笹井利浩 院長の独自取材記事
銀座ペットクリニック
(中央区/東銀座駅)
最終更新日: 2023/01/22
クリニックの理念は「ペットの声なき声、飼い主の話をじっくりと聴くこと」。そして診療のモットーは「飼い主と動物、双方の幸せを考えた獣医療」と語る、銀座ペットクリニックの笹井利浩院長。子どもの頃は犬や猫はもちろん、鹿や山羊、クジャクなどとも親しみながら育ち、自然に獣医師をめざしたという。外科と皮膚科、動物の鍼灸を専門として豊富な治療経験を持つが、最近は「動物と飼い主の生活の質を考え、治療は必要最小限にとどめる」ことをモットーとしている。動物を心から愛し、また、飼い主の心のケアにもきめ細かく配慮する良心的な診療姿勢で多くの飼い主から厚く信頼される。銀座での開業も、銀座老舗オーナーの愛猫のかかりつけ医であったことから話が進んだという。親しみやすい笑顔と、わかりやすい語り口も印象的でペット実用書の監修などマスメディアでも活躍する笹井院長。何でも相談したくなる優しく頼もしいドクターだ。 (取材日2014年4月25日)
先進医療と高い理念で多くの飼い主に信頼される、銀座のかかりつけ医
獣医師を志したきっかけを教えてください。
獣医師になろうと思ったのは父の影響だと思います。私が子どもの頃、動物好きな父は、デパート屋上のペットショップでさまざまな動物を手に入れ、家には山羊や鹿、クジャク、キジ、セントバーナード、ビーグル、三毛猫もいたのです。新聞社が取材に来たこともありましたし、動物保護のワシントン条約もない時代でしたから、ペンギンを飼うかどうかで家族会議を開いたこともありました(笑)。こうした環境の中で育つ中で、大切にかわいがってきた動物たちが病気になり亡くなるのがつらく、何とか助けたいという思いで獣医師をめざしました。
銀座で開業されるまでの経緯を教えてください。
卒業後はペットを支えるフードを学ぼうと考え、ペットフードの研究開発に携わりましたが、やはり獣医師になりたいという思いが強まり、都内の動物病院でインターンとなりました。その後独立して訪問診療専門の獣医師を1年間経験し、1996年に北千束で開業し、続いて芝浦にも分院を開設しました。当院開業のきっかけは、訪問診療をしていた頃に猫を診たことから、銀座の甘味屋さんとずっとお付き合いが続いていたことです。動物OKのテナントビルが空いていると紹介していただきました。銀座は動物禁止のビルが多く、動物病院は少ないのです。ビルのオーナーも猫好きな方でとても親切にしていただき、ご縁は有り難いな、一生懸命診療してきてよかったと改めて思っているところです。
銀座ペットクリニックの特徴を教えてください。
当院は、予防医学に努め、病気が見つかったら適切に処置し、重篤の場合は二次病院に紹介するかかりつけ医です。来院するのは犬が6割、猫が4割。病状は、下痢嘔吐や皮膚病が多いですね。25年間診療していますから何でも幅広く診ますし、外科手術の経験も豊富ですから自信はあります。手術の腕は、やはり手がけた症例数によりますから、経験の少ない若い先生よりはずっとうまいと思いますよ(笑) 。また鍼灸など東洋医学も取り入れています。今は椎間板ヘルニアもステロイド治療と鍼灸でほとんど治るようになり、オーナーさんにも喜んでいただいています。また、お忙しいオーナーさんが何度も通院されるのは大変ですし、高齢の方も増えてきていますので、できるだけ通院1回で治したいと考えています。
ペットの声なき声を聴き、飼い主の思いを聴くことを重視
先生の診療している中で大切にしていることを教えてください。
ペットは言葉が話せませんから、私たちの治療は「聴く」ことから始まると考えています。ペットたちの声にならない声を聴くこと、オーナーさんの話をじっくりと聴くということです。そしてインフォームドコンセントを重視して、親身のカウンセリングをもとに、豊富な経験と先進の医療技術を使いながら、本当に必要で最適な治療を良心的な費用で行っています。何よりも倫理観を大切に、当たり前のことですが必要のない手術や検査、高額な治療、説明のない診療は決して行ってはいけないと思っています。普通にお勤めされている方が、気楽に安心してペットを飼えるような獣医療であるべきだと考えています。
印象的なペットや飼い主さんとのエピソードがありますか。
たくさんの思い出がありますが、最近では、1年半前に胃がんが見つかったパピヨンと再会したのが印象部会ですね。手術では摘出できない部位のがんで、栄養チューブで流動食を摂れるようにしたのですが、幸いがんが進行せず、今では自分でごはんも食べるようになったと聞いて本当に嬉しく思いました。私は外科が専門ですから、25年間多くの手術を手がけてきましたが、積極的にメスを入れてペットが亡くなると、オーナーさんには後悔が残ることが多いのです。特に10才以上のペットは外科手術をするより、温存療法で最後まで穏やかに過ごす方がオーナーさんも満足されるようです。また、犬の上手な飼い方を解説した書籍の監修も手がけていて、登場する犬はすべて私の患者さんで、オーナーさんにもよい思い出になると喜ばれています。
最近増えている病気や、気になる傾向などがありますか。
アトピー性皮膚炎が増えていますね。目立つのはフレンチブルドッグや柴犬ですが、どの犬種にもみられます。当院では、ステロイドと自己免疫抑制剤や、減感作療法でアレルギーはほぼコントロールでき、さらに完治後の健康維持として、シャンプー療法やメディカル・アロマを取り入れています。メディカル・アロマは保湿効果とリラックス効果があり、ペットも落ち着くようです。獣医療が進歩し、ペットの寿命が延びるに連れて、認知症状やヘルニアで寝たきりになるケースが増えてきました。こうした場合、最も注意しなければならないのは、実はオーナーさんの心のケアです。介護に必死になり過ぎてノイローゼのようになる方も少なくないので、時にはペットを預かり、旅行や食事に出掛けて気分転換されるようにお勧めしています。高齢ペットなどの訪問診療の場合も、診療の半分はオーナーさんの心のケアに費やしています。オーナーさんが心身共に元気であることが、ペットにもとても重要だと思います。
しつけやマナーを充実させ、もっと広がりのあるペットライフを提案
ところで、お休みの日はどう過ごされていますか。
小さい頃から身近に動物がいるのが普通でしたから、大人になってからもずっとペットは飼っています。今は、ラブラドール・レトリバーのスウィーティーと、アメリカンショートヘアの猫が4匹います。ふだん1日中室内で仕事をしていますので、休日は釣りやゴルフで大自然の中でリフレッシュするように心がけていて、釣りのときはスウィーティーも連れていきます。ラブラドールは水が大好きなので、水辺で遊ぶ姿を見ると心が和みますね。キャンプに猫を連れていったこともあります(笑)。また釣りやゴルフの仲間はお互いしがらみのない関係で、人生のことや家族のことなどざっくばらんに話ができる仲間です。異業種の方も多いので、いろいろな話を聴くことができ、勉強にもなりますね。
銀座ペットクリニックとしてめざすところをお聞かせください。
銀座の小さいクリニックですが、銀座周辺のワンちゃん、猫ちゃんのよき相談相手として、かかりつけ医として信頼していただけるクリニックでありたいと思っています。またペットだけでなく、オーナーさんも高齢の方が増えていますので、負担を少なくするために送迎や訪問診療にも力を入れていきたいと考えています。当院にはインドネシアの獣医大学より獣医師が研修に来ますので、若いドクターたちに日本の獣医技術を学んでもらい、両国の架け橋にもなりたいと思っています。私は、今まで人と動物との出会いに恵まれ、後輩ドクターやスタッフにも恵まれ、銀座でも開業することができました。今後も動物たちが元気になった姿を見るために、飼い主さんの喜ばれる顔を見るために真摯に診療を続けていきたいと思います。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
ペットは家族の一員ですが寿命は十数年で、人よりは短いことを認識し、予防医学に力を入れてください。最近は検査器機が発達し、さまざまな治療方法も進化してきました。ペットに関するハード面は欧米並みになってきたと思いますので、次は、飼い主の皆さんに、しつけやマナーといったソフト面に力を入れていただきたいですね。きちんと去勢手術を受け、しつけができたペットは、旅行やレストランにもつれて行くことができます。銀座にもワンちゃんと楽しめるレストランがあります。ソフト面を充実させて、ペットとの行動範囲や、ペットと暮らすシーンを広げていただきたいと願っています。