飯田雅子 院長の独自取材記事
エムズ動物病院
(品川区/大井町駅)
最終更新日: 2023/01/22
大井町駅から徒歩約12分ほど、西大井駅からも徒歩15分ほどの池上通り沿いの1Fにある「エムズ動物病院」。近隣の動物たちがまず最初に訪れる医院として、2004年の開院以来、日々ペットたちの健康をサポートし続けている。子どもの頃から、動物に囲まれて暮らすことを夢見ていたという飯田雅子院長。凛とした雰囲気の中に動物に対する優しさが溢れていて、お話を伺っていると、ペットたちに第二の家族ができたようで心強く感じられる。明るくクリーンなイメージの院内も、女性ならではの細かい気配りが隅々まで行き届いており、動物たちを優しく見守ってくれていることがよくわかる。「ペットが幸せに暮らすために、できるだけのサポートを行っていきたい」と語る院長にクリニックについて、またペットと人間の関わりなどについてお話を伺った。 (取材日2013年1月21日)
「動物に囲まれて暮らす」という子どもの頃の夢
獣医師をめざされたきっかけを教えてください。
子どもの頃から家では犬や猫を飼っていて、常にペットが側にいる環境でした。ですから自然と動物と関わる仕事がしたいと考えるようになったのだと思います。小学生の頃に書いた、『将来なりたい職業』という作文には、「動物に囲まれて暮らす」と書いたのも覚えていますね。また何か資格を持ちたいと考えていたのもあって、子どもが考える動物と関わる仕事って、獣医さんしか思いつかなかったんです。今思うと、意外とその通りになったな、なんて思います(笑)。クリニックで看板犬をしているのは我が家のロキシーです。実家では最高で6匹のトイプードルを飼っていたことがあり、いつかはスタンダードプードルを飼いたいと思っていて、一員になりました。ロキシーは病院と家を行ったり来たりしているので、来られる飼い主さんのことも良く覚えていて、迎えに出たり遊んでいただいたりと良い受付スタッフとして活躍してくれています。
どのような動物が多いですか?
やはり小型犬と猫が多いですね。犬では大型犬、特に子犬は最近見かけなくなりました。当院はいわゆる町医者ですから、一般的な病気を広く受け入れています。特に専門や何かに特化しているわけではありませんが、地域の方が、まず最初に動物を連れてくる場所としてありたいと思っています。病状が難しい場合や、飼い主が専門的な治療を望まれた時には、専門の病院もご紹介しています。
近年はどんな病気が増えていますか?
犬の皮膚病は増えていますね。遺伝的なものも増えていますが、ストレスや精神的な面から悪化している子が多い印象があります。最近は、飼い主さんが小型犬をかわいがるばかりに擬人化してしまうような傾向がありますが、そのため犬も飼い主さんを頼って甘えん坊になってしまっています。そしてわがままになり発生したストレスが症状を生み出すことにも繋がっているんです。例えば皮膚を舐めるなどの問題行動が起こって、皮膚疾患も治りにくくなるというように繋がっているんですね。
人間でいう現代病のようなものでしょうか。飼う側の心得から、ペットが病気になるのは悲しいですね。
ペットは確かにかわいい家族の一員です。しかし飼う側の人間の意識が、犬は犬ということを理解しないと問題行動は出てきてしまいます。その根本はしつけです。日本人の犬に対する考え方は結構特殊で、外国とずいぶん違います。外国では犬を飼ったら、まずしつけ教室に通うのが当たり前という環境にありますが、日本はあまりしませんよね。日本のしつけ教室は価格が高くなかなか利用できないという難点も後押ししているかもしれません。そのあたりがもっと一般的になって、取り入れやすくなれば良いなといつも思っているのですが。品川区主催のしつけ方教室が年に2回ありますし、そういったオフィシャルなものを利用するのも良いと思います。
あらゆる方面から動物の声を聞いていく
こちらではしつけのご相談にも乗られているそうですね。
ちょっとした相談であれば、アドバイスはもちろんしています。しかし、しつけは簡単に話を聞いてすぐできるものではありません。また間違ったしつけは、時に危険を招きますので慎重に行わなければいけません。例えば噛み癖がある犬なら、家族に小さなお子さんがいれば万が一の事故の可能性がある。このように危険や急を要する場合は、しつけの専門機関も当院ではご紹介しています。また何が問題行動になるかも、それぞれです。田舎の一軒家と、都会のマンションの一室とでは、吠えること一つにしても状況が違います。ですから飼い主にとって問題がなく、他人に迷惑を掛けなければ、多少わがままでも良いとは思います。でも集合住宅で吠えて、近隣から苦情を言われて飼えなくなってしまった……というのでは、動物も人間もお互いに不幸ですよね。そうならないためにも、人間側にできることはあると思います。
飼い主側の意識も大切ですよね。
一時期は動物をアクセサリー感覚で飼うようなかんじの方もおられて心配にもなりました。最近は減ってきましたが、ペットを飼うというのは命を飼うことです。世話ができることは大前提として、命を飼う覚悟を持たなければいけません。それがあれば、例えば一人暮らしの方でも動物を飼うことは十分に可能です。仕事でお留守番が長いなら、それが我慢できるペットを飼う。犬ならしつけをしたり、向いている性格の個体や犬種を選ぶことでもリスクは避けられます。また一人暮らしなら犬より猫が向いているかもしれません。ご自身のライフスタイルで何が飼えるのか、そして種類と性格を良く考える。じっくり検討して検討して、必要なしつけもちゃんとするのが最低限の責任だと思います。
診察にあたって心がけていることは何ですか?
まず飼い主さんの話を聞き、それから動物をじっくりと診る視診、聞いて診る聴診、触って診る触診を行います。そうして動物の声を受け取っていくのが第一。また自分が明るく元気じゃないと、飼い主さんもペットも元気にしてあげられません。臨床の場で体感しているのですが、獣医師の仕事は動物を治すことだけではなく、飼い主さんの心に寄り添うことでもあります。大切なペットが病気や怪我をして心を痛めている飼い主さんが、ご自身の心までも壊してしまわないよう、できる限りのサポートをスタッフ全員でしていくことも心がけています。もちろん獣医療あっての我々ですが、飼い主さんの意向で治療をどこまでやるかを選択する場合もある。同じ症例でも看取るだけの方、高度医療を望まれる方と様々です。それぞれの気持ちを読み取り、最善の獣医療を提供していくことが、私たちの役目になると考えています。そこにも関連しますが、伝え方も気を遣う点です。例えば重症の場合、はっきりと病状は申し上げますが、「これは無理」と言われるのと「難しいですが少しでも本人が良くなるように頑張りましょう」と言われるのでは受け止め方が違いますよね。ペットも飼い主さんも頑張れるように接していくことはとても大切です。
近隣の動物たちが幸せに暮らせるためのサポートを
先生が思われる、良い動物病院の見つけ方はどんなものでしょう。
専門性の高い治療となると話は別ですが、一般的な症状で通う動物病院であれば口コミだと思います。よく飼い主さんから「引っ越すのだけれど、○○で良い病院知りませんか?」と訪ねられることがあります。知っていればご紹介もできますが、同じ品川区でも端と端ではかなり場所も違いますし、少しの距離でも日々通うとなれば負担になるもの。それに日常的に、また万が一の時にペットをサポートできるのはやはり近くの病院だと思うんです。ワンちゃんでしたらまずはご近所を散歩して、散歩をしているワンちゃんに声を掛けて病院をお聞きになってみてはいかがでしょうか。猫ちゃんの場合は飼っていらっしゃるご近所さんから聞くのが良いでしょう。そして爪切りや耳そうじといった簡単なもので訪れてみて、病院の雰囲気や、ペットとの相性みたいなものを見るのもおすすめです。
気軽に行ける場所があると安心ですものね。
病院は嫌いな子も多いですけど、当院には好きで来てくれる子もたくさんいます。以前ご近所のワンちゃんが逃げ出してしまった時、自分で自動ドアを開けて入ってきたことがありました。顔を見て、飼い主さんにお電話したら、慌ててお迎えに来られました(笑)。そこまで好きにならなくても大丈夫ですが、何かの機会に医院を訪れて、慣れてもらうのも良いことです。それに実際、そういう子の方が得です。例えばワクチン接種に来た時に、診察台で全部診させてくれれば、何か病気があった時も早く見つかる可能性があります。何かがおかしいとわかっていればその部分を診察できますが、飼い主さんも気づかない病気を発見してあげるためには、まず触れないと難しい。手を出したら噛みついたり、飼い主さんが押さえながら見るような子だと、やはりなかなかすみからすみまで診れませんからね。
今後こちらのクリニックをどのように発展させたいとお考えなのでしょう。
日夜進歩する獣医療を勉強して診察できる範囲を増やすこと、またより深く診察できるようになることは、常に心がけていきたいです。また当院には今2名のスタッフがおりますが、それぞれホリスティックケア・カウンセラー、動物看護士の資格を持っています。日々熱心に勉強もしてくれていますから、獣医療の環境を良くしていく意味でもスタッフの力を活かせればと思っています。いわゆる獣医さんとは別の分野になりますが、しつけや日常のケア、例えば歯磨きやグルーミングなど、動物の健康を見守るような場も設けられたら良いいですね。でもまずは、この地域でできることをひとつひとつ増やしていくことが目標です。ご近所の動物たちが、少しでも健康で幸せになってくれたら、私たちも幸せですね。