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織田春人 院長の独自取材記事

おだ動物病院

(横浜市金沢区/金沢八景駅)

最終更新日: 2023/01/22

金沢八景駅から国道沿いを横須賀方面に、潮の香りを感じながら歩いたところに「おだ動物病院」はある。開業から37年、地域に根差した動物病院だ。穏やかな笑顔で明朗に話す院長・織田春人先生の姿からは、飼い主へも丁寧な説明がなされていることが想像できる。若い頃から宮沢賢治に傾倒し、音楽をこよなく愛する織田先生。興味や関心の対象は多彩を極め、さまざまな知識を織り交ぜながら紡ぎだされる言葉は、まるで交響曲のように取材陣の心に響いてきた。今でこそ面影はないが、昔は人見知りだったという一面も持つ織田先生に、獣医師になったいきさつから、次世代を担う子どもたちへのメッセージまで、パーソナルなお話をたっぷりと伺った。 (取材日2014年11月20日)

獣医師、宮沢賢治、そして金沢八景との不思議な「縁」

まず、どのような経緯で獣医師になられたのかお話しいただけますか? 

私は“虫屋”といってもいいくらい、とにかく虫が大好きな子どもでした。男の子ですからカブトムシにはじまって、チョウ、トンボやカワゲラなど、身の周りのあらゆる虫を片っ端から捕まえては飼育したり、観察したりしていました。チョウなんかは標本を作ったりもしていましたね。それで、いつしか「虫の専門家になりたい」と思うようになり、大学ではまず生き物の行動を研究する“心理学”を専攻しました。その後、より専門的な勉強をしたくなり獣医大学の試験を受けることにしたのです。入試の面接で「寄生虫の研究がしたい」と言ったところ、たまたま面接官が寄生虫の教授で、「それはもう研究され尽くされている分野だから、臨床へいきなさい」と強く言われてしまい、「じゃあ骨折でもやってみるか」ということで、外科へ進んだところ、どんどん視野が広がって、獣医師になっていました。我ながら、めぐりめぐってという感があります。

宮沢賢治がお好きだとお聞きしました。

好きどころか、学生時代は宮沢賢治に傾倒していて、宮沢賢治一色の生活でしたね。彼の作品にはたくさんの生き物が出てくるのですが、底抜けの誠実さに加えて、ずば抜けた色彩感覚と音感から紡ぎだされる世界に夢中でした。毎年のように花巻へ行っては彼の世界に浸っていたのですが、ある年偶然立ち寄った資料館で、彼の生涯の主治医であった“S博士”こと佐藤隆房医師と一緒に私の曽祖父が写真に写っているのを見つけました。本当にビックリしましたね。調べてみたら、千葉医専で学んでいた佐藤医師に岩手で開業するよう勧めた教授がなんと私の曽祖父だったというのです。そんなことはまったく知らずにのめり込んでいたのですが、曽祖父のことを知って、引き寄せられるべくして引き寄せられていたような、不思議なご縁のようなものを感じてしまいました。

ここで開業したのにも、何かご縁のようなものがあったのでしょうか? 

一人息子ということもあり、親の意向も踏まえてどこで開業しようかと迷っていた時に、母が独断で決めてきたのがここでした。その時は驚きましたが、考えてみると私は「藤沢市鵠沼」出身で、ここは「横浜市金沢区六浦」。住所の全部に「氵(さんずい)」がつくのです(笑)。海辺ですし、よっぽど水にご縁があるんだなぁと思いましたね。おかげさまで開業してから37年が経ち、今ではすっかり地元の人間としてやらせていただいています。近くの横浜市立大学へは、市民も受講できる講義に出席したりもしています。

飼い主に納得してもらえる診療をモットーに

貴院の特徴についてお聞かせください。 

うちはいわゆる「なんでも屋」なんです。家庭の猫や犬だけではなく、野生でけがをしたトンビやウミネコ、モモンガにハクビシン、ウミガメなどありとあらゆる生き物が連れて来られます。以前、「カビが生えちゃったんですけど、診てもらえますか?」と、スズムシが来たこともありました。もちろん、診ましたよ。当院には外科である私のほかに、感染症と皮膚科専門の獣医師がそれぞれいますが、1次診療の現場として、それぞれの専門に関わらずどのような症状でもすべて診ることができます。そして、必要があればより専門の治療ができる2次診療へと橋渡しをする。それぞれ違った役割があるので、自分たちの役割をわきまえ、できることとできないことを見極めながら最善を尽くすことが大切だと思っています。

先生はどのような診療をしていらっしゃるのでしょうか。

西洋医学と東洋医学を取り入れています。西洋医学は悪い症状の出た“部分”を専門的に診て、治癒をめざします。それに対し、東洋医学は“全体”を診て、バランスをとりながら体全体の症状がよくなることをめざします。私は、急性や重篤な症状の場合は西洋医学的なアプローチ(抗生物質などの処方や手術など)もすれば、慢性的な症状に対しては鍼灸や漢方を使うこともあります。生き物が本来もっている自然治癒力を最大限に引き出したり、“気”をよくするためにアロマを使ったりすることもあります。また、治療中は音楽をかけていることが多いですね。私自身、音楽を愛しているということもありますが、「音楽療法としての効果」も感じています。クリスタルボウルのCDをかけると、共鳴して一緒に鳴く犬や猫もいるんですよ。科学的根拠はまだ証明されていないので、将来の課題として研究してみようかと思っています。

診療の際はどのようなことを心がけていらっしゃいますか? 

どのような時でも、まず「飼い主さんの気持ちを汲むこと」を心がけています。意にそぐわない治療をしてしまうと、助かっても助からなくても、不満が残る原因となってしまうからです。私は、飼い主さんにきちんと納得していただけるよう、考え得る最善の治療についてとことん説明します。場合によっては、ご家族全員との意思疎通を図ることもあります。家庭環境やご家族の気持ちまできちんと把握することで、はじめて納得のいく治療ができるのだと思っていますので。犬でも猫でも、飼っている動物は大切なパートナーであり、人生の伴侶です。だから飼い主さんとは、どのようなことでもきちんと話し合う必要性を感じています。徹底したカウンセリングということですね。時々、「噛む、吠える」などの犬の問題行動で相談に来られる方がいらっしゃいますが、私は飼い主であるご家族全員のことを伺います。一時的に犬の問題行動がおさまったとしても、飼い主さん自身、あるいはご家庭の問題が解決できていないと根本解決にはならないからです。小児科では「子どもを治すには、まず親を治す」といいますが、「動物を治すには、まず飼い主を治す」ということですね。おかげさまで、うちに来られる方はみなさん納得してくださるようで、長年クチコミで多くの方に来ていただいています。本当にありがたいことです。

獣医師として次世代を担う子どもたちに伝えていきたい大切なこと

音楽が好きだとのことですが、やはり趣味は音楽なのでしょうか?

いえ、音楽は趣味ではなくて私の人生そのものです。私自身、楽器は演奏できませんが、音楽漬けの生活を送っていて、音楽はもう、私から切っても切り離せないものになっています。あえて趣味というなら、温泉ですね。福島県に平成元年から毎年行っている温泉があるんですよ。ぬるいけれど、泉質が素晴らしく、何時間でも入っていられます。最近は忙しくてせいぜい2泊くらいしかできませんが、本を持って行ってひたすらのんびり過ごします。宿の人ともすっかり顔なじみで、昼頃に「今日、これから行くよ」と、ふらりと出かけることもあります。

獣医師になって良かったと思うのはどのようことですか? 

1つは、「飼い主さんから感謝の言葉をいただけること」です。獣医師冥利に尽きますね。2つめはとても個人的なことなのですが、この仕事のおかげで人とコミュニケーションがとれるようになったということです。実は私はもともと人見知りで、子どもの頃からずっと変わり者だと周りから思われていました。大学の時も、卒業する直前まで「お前に開業医は向いていない」と周りから言われていたくらいです。それが、今は動物を介して、毎日たくさんの人とコミュニケーションをとっている。動物が私と周りの人たちの橋渡しをしてくれたおかげで、こんな風に人前で話せるようになったと言っても過言ではありません。さんざん向いていないとも言われましたが、この仕事をしていて本当によかったなぁと思います。

最後に、経験豊富な先生の今後のミッションをお聞かせください。

「次世代への橋渡し」でしょうか。最近は子どもたちが身近な人の死をみる機会が少なくなってきました。息が止まり、今まで動いていたものが動かなくなるということは、頭ではわかっていてもなかなか実感がわかないものです。でも、動物を飼うことでいやが応にもその死に触れざるを得なくなります。そのような経験を通して、子どもは命の尊さというものを学んでいくと思うのです。また、シカやクマなど野生動物による被害も問題視されていますが、そもそもそれは人間が彼らの領分に入り込んだからだという視点をもって解決策を考えていかないと、根本的な解決には至らないと思います。それから数年前までは私も夜間の救急を受けていたのですが、過労で倒れ、自分が入院する羽目になりました。でも今は夜間救急専門の病院(DVMsどうぶつ医療センター横浜)ができたので、志ある若い獣医師たちに夜間診療を任せることができるようになりました。頼もしい限りです。世間的には獣医師といえば動物病院を連想する方が殆どだと思いますが、酪農、畜産に携わる“大動物の獣医師”、空港で外国から輸入される動物や食品などからの“感染症の侵入を防ぐ獣医師(家畜防疫官)”や、保健所で“公衆衛生に携わる獣医師”など、人々の命や健康を守るために頑張っている獣医師が大勢いるということも、ぜひ知っていただきたいと思います。「人間も動物であり、自然の一部である」という意識をもった人間が育つことを願って、私は小学校での講話や、中高生がうちにやって来る職場体験などで、なるべく子どもたちにこのような話をするようにしています。人間と動物の橋渡しをするだけではなく、これからは次世代への橋渡しもしていけたらいいなと思っています。

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