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古谷隆俊 院長の独自取材記事

古谷動物病院

(品川区/旗の台駅)

最終更新日: 2023/01/22

古き良き商店街が今も息づいている品川区旗の台。ゆったりとした空気が漂うこの下町の一角にある「古谷動物病院」は開業1985年。動物病院としては“老舗”である。まだまだ獣医師や動物病院への関心が低かった時代の開業だったが、「商店街の皆さんに育ててもらって、ここまでやってこれた」と話すのは古谷隆俊院長だ。終始笑顔で話す古谷院長の声は楽しげで張りがあってよく通る。“お任せして大丈夫”という安心感を感じさせる声だ。獣医学部で外科を専門に学び、サファリパークで獣医師として働いた後に開業したという異色の経歴の持ち主で、扱う患畜の幅は広い。また、社会貢献への意識が強く、自らの医院での治療活動のほか、獣医師会での活動や、有志の獣医師42名による「東京城南 地域獣医療推進協会(Tokyo Jonan Regional Veterinary Medicine Promotional Association。以下TRVA)」でも積極的に活動を展開している。インタビューでは、自らが目指す医療のあり方、今後地域の獣医師が取り組むべき問題など、幅広いテーマでお話をうかがった。 (取材日2012年12月6日)

進歩した治療技術に惹かれサファリパークから開業医へ

獣医師は何をきっかけに目指されたのですか?

テレビや雑誌で、野生動物の保護のために働く保護官や獣医師の活動を見て、ああいう仕事に就きたいと思ったのがきっかけです。事務仕事よりも外を飛び回っている仕事が好きな自分にはぴったりの職業だと思いましたし、獣医師のスキルを身につけて社会に貢献していきたいという思いもありました。大学では外科を専門に学び、在学時からいくつも手術を手がけてきました。麻酔も扱うことが多かったのですが、当時は麻酔技術が進んでおらず手術では苦労しましたね。吸入式は現在のようには普及しておらず、注射麻酔が主でした。しかも、手術が昼なら目を覚ますのは夜、と目が覚めるのに非常に時間のかかる麻酔で、寒い季節には動物の体温が下がってしまうので、お湯を沸かして一升瓶で動物の体を温めたりしていました。

卒業されて勤務したのはサファリパーク。これは珍しい経歴ですね。

野生動物の保護をしたかったのですが、日本では野生動物保護官というのはありませんでしたから(笑)。せめて野生動物に近い仕事をとサファリパークを選びました。ここでは大変多くの経験を積ませていただきました。最初の出勤日からいきなりキリンのお産の立ち会いです。朝出勤したら陣痛が始まっていましてね、キリンは立ったまま出産することもこの時初めて知りました。敷き藁を高く敷いて出産させましたが、キリンの子はほかの草食動物に比べて立ち上がるのに時間がかかるんですよ。立ち上がって初めての授乳までが獣医師の仕事ですから、夜までかかって見届けました。本格的に仕事が始まってからは、チンパンジー2匹の飼育係もしました。当時まだチンパンジーは非常に貴重な生き物だったので、獣医師として健康管理をするためにも、飼育係も兼任したわけです。このときは、毎晩2匹を家に連れて帰り、テーブルでエサを食べさせていましたから、テーブルマナーや後片付けも教えていました(笑)。今思い出しても楽しい仕事だったと思います。いずれ引退して、体力が残っていたら、また野生動物に関わる仕事をしたいですね。

野生動物から離れて、獣医師として開業されたわけですが、それはなぜですか?

サファリパークで仕事をしている間も、定期的に東京に出てきて学会に参加しスキルアップを図っていましたが、80年代に入って小動物臨床が目覚ましい進歩を見せるようになったんです。検査のデータを蓄積し、エビデンスに基づく治療をする。それが実にフレッシュだったんです。サファリパークでの獣医師の役割の多くは健康管理であり、手厚い診療・治療をすることはあまりありません。この新しい治療のあり方が実に刺激的で、一時サファリパークを辞して、懇意の先輩の動物病院で2年修行をさせてもらいました。その後サファリパークに戻るという選択肢もありましたが、新しい治療の奥の深さに惹かれ、思い切って生地の品川で開業しようと決断したんです。今でこそ忙しいですが、開業してしばらくは、来院するのは1日に1件か2件。暇といえば暇でしたが、野良猫の面倒を見ているおじいさんが毎日来てはおしゃべりしていったり、商店街の誰かしらが来て1時間くらい話していく。地元っ子だったので、皆さんには本当にかわいがっていただきました。当時はペットが病気になっても病院に連れて行くという意識が薄かった時代でしたが、小中学校の同級生やご近所の皆さんで声を掛け合って、病気を患ったペットを連れてきてくれたのです。この医院は地域の皆さんに育ててもらったようなものですね。また、近くにテリア専門のプロショップが出来て、そこの仔犬の面倒を見るようになったのがきっかけで、さらに色んな人がペットを連れてきてくれるようになりました。このお付き合いがあって私もテリアとプードルを飼うようになりまして、飼い主様と同じ目線で治療というものを考えることができるようになりました。商店街の皆さんには本当に感謝しています。

地元の人に信頼されるホームドクターとして総合医療を実現

どんな動物が多く来ていますか?

やはり犬・猫が多いです。サファリパークでの経験はありますが、一般の方のエキゾチックアニマルはあまり来院されませんね。しかし、動物園に行く前の動物ですとか、輸入業者の方が持ち込む変わった動物を扱うことがあります。珍しいところではナマケモノやアリクイ。カワウソやアシカが来たこともあります。一般の方が来院されて、アザラシがいたりするとびっくりされることもありますね。

先生は、どんな治療を心がけていらっしゃいますか?

専門は外科ですが、外科手術は、緊急の場合を除き、1日1件だけにするようにしています。進歩したとはいえ、麻酔は導入時と覚醒時に動物に負担が掛かるものですから、経過観察を十分に行う必要があるため、手術は1日1回と決めています。また、エビデンスに基づく内科的治療のために、検査や臨床のデータを蓄積することも心がけています。これは私の目指す治療である、入口としての「総合診療」につながります。専門特化した獣医師ではなく、「ジェネラルドクター」とでもいえばよいでしょうか。病状を適切に判断し、高度な検査や医療が必要な場合には適した病院を紹介します。この場合紹介するのは信頼できる獣医師。名指しで紹介しています。言ってみれば交通整理の役目ですね。つまり人間で言うプライマリー・ケアです。そして、検査や治療が終われば再びこちらに戻ってもらい、必要なケアをしていきます。実は、このやり方のほうが、動物にも飼い主様にも負担がかかりません。飼い主様にとっては、不案内な大学病院にいつまでもお世話になるのは大変です。動物にしても、例えば入院する場合、教科書通りの処置をしていても、入院自体がストレスになって治らないことがあるんです。適切な処理をした後は、できるだけ飼い主様と過ごした方が治りも早いのです。飼い主様とペット、そして大学病院などの高度医療施設の間をつなぐホームドクターを目指して、日々の診療にあたっています。

ペット第一、飼い主第一の治療ですね。

はい。安心して任せてもらえる獣医師でありたいと思っています。そのためにさらに心がけているのが、飼い主様とのコミュニケーション、インフォームドコンセントを十分に行うことです。必要なデータは、専門的であってもしっかりお見せし、行う治療の根拠が何か、理解できるように説明します。獣医師が行うのは一方的な治療ではなく、飼い主様と一緒に協力し合いながら行う治療であるべきです。ですから、とことん説明し、飼い主様に納得してもらい、後悔しない治療をしていくようにしています。例えば、今ペットの悪性腫瘍が増えています。これには抗がん剤などの化学療法が適しているのですが、抗がん剤というと、人間の抗がん剤治療をイメージして拒否される飼い主様が多いです。しかし、動物の場合、体が小さいため強い抗がん剤治療は行わず、副作用がないように必要最小量を投薬していくため、体に掛かる負担は大きくありません。朝来院して投薬したら、夜にはまた飼い主様の元に帰ってもらうことができるんです。こうしたことを十分に説明し、納得していただくまでその治療は行いません。

獣医師間の連携を図り地域貢献を充実

地域の獣医師の方々と連携して活動されているとうかがいましたが、それについて教えてください。

2008年ころから準備し、昨年「東京城南 地域獣医療推進協会」(TRVA)を発足し、「夜間救急動物医療センター」および「動物2次医療センター」を開設しました。これは、城南から城西にかけての42名の獣医師に呼びかけて立ち上げました。近年、動物の救急医療のニーズが高まりつつあります。しかし、個々の開業医では対応に限界があります。私自身、夜間の急な治療や手術に対応し続けて体を壊してしまったことがあります。獣医師が倒れてしまっては本末転倒です。これは「神様からのイエローカード」だと思い、協力し合って夜間救急ができる体制を整えました。動物2次医療センターも、高度医療の需要増加に対応したものです。難しい症例の場合大学病院などを紹介しますが、緊急性が高いものについては大学病院では間に合わないこともあるのです。現在、このセンターを構築することで、循環器および整形外科で高度医療ができるようになりました。これらのセンターは、飼い主様のニーズに応えるとともに、獣医師側の負担を減らし、さらに充実した医療を実現するものです。2013年には夜間救急動物医療センターを24時間医療体制にし、さらに充実させていこうと考えています。

獣医師会品川支部でも活動されているそうですね。

以前から区の教育委員会と取り交わしがあり、小中学校での動物飼育支援を行っていましたが、2007年から正式に活動を始めました。以前からの動物飼育支援に加え、依頼のあった小中学校での講演や実習指導、先生たちへの指導などを行っています。全体で年に20〜25校、私も1年に4〜5回は学校へ行って講義しています。白衣を着ていくと子どもたちも目を輝かせて話を聞いてくれるのでうれしいですね。パワーポイントで資料を用意してかなり本格的な講義をします。ウサギ、チャボ、モルモットなどの動物の飼育方法や生態を教えます。また、ウサギを教室に連れて行き、子どもたちに聴診器で心音を聞かせてあげるような実習もします。動物と触れ合うことで獣医師になってほしい、動物を好きになってほしい……そこまでは望みませんが、せめて動物を嫌いにならないでほしいと思っています。

地域貢献も含め、今後の展望をお願いします。

TRVA夜間救急動物医療センターは、富士通さんと提携して電子カルテ化と医療クラウドの構築を行っています。これにより症例データの蓄積ができ、地域ごとの症例の傾向やペット飼育の問題を明らかにすることができると考えており、いずれなんらかの形で地域に還元したいと思っています。また、TRVAを、何かと忙しい獣医師同士のコミュニティーに成長させるのが私の夢です。獣医師同士で情報を交換し、治療方法を共有していけば、より良い動物医療が実現できるでしょう。さらにここから飼い主様にペットに関する正しい情報を発信してゆきたいと考えています。また、当院としては、さらに内科的なデータの蓄積を進め、総合医療の窓口としてのスキルをアップデートしていきたいと考えています。

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