自身もきちんと勉強し続けなくては、と気持ちを引き締めています。実はいま、母校の北里大学で研究をさせていただいていて、月に一回青森まで通っています。私の休診日は月曜日なので、月曜の始発で出発して向こうで一泊し、火曜の朝に帰ってきて午後から診察を担当しています。この大学通いが私の癒やしの時間でもありますね。
中学生の職業体験受け入れや、日本工業大学での講演なども行っていらっしゃいますね。
工学系の技術や知識はさまざまな分野に生かされています。もちろん動物に関連したものも数え切れないくらいあります。日本工業大学には、医療エンジニアという分野に目を向けてもらえるよう、年に1回程度お話に行っています。医療機器はもちろんのこと、動物の車いすや義足などという技術もありますし、動物が四足で歩く様子は、ロボット工学にも生かされていますね。そんな話をすると理系の学生さん方はけっこう喜んでくれるんですよ。中学生の職業体験は、毎年数名程度ですが受け入れています。少しでも獣医師という仕事を身近なものに感じてくれたらうれしいですね。
さまざまな意見を聞きながら、視野を広く持って診断
獣医師になられたきっかけを教えていただけますか?
私が中学二年生の頃の理科の教諭が獣医師の資格をお持ちの方でした。あるときその先生のお宅に遊びに行かせていただきましてね。いろいろお話を聞かせていただいたのですが、その時に獣医師の仕事はなにも犬や猫の病気を見るだけではない、もっと幅の広いものだと教えていただきました。そこから俄然「獣医師」という職業に興味をもちまして、この道に進もうと思ったのです。子どもの頃から犬を飼っていたこともあり、獣医師という存在が身近なものだったせいもあるかもしれません。実はいまは何も飼っていないんです。私が学生の頃に保健所から譲り受けた犬を飼っていたのですが、20歳でなくなってしまいまして。それ以来なかなか新しい子を迎えることができません。亡くしたとき、飼い主さんのお気持ちを実感しました。
ご自身の趣味や健康法などはありますか?
もう10年以上ハワイアンバンドの活動をやっています。私はウクレレ担当です。以前は毎月のようにライブをやっていたのですが、今は忙しくて間隔が空いています。また私の甥が港区で小児科の医師をしているのですが、その医師会の催しで演奏したり、地域のお祭りに出てみたり、結構お声がけいただくので今ではお断りばかりしています。日常の健康法としては、ほぼ毎日午前と午後の診察の間に、約1時間ほどウォーキングをしています。距離にすると約5km弱でしょうか。遊歩道が整備されているので歩きやすいんですよ。観覧車やジェットコースターなんかを見ながら歩いています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
ペットのそばに一番長くいらっしゃるのは飼い主さんです。ですから、飼い主さんが気になることはなんでも情報としてお聞かせください。ご家族の間でも違うご意見がある場合もありますが、それらも全てお聞かせいただくと助かります。その情報のかけらをまとめるのが私たち獣医師の仕事です。また近年はインターネットで病状などを調べていらっしゃる方が多いのですが、あまり固執しないようお願いしたいですね。参考程度に思っていただければと思います。私は診断の根拠もできるだけお話するよう務めています。またより適切な判断をするために他の獣医師の考えを聞くこともよくあります。気になることがあったら、何もなければそれで良い、という考えで気軽にお連れ下さい。