山口伸也 院長の独自取材記事
YPC東京動物整形外科病院
(江東区/大島駅)
最終更新日: 2023/01/22
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都営新宿線・大島駅から新大橋通りを東に真っ直ぐ歩いて5分のところにある「YPC東京動物整形外科病院」。1階入口の先には白と黄色を基調とした柔らかい雰囲気の待合室と診察室があり、2階には厳格に無菌が図られた2つの手術室と処置室、3階に入院室、4階にトリミング室を備える。獣医師・看護師ら総勢19人のスタッフを率いているのは、穏やかな語り口の山口伸也院長だ。先代である父の動物病院を引き継いでから27年、街のかかりつけ医として診療にあたる傍ら、国際学会や研修に参加して整形外科治療の研鑽を積んできた。今では東京でも有数の整形外科病院として名を馳せ、自院の症例だけで多数の論文を書き上げてきた。近隣の獣医師からも尊敬を集める、まさにスーパードクターだが、「実は整形外科に特化して猛勉強を始めたのは40歳をすぎてからなんです」と謙虚に語る山口院長。専門分野を極めようと考えた経緯、診療の特色やポリシー、さらにはプライベートに至るまで、じっくりとお話をお聞きした。 (取材日2013年9月24日)
最先端の設備を有し、整形外科・神経外科手術を専門的に行う
まずは、病院の特色について教えてください。
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対象を犬と猫に絞り、整形外科・神経外科に特化した診療を行っています。古くから来てくださっている飼い主様のペットについては一般診療も行っていますが、全体の9割を整形外科と神経外科の患者さんが占めています。そのほとんどが都内で開業している獣医師からの紹介でいらっしゃっていて、一般の動物病院でしたら年に数例というような難しい症例を抱えた子も多く集まります。骨折や関節疾患が大半ですが、脊髄神経疾患も多いですね。これは突発的に起こり、緊急性の高い病気です。麻痺が起こったら翌日にでもすぐに手術をしないといけない。このような疾患についても、いつでも受け入れられる体制を当院では整えています。
ビル4階まで診療設備があり、万全の体制を整えられていますね。
2つの手術室があり、両室ともに陽圧換気システムを備えています。これは、手術室内の気圧を高めて、外からほこりや細菌が入ってこないようにするシステムです。エアコンも無菌室用のものを導入し、手術室だけでなく、処置室と入院室にも同様のエアコンを設置しています。整形外科の治療は、感染との戦いです。手術中はもちろん、手術した後もきれいな空気の中に動物たちを置いておきたいんです。人工関節について海外研修を受けた時、手術室は完全無菌状態になっていて、その意識の高さに驚きました。同じレベルの治療を日本でも提供したいと思って、ようやく数年前にこれらの設備を完成させることができました。また、関節鏡を導入している点も大きな特徴です。患部を直接目で見ることができるので、CTやMRIよりも正確に状況を把握できるんです。日本で関節鏡を使用している病院はまだ多くはないのですが、世界ではスタンダードな器具として、広く使われているんですよ。
人材も豊富に揃っていらっしゃいますね。
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獣医師は、非常勤2人を含めて計9人在籍しています。皆、それぞれ他の動物病院で経験と技術を身につけた上で整形外科を志すようになった、意欲に満ちたメンバーが集まってくれているんです。さらに、麻酔の専門医も非常勤で在籍しています。実は、麻酔の設備にもかなりこだわっています。神経外科において麻酔はとてもデリケートな処置で、1キロクラスの動物や心臓疾患がある場合などは特に、従来の麻酔では対応が難しいんです。当院では、ドイツ製の最先端の麻酔機を取り入れていて、それを使いこなせる専門の麻酔医が所属してくれています。そして、看護師が7人、トリマーが2人。総勢19人のスタッフ体制です。
治る可能性があるのなら治すべく、自信を持って病気に立ち向かう
ペットに対して、また飼い主に対しての接し方のポリシーを教えてください。
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ペットは家族の一員であるという前提のもと、その子にとって何が一番いいのかを、その子の身になって考えています。飼い主様に対しては、飼い主様の気持ちを最優先することをいつも念頭に置いています。手術に踏み切るか見送るか、最終的に決めるのは飼い主様です。良くなる可能性もリスクもしっかりとご説明して、十二分に理解が得られた上で手術に臨みます。ただ私たちは、リスクのある手術を検討する際は、「だめかもしれないけれどやってみる」というような説明の仕方はしません。「これこれのリスクはあるが、手術が成功すれば100%の回復が見込める」とか、「今の技術なら治る見込みがありますよ」といった言い方をしています。治る可能性があるのなら治すべく、飼い主様のご理解のもと、自信を持って病気に立ち向っています。
整形外科、神経外科に特化するに至った経緯を聞かせてください。
開業以来、一般動物病院としてやってきたのですが、もともと整形外科の治療に向いていたようなんです。それなりの設備投資をしながら力を入れていたのですが、ある時、大学の外科教室で教員をしていた後輩が私の行った整形外科手術を見て、「かなり技術が高いし、本格的に勉強してみてはいかがですか」とアドバイスしてくれたんです。当時40歳くらいになっていたのですが、一念発起。母校の日本獣医生命科学大学獣医外科学教室に入り、猛勉強しましたね。やるほどに興味が沸いてきて、海外の学会や研修にも参加しました。海外の学会ってものすごく刺激になるんですよ。行くと必ず、「これがやりたい」というテーマが見つかる。学会発表や専門誌への執筆も積極的に行いました。外科教室の指導教授にすすめられて論文を提出し、博士号も取得できました。振り返ってみると、周りの方々に本当に恵まれていて、その支えがあったからこそ、今があるのだと思っています。
獣医師になろうと思ったきっかけはありますか?
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高校2年生の時に、父親から将来は獣医師にならないかと言われたんです。父がそう言うなら、期待に応えよう、父の動物病院を継ぐことが一番の親孝行だと考えました。でも実を言うと、特に子どもの頃には、獣医師の仕事にあまり良いイメージを持っていなかったんですよね(笑)。自宅で診療を行っていましたから、診療の手伝いをすることもあり、嫌がる動物たちを押さえていたりするのが嫌でたまりませんでした。それに、入院していた犬や猫が元気になるといなくなってしまうことも嫌でしたね。動物は大好きだったので、入院室の前を通る度にかわいがって仲良くなるのですが、いなくなると寂しくて(笑)。ですから、最初の頃は今に比べると、仕事に対する意識はあまり高くなかったと思います。でも、40歳を過ぎて面白さがわかってからは、こんなにやり甲斐のある仕事はないなと、つくづく感じているんです。今は、この仕事をすすめてくれた父親に、心の底から感謝していますね。
飼い主の期待に応えられる病院であり続けること、それが一番の目標
整形外科を本格的に勉強するようになる前のお話を聞かせてください。
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大学を卒業してからは他の動物病院で修行をしていたんですが、3年目に父親が体調を崩してからは、こちらの病院を手伝うようになりました。その6年後、正式に私が引き継ぎました。だんだんとスタッフ数が増え、家庭を持ち、どんどん責任感が増していきますよね。責任をまっとうするためには、仕事に対するモチベーションを高く保つ必要があったんです。日々の仕事の中に、自分が好きで突き詰めていきたいと思えることを取り入れていこうと考えるようになっていたとき、ちょうどそれが整形外科だと思えたんです。ただ、整形外科は設備投資にすごくお金がかかります。突き詰めていっても採算が取れるようになるかはわかりません。それでも好きなことを貫こうと、自分で自分を奮い立たせて勉強してきました。その積み重ねが、まさかここまでになるとは思っていませんでしたけれど、自分の道を信じてやってこれて良かったです。
リフレッシュのためにされていることはありますか?
仲間とゴルフに行ったり、山登りをしたりします。年に数回は、一泊二日でバイクに乗って行きます。バイクも好きです。山とバイクはセットなんですよ(笑)。八ヶ岳とか北アルプスとか、メジャーな山が中心です。そうそう、今年の夏には北海道の山に登ってきましたよ。やはりバイクで行ったんですが、10日間くらいの行程になってしまいました。そんなに長く仕事を空けたことは今までありませんでしたが、スタッフも育ってきていますから、皆に任せて行かせてもらいました。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
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「ここなら治せるだろう」と期待を抱いて来院される飼い主様のために、きちんと応えられる動物病院でありたいと思います。もちろん、私たちにも得意、不得意はありますので、できないことは専門病院をご紹介していますが、できることはしっかりまっとうしていきたいですね。まだまだこれからも、さらに技術や知識を磨いていくために、国際学会に参加したり、幅広く文献を読んだりして、刺激を求め続けています。整形外科、神経外科に関することでご心配なことがあれば、気軽にご相談していただきたいですね。幸い、近隣の獣医師からも一定のご評価をいただけております。今後もそうあり続けられるよう、さらに意識を高めて、努力を重ねていきたいと思います。