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井上龍太 院長の独自取材記事

フーレップ動物病院

(中央区/浜町駅)

最終更新日: 2023/01/22

浜町駅から徒歩5分、水天宮駅・人形町駅からも徒歩10分程。都心のビルに囲まれた一角にある「フーレップ動物病院」。待合室には、患者から依頼を受けたという被災地動物保護や里親募集のチラシ、患者同士が集う犬の散歩会の写真などが貼られ、地域住民とのつながりの深さが伝わってくる。2001年の開院から、動物とその飼い主を温かく見守っているのは井上龍太院長。北海道宗谷地区で牛や馬の診療に長年携わり、その後も都内の大規模な動物病院で臨床経験を重ねてきた。看板猫のカプリを抱きながら、診療方針や獣医師を志した理由、心に残るエピソードに至るまで、丁寧に質問に答えてくださった井上院長。動物の病気を治すだけなく飼い主の心のケアまで思いやる、真摯な姿勢と穏やかな笑顔が印象深い。 (取材日2012年12月12日)

小さい頃から自然科学に強く興味を持ち、友人の影響で獣医師の道へ

開院の経緯について教えてください。

僕が獣医師としてはじめて赴任したのは、北海道の中でも北のはずれの宗谷地区。そこで10年近く乳用牛や馬橇を引く馬を中心に診療してきました。都内では、「小鳥から象まで」診ることがモットーの大規模な動物病院で経験を積みました。実は、開業地を探していた頃、中央区はとくに選択肢にはなかったんです。たまたま獣医師仲間からこの場所を紹介され、都心では動物と人とのどのような生活があるのか興味が湧いてやってきました。この一帯はビルに囲まれた地域ですが、「どこで飼っているの?」と思うほど大型犬が多かったので、開業当初は驚きましたね。それでも最近は、大型犬よりも小型犬を飼う方が多いですね。

こちらの病院を一言で表すと?

完全地域密着のホームドクターです。一次診療を担う者として、気軽になんでもご相談に来ていただき、開院以来長いお付き合いのある患者さんが多いですね。以前勤務していた大病院では、爬虫類や鳥も含めて、幅広く診てきたので、大抵のことには対応しています。ただし、基本的にエキゾチックは野生動物なので、環境も含めてのケアが必要です。できる限りの応急処置をして、必要があれば専門の先生をご紹介しています。

獣医師を志したきっかけを教えてください。

動物が可愛くて好き、というのとはちょっと違います。子どもの頃から自然科学に興味があって、野原で虫を追い駆け回している子どもでした。獣医師に興味を持った最大の要因は、僕の小学生時代からの親友なんです。彼は先天的に体が弱く、「自分は将来獣医師になりたい。体が弱いからこそ、資格を取ってしっかり仕事をするんだ!」と言われて、まだ小学生だった僕はとても衝撃を受けました。彼がそう言うなら僕も獣医師をめざそうと決意し、大学時代は同じ講座で机を並べて勉強しました。彼も現在、獣医師として開業し、元気にしていますよ。

小学生時代から初志貫徹するのはたいへんですね。

中学生の夏休みに、動物園での飼育実習を経験してから、一層興味が強くなりました。僕は猛獣舎を担当し、ライオンの餌やりや掃除をしたんです。動物園の舞台裏を見たことは強烈な印象となり、以来動物園に入り浸るようになりました(笑)。また、漫画「ぼくの動物園日記」の主人公として描かれ、上野動物園の飼育員だった西山登志雄さんとの出会いも大きかったですね。東武動物公園に移られてからは「カバ園長さん」として有名になられましたが、すいぶん可愛がっていただき、彼の動物への深い愛情にとても影響を受けました。それから、泊りがけで野生動物の観察会にも頻繁に参加していましたね。僕は、動物の写真を撮る時も、顔のアップではなく、風景の中にいる動物の存在を撮るんです。同じ鹿でも、地域によって全く生態系が異なるんですよ。それぞれの環境で逞しく生きている動物の生きる姿に惹かれ、見入ってしまいます。獣医大学の面接試験でも、野生動物への興味を熱く語ってしまい「それは獣医師の仕事じゃないよ」と言われて口論になったんですが、なんとか合格できました(笑)。

治療の上で尊重するのは、動物と飼い主の関係

診療の際、心がけていることはありますか?

まだまだ未熟者ですが、飼い主さんと動物の関係こそが一番大切だと考えています。皆さん動物を治してほしい、可愛いと思う気持ちは同じですが、飼い主さんによって動物に対するスタンスはまったく違います。飼い主さんが現状をどう思い、何を望んでいるのか、しっかり気持ちを引き出すように心がけています。獣医師としては高度な治療法も含め、あらゆる手段を紹介しますが、選択するのは飼い主さんです。例えば、高度医療を選択しても、亡くなった後に「あそこまで動物に負荷をかけて、本当によかったのだろうか」と後悔する方もいらっしゃいます。経済的な問題以上に、気持ちの負担が大きいんですね。動物には辛い思いをさせたくないし、それでも治ってほしいという複雑な感情を受け止めながら、飼い主さんにとっても動物とっても最良の方法を見つけたいです。飼い主さんからご相談があれば、しつけの仕方などもアドバイスしますが、スタンダードなものではなく、関係性を考慮しながら、「こういう形ならでは」と柔軟にお話しするようにしています。

心に残るエピソードはありますか?

開業して間もない頃の話ですが、この辺りは問屋街のため大量に段ボールごみがあり、それを運んで生活するホームレスのおじさん達が結構いたんです。その中でも、名物のおじいちゃんがいて、雑種で毛がボサボサの太郎という犬と一緒に暮らしていました。生まれたばかりの太郎をたまたま拾ったそうで、とてもいいコンビで。太郎はいつもリヤカーの隣にいて、おじいちゃんのペースに合わせて歩いたり、そばでじっとしていたり。おじいちゃんの人柄がよいこともあって、太郎は地域の方にもとても可愛がられていたんです。そんなある日、段ボールの回収業者の社長さんと息子さんが「太郎の具合が悪そうだ」と心配顔で来院されて、お金は社長さんが負担するから診てほしいと言うんです。診察してみると、太郎は心臓が悪く、長期的な治療が必要な状態でした。すると今度は、問屋街で働く女性たちが「治療費は全部私達が出すから診てほしい」とやってきたんですよ。それ以来、定期的に診ていましたが、年々体調は悪くなっていきました。おじいちゃんにも遠慮があったのでしょう、なかなか太郎を連れて来なくなってしまったんですね。ところが、ある時ふと病院の外を見ると、太郎が1人で玄関にいるんです。僕がドアを開けて「どうしたの太郎?」と声をかけると、さーっと走っていくんだけど、ピタッと止まってこっちを見るんです。なんか様子がおかしいと思って「おいで」と呼ぶと、自分から病院に入ってきました。それまで、太郎はおじいちゃん以外の人には全然懐かず、僕にもそう簡単に触らせない子だったんです。診察してみると、お腹の水がパンパンに溜まっていて、苦しさに耐えきれず来たようでした。それから、何回かそういうことがありました。看護師さんが「あれ、太郎がまた来てますよ」と見つけて、お腹の水を抜いてあげると、またさーっと帰っていくんです。最終的には当院で預かることにして、最期を看取りました。おじいちゃんは淡々とされていたけど、落ち込んでいたと思います。「お世話になってありがとうございました」と頭を下げに来られて、それから1年も経たないうちにおじいちゃんも亡くなりました。これは忘れられない特別な思い出です。

高齢化する動物と飼い主。ペットロスのケアにも取り組んでいきたい

プライベートはどのように過ごされていますか?

北海道時代はよく山に行ってましたが、今はなかなか自分の時間をつくれないですね。休みの日は、小さい息子が3人いますので、一緒に遊ぶというより、家のことをあれこれ手伝っている内にあっという間に時間が過ぎてしまいます(笑)。子どもも動物が好きなので、動物園には連れて行きますよ。

最近に気になる疾患はありますか?

目立って来たのは、年を取って痴呆が出てきたワンちゃんです。目が見えない、臭いが嗅げないなど感覚が弱くなり、夜泣きや徘徊があると、ご相談に来られる方が増えています。サプリメントや薬で多少抑えることはできますが、完全な治癒は困難です。飼い主さんはとても頑張っていらっしゃいますが、デイケアなど社会的なサポート体制の必要性を感じています。夏場は皮膚炎が多く、アトピーのような症状が増えています。また、室内と外の気温差が激しいので、寒さがストレスになって吐いたり、お腹の調子を悪くしたりする子も多いようです。最近では、緊急地震速報が鳴ると怯えて様子がおかしくなるというご相談もありますが、飼い主さんがいる時は優しくなだめてあげてくださいね。

今後の展望について聞かせてください。

僕一人の力でできることには限りがありますが、地域の方と連携を深め、当院は窓口として幅広いサポートをしていきたいです。動物とお付き合いする以上、別れの悲しみは避けられませんが、何か気持ちを切り替えていけるようなお手伝いもしたいと考えています。僕も北海道時代から一緒にいたハスキー犬を当院で看取ったのですが、言葉では表現できない辛さを味わいました。獣医師としては、動物が亡くなってしまうと、飼い主さんとは接点が持てなくなります。以前、動物を亡くした患者さんから「最期まで診てくれた先生とお話がしたいので、診察ではないのだけどその時間について料金設定をしてください」と言われたことがあり、切ない気持ちになりました。こちらは来ていただければいつでもお話はできるのに、患者さんは迷惑になると遠慮してしまう……。複数飼っている方であれば、違う子を連れて来た時に、一緒に亡くなった子の思い出話もできますし、他の子を介して元気を取り戻していますが、一人だけ飼っていた方はどうされているかと気がかりですね。自分はカウンセラーではないので大したことはできませんが、いつでもお話に来ていただけるような環境づくりをしていきたいです。

最後に、動物を飼う上でのアドバイスをいただけますか?

できるだけ早く動物の変化に気づけるように 獣医師やトリマーなど、専門家と上手くお付き合いをしてみてください。そして、歯磨きもぜひやっていただきたいことのひとつです。最近は、動物でも虫歯や歯周病が増えています。他の病気がからんで治療ができない時には、もう少し歯が良い状態だったら、口から食べられたのにと思うことがあるんです。犬も猫も、お家でできるだけ小さい頃から歯ブラシに慣らしていくことです。動物は、されて嫌なことには強く抵抗しますが、我慢はできるようになります。歯周病と心臓病にも関連がありますし、口腔内の細菌は想像以上に多いので、飼い主さんの健康のためにもぜひ実践していただきたいです。

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