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小林 健二 院長の独自取材記事
ケン動物病院
(西東京市/西武柳沢駅)
最終更新日: 2023/01/22
西部柳沢駅より徒歩2分、商店街の一角にある「ケン動物病院」が開業したのは1988年。この地で生まれ育ったという小林健二院長は、ホームドクターとして地域密着型の診療を行っている。獣医療の世界でも高度医療がどんどん進化していく中、かかりつけ医として病気の発見に努め、大きな病院に行かなくても治療を完結できるよう幅広い症例に対応している。インフォームドコンセントを重視し、何か飼い主とペットにとって最善の方法であるのかを常に考えている小林院長。その優しい雰囲気に安心するのか、飼い主宅から逃げ出した犬が病院にやってきたこともあるそう。そんな小林院長に、獣医師としてのターニングポイントや趣味のことまでたくさんの話を聞いた。 (取材日2016年7月4日)
地域のかかりつけ医として幅広い症例に対応
開院にあたり、この地域を選んだ理由をお聞かせください。
私は実家はこの場所なので、生まれも育ちも柳沢なんです。開業当初はちょうどバブルの頃で土地の値段も高く、いろいろな場所を探しましたがなかなか縁がありませんでした。兄も実家を離れて就職していましたし、小さい頃から過ごしたこの地域なら周りの環境もよく知っていると考え、スペースもあったことからここに開業することに決めました。この辺りの人たちはだいたい顔見知りです。昔の同級生がペットを連れてきてくれることもありますよ。
地域に密着した動物病院なのですね。
ホームドクターが基本だと思っています。かかりつけ医として、何でも気軽に相談していただけるよう、環境を整えておくのが私の役目だと思っています。今は獣医療でも専門医がどんどん出てきて、高度な治療が受けられるようになりましたが、私が開業した当初はそうではありませんでした。何でも診れて、どんな治療もする総合専門医だったんです。今でも考え方は一緒なんです。ペットを連れてきてもらって、「ここでは診れないから紹介します、予約をとって別な日に行ってください」という形をなるべく取らずに、私ができることは自分でやってあげたいと考えています。ペットを連れてあちこちに行くのは大変だし、ペットにとってもストレスです。もちろん例外もありますが、内科、外科問わず、目や耳、歯もここで診れることはここで完結できるように設備なども整えています。
飼い主さんも安心できる環境ですね。
ずっとそのスタンスで30年近くやってきたので、今の高度医療の時代では限界はありますが今後も続けていきたいと思っています。この病院にない検査、例えばMRIなどが必要になった時にはどうしても紹介した医療機関にいってもらう必要があるし、治療できる範囲にも限界があります。また飼い主さんが望むこともありますので、そういった場合は適切に紹介します。そうではないときは、なるべく自分のところですべての治療ができて、予後も診ていけると飼い主さんにも安心してもらえると思いますので続けていきたいですね。
予防の大切さと挑戦し続ける勇気
先生のターニングポイントとなった出来事はありますか?
私の原点を作ったのが千葉にある医院の先生で、その出会いがターニングポイントでしたね。その先生のすごいところは、何でも勇気をもって挑戦することなんです。当時の獣医療は正解が明確ではなく、外国から入ってきた情報を翻訳して、それぞれが自己流のやり方で取り組んでいた時代でした。初めてのことをするにはとても勇気がいることですが、チャレンジ精神が旺盛でとにかく何でも精一杯取り組む方でした。私より10歳年上ですが今でも現役で頑張っておられます。新しいものに対する貪欲さに感銘を受けました。それはいつも私の中にあって、治療方針やさまざまなことで悩むことがあった時は、あの先生ならどうするか考え、負けないように頑張ろうと思えるんです。一生懸命学んで、実行する姿はいつも私を励ましてくれます。
先生が治療の際に心がけていることは何ですか?
インフォームドコンセントを重視しています。動物は話せませんので、今どんな状態であるのか、これからどうなっていくのかを飼い主さんにはしっかり理解していただきたいと考えています。症状をなくす、あるいは軽減させるための治療にはさまざまな方法があり、飼い主さんのニーズによって治療方針は変わります。例えば、寝たきりになった時につきっきりで介護してあげられるのか、仕事で家を空けることが多いのか、金銭的な問題ももちろんあると思います。どこまでできるのかは人それぞれなので、オーダーメイドな医療を提供したいです。より治療に満足していただくためにも正確な診断を心掛け、専門用語を使い過ぎずに説明することや、注射や薬のあげ方など自宅での処置についてもできるだけ丁寧に指導しています。
今後もそれぞれに見合った医療を一緒に考えていきたい
日々の診療の中で印象に残っているエピソードがあればお聞かせください。
ありがたいなと思うのは、開業からずっと通い続けてくださっている飼い主さんがいることです。28年前ですから、ペットの寿命からしたら3代目、4代目になると思います。前の子が亡くなって、ありがとうございましたとお礼に来ていただき、また少しすると新しい家族を連れてここに来てくださる。それをもう28年間、何度も繰り返していただいています。そういう方たちがいると、本当にうれしく獣医師冥利に尽きますね。私がやってきたことに満足してくださっているという事実が最大の喜びです。皆さんにそう思っていただけるようにこれからも頑張りたいですね。
休日はどのようにお過ごしですか?
毎日経過観察が必要な子もいますので、午前中はここに来て様子を見たりすることが多いです。なので旅行には行けないので、最近町巡りを始めました。帝釈天や寅さん記念館をみてきたり、本所吾妻橋から築地市場まで歩いたりしています。すると途中で忠臣蔵の吉良上野介の屋敷があったり、新しい発見ができてとてもおもしろいんですよ。散歩に出て、おいしいお酒を飲むのが今一番の楽しみですね。いい気分転換になります。あとは昔からギターを弾くことと漫画を読むのが趣味です。家が傾くのではないかというほど漫画本を持っていますよ(笑)。その中でも、天才外科医が主人公の漫画は特に、私が獣医師となるきっかけのひとつでもある大好きな漫画です。運動は最近、スポーツジムでたまにプールに入るくらいですね。
では最後に今後の展望をお聞かせください。
ペットブームの頃に増えた動物たちが今ちょうど老齢期に差しかかっています。慢性疾患、腫瘍、腎臓や肝臓が悪いという症状が多く見られますね。人間も昨今、健康寿命を延ばそうと言われていますが、ペットも同じだと思いますので定期健診を根付かせたいと啓蒙活動をしています。ワンちゃんはフィラリア検査の際に血液で内臓系の検査もしていただいています。あとは冬にペットドックを実施しています。猫ちゃんも同様ににゃんこドックという定期健診を実施していて、最低年に2回は健診を受けてほしいと考えています。動物の1年は人間でいえば4年ですからね。早く病気をみつけてあげればそれだけ寿命も延びます。また終末期のケアについても飼い主さんと一緒に考えていきたいですね。延命処置を望む方もいれば、自然な形を望む方もいます。それぞれに合わせた治療をこれからも行っていきたいと思います。