西木 千絵 院長の独自取材記事
にしき動物病院
(八王子市/大塚・帝京大学駅)
最終更新日: 2023/01/22
多摩モノレール、大塚・帝京大学駅より徒歩3分ほど、野猿街道沿いにある「にしき動物病院」。犬や猫に加え、小鳥、ハムスター、うさぎ、モルモット、フェレットなど、診療対象は幅広い。獣医師をめざした時から、地域の動物たちのホームドクターとなることを目標にしてきたという院長の西木千絵先生。「地域のかかりつけ医として、すべての患者さんを受け入れたいですね」と温かく語る。現在、院長をはじめスタッフ全員が女性であるという同院。女性ならではの視点を生かした、きめ細かで丁寧な診療が受けられることも、飼い主の信頼につながっている。動物と飼い主双方の幸せを心から願う、朗らかで心優しい西木先生に、開業までの経緯やクリニックの特徴から、プライベートの過ごし方に至るまで、幅広く聞いた。 (取材日2017年3月28日)
いつでも気軽に来院できる、かかりつけ医でありたい
まずは、開業を決意されたきっかけをお聞かせください。
大学の頃から、ゆくゆくは開業したいと思っていました。卒業後はいくつかの動物病院などに勤務していましたが、その間に結婚や妊娠が重なり、いったんは仕事を辞めることになりました。それでも、出産2ヵ月後には「また仕事がしたい」と強く願うようになったんです。しかし、当時子育てしながらの勤務は難しく、「このタイミングで開業するしかないな」と。子どもが0歳の時から準備を始め、1995年5月に開業しました。当時は、仕事も子育ても手を抜かないよう懸命に努力しましたね。
診療対象や科目について教えていただけますか?
犬や猫に加え、小鳥、ハムスター、うさぎ、モルモット、フェレットなどを診療対象としています。当院では、爬虫類は診ていないんです。中でも、やはり犬や猫が多く、全体の9割ほどを占めていますね。科目については、いずれかに特化することなく、全般的に診ています。私はホームドクターとして、一次診療に携わることを目標としてきたからです。例えば、目が痛い、おなかが痛い、足が痛いなど、さまざまな症状で飼い主さんは動物を病院に連れて来られますよね。地域のかかりつけ医として、そういった患者さんすべてを受け入れたいと思っています。当院は、近所の飼い主さんたちが困った時にいつでも来院できる、かかりつけの動物病院でありたいんです。
クリニックの特徴についても教えてください。
現在、獣医師が3人、トリマー兼看護師が3人在籍しています。当院では担当医制にはしておらず、動物たちの治療に関してみんなで話し合います。1人の視点よりも3人の視点で診たほうが、より良い治療ができると思うんです。例えば、1人の先生だけだと見落としかねないことでも、3人の先生が診ることでカバーし合えます。また、私を含めスタッフ全員が女性ですので、動物たちに対して、女性ならではのこまやかな配慮ができることも当院の特徴なのではないでしょうか。
女性獣医師ならではのアドバイスや安心感を提供したい
女性獣医師ならではの診療が特徴なのですね。
動物の飼い主さんは、女性のほうが多いように思われます。私自身、仕事をしながら家事や子育てもしていますので、女性の飼い主さんに実際的なアドバイスができるんです。仕事や家事など忙しい生活の中で、どう工夫すればペットをより良くトリートメントできるか、同じ立場でお話しして差し上げることができます。また、犬や猫は女性に対して一層安心感を抱くように感じることもありますね。女性の触り方や声のかけ方が動物に安心感を与えるのかもしれません。当院では、家計をやりくりする主婦の視点で考えて、飼い主さんの診療費負担を減らせるように努力もしているんですよ。
飼い主さんに対して、どんなことを心がけておられますか?
信頼関係を大切にしていますね。飼い主さんは自分の子どものように大切にしている動物を、何とかしてあげたいと思って当院に来られます。よく話し合って私たちを信頼していただいた状態で、動物を治療したいのです。飼い主さんと穏やかに話をしていると、犬や猫もだんだんリラックスしてくるんですよ。また、診療の際、「診てもらって良かった」と感じていただくことに加え、飼い主さんが家でするべきケアを明確に示すようにもしています。「自分はこれを頑張ればいいんだ」ということがわかれば安心感が生まれると思うんです。適切な治療をするとともに、飼い主さん自身ができることを明確にしてあげることは大切だと思いますね。
これまでの診療の中で印象的だったエピソードがおありですか?
あるワンちゃんのことが印象に残っていますね。その子は吐き気が止まらないため、1歳の時にここに連れて来られました。先天的な疾患があり、長く生きられないような状態だったんです。それでも生きてほしいと飼い主さんはケアを受ける決断をされ、ワンちゃんもそれを全力で乗り越えてくれました。そしてつい最近17歳で亡くなりました。17歳まで生きてくれたことはうれしかったですね。飼い主さんも「先生のおかげでこんなに長生きさせてもらって」と感謝してくださいました。飼い主さんから「ありがとう」と言ってもらえると、本当に報われます。飼い主さんや動物の助けになれることが一番の喜びなんです。
人と動物の幸せを願い、きめ細かに診療にあたる
どんなきっかけで獣医師をめざされたのですか?
小学生の頃、理科の授業でフナの解剖がありました。腹部を開くと、外側からは見えないものが見えてきます。小さな体の中にいろいろなものが詰まっていて、心臓も肝臓もあるんです。「これはすごいな!」と感動しましたね。中学校では、理科の先生が生きたカエルを解剖してくださいました。心臓や筋肉が動いているんです。「こんな素晴らしいものを内部に秘めながら生きているんだ!」ととても感激しました。そうした感動が医療の道を志すきっかけとなったのだと思います。人を診る医師になることも考えましたが、専門にとらわれることなく幅広い科目を診たかったので、獣医師をめざすことに決めたんです。また、獣医師になるなら、かかりつけ医になりたいとも思っていましたね。
プライベートの過ごし方についても教えてください。
仕事を終えて帰宅し、家族の食事を準備した後、テニスのレッスンに通ったりしています。夜10時から12時までテニスをして、翌朝また病院に来るという感じです。週3~4回はテニスのレッスンを受けていますね。6年ほど前に脳梗塞を発症し、そのリハビリのために勧められたのがきっかけなんです。懸命にリハビリしましたので、今ではこまかい作業にも支障がないほど手も動くようになりました。また、病を患ってからは毎日を楽しむようにもなりましたね。診療後、友人と食事に行くことも多いんです。おしゃべりすることが、ストレス解消にもつながっています。悔いのないようアクティブに生きたいですね。
最後に、読者に向けたメッセージをお願いします。
飼い主さんも含めてすべての動物たちが幸せになってほしい、というのが私の心からの願いです。家に迎えた動物との暮らしを十分に楽しんでいただきたいです。そして最後の時を迎えた時、飼い主さんにはその子と暮らしたことを幸せに思ってもらいたいんです。「うちに来てくれてありがとう」と言って、動物を見送っていただけたら、と思います。よく最後がつらいから動物は飼いたくないと言われます。もちろんその気持ちは痛いほどわかりますが、その子と一緒に過ごした長い年月、お互いがどんなに幸せを与え、貰えたかに思いを馳せていただきたいと思います。そんな飼い主さんと動物の暮らしに少しでもお力になれたなら、獣医師として私は本当に幸せです。