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- 大澤 健先生、西角井 開先生、中村 悟先生
大澤 健先生、西角井 開先生、中村 悟先生の独自取材記事
夜間救急動物病院さいたま大宮
(さいたま市西区/西大宮駅)
最終更新日: 2023/01/22

広々としたエントランスの受付カウンターには、かわいらしいぬいぐるみや手芸品が置いてある。「すべて飼い主さんからのお礼なんです」と教えてくれた代表取締役の大澤健先生。取締役兼病院長の西角井 開先生、取締役兼副病院長の中村悟先生をはじめとする、さいたま市の獣医師会有志メンバーにより設立された「夜間救急動物病院さいたま大宮」。「地域に急患対応の夜間動物病院を作りたい」という思いから生まれた同院。2015年に開院した新しいクリニックながら、近隣に住む飼い主からは連日多くの問い合わせが寄せられている。勤務する獣医師の多くは個別に開業しており、日中個人動物病院での診療を終えてから同院で勤務しているというから驚きだ。動物と飼い主の不安を取り除くべく尽力する、獣医師たちの思いを聞いた。 (取材日2015年12月4日)
有志の熱意から始まった、地域に根差した夜間対応の救急動物病院を開設
はじめに、大宮地域で開院に至った経緯を教えてください。

【中村先生】20年以上前のさいたま市には夜間の救急病院がなく、深夜に動物の容態が急変しても問い合わせる場所がありませんでした。こうした状況を改善するべく「地域を網羅できる夜間救急病院を作ろう」と声をあげたのが、さいたま市の獣医師会会員有志一同です。各自が設立をめざして自力を高めていたある日、同じ夢を志すメンバーが集まり、知識取得や開院準備に取り組むように。そしてようやく大宮地域での開院が実現。現在はのべ34名の獣医師が個人での診療を終えたのちこちらへ登院し、持ち回りで診療にあたっています。
夜間ならではの独特の診療体制の中、心がけている点などはありますか?
【大澤先生】「処置を終えた翌日には、必ずかかりつけ医にお返しすること」を大前提にしています。飼い主さんの訴え、病状、治療の結果を報告書にまとめ、朝までにかかりつけ医宛てにFAXかメールを送信。かかりつけ医を持っていない飼い主さんに関しては報告書を手渡しし、日中開いている動物病院に行ってもらうよう徹底しています。私たちが行うのは、あくまでも応急処置。ここで完結する治療はほとんどないと言っていいでしょう。いつも通っている動物病院だからこそわかることやできることがあるし、その後の対応もスムーズです。また、ここは救急病院ですので、予防処置などには対応していません。そうした点においても、相談できるかかりつけ医を持つことは大切ですね。
先生方が獣医師をめざしたきっかけはなんでしょうか。

【西角井先生】両親が動物好きで、生まれたときから犬や猫、にわとりなどと一緒でした。動物の生と死を近くで見てきて、病気でつらそうにしているのを救いたいと思ったことが獣医師をめざしたきっかけですね。今この仕事に就けていることが本当に幸せです。 【大澤先生】私も幼いころから魚や爬虫類を中心に動物が好きだったことが理由です。学生時代は人と話すのが苦手で、動物となら話せるかなと思ったのもありましたが(笑)。小さい頃はよく虫や動物を拾ってきて、両親に怒られていましたね。 【中村先生】実家が「但馬牛」というブランド牛を育てている畜産農家で、昔から動物に親しみを感じていました。学生時代に開業医の先生にお世話になっていたこともあり、そのまま自分も開業医に、という流れですね。
常に複数名の獣医師とスタッフが待機し、精密検査も可能
診療できる動物の種類には、どんなものがありますか。

【西角井先生】犬や猫、うさぎ、フェレット、ハムスターやモルモットなどが多いでしょうか。その時の担当獣医師によって診療可能な動物種は異なりますので、来院の前に電話で確認してもらうのが確実です。スタッフは常に4〜5名待機していますので、大型犬にも対応できます。地域外からの問い合わせや来院も受け付けていますよ。「会社から帰ったら元気がない。日中のうちに動物病院に行けなかったので診てほしい」という飼い主さんも来院されます。主な症状としては、落下や交通事故などによる外傷、強い痛みの訴え、誤飲など。中でもチョコレートの誤飲は非常に多い。鼻や手足が届くところには置かないよう、飼い主さんには特に注意していただきたいです。また、喜ぶ食べ物だけ食べさせて肥満になった例も少なくありません。好きな物を与えるのも愛情ですが、与えないのも愛情です。ペットは弱い生き物ですから、責任と節度を持って飼い主さんが管理してあげてください。
動物病院づくりにおけるこだわりを教えてください。
【大澤先生】飼い主さんは夜間に来院されるわけですから、わかりやすい場所での開院をめざしました。新大宮バイパス沿いにあり、目印となる大きな公園にもほど近い。駐車スペースを広くとってありますので、10台程度駐車できます。また、夜間ですので防犯面には特に気を使っており、監視カメラを導入しています。医療設備については、血液やレントゲン、超音波、内視鏡などの検査機器がそろっています。
獣医師グループによる「地域の動物病院」ならではの特徴は?

【中村先生】獣医師が常に3名以上勤務していることでしょうか。動物の診療は手探りな面が多く、珍しい動物になると特に慎重な姿勢が求められます。獣医師1人の意見で進めるより、2人の意見をすり合わせた方が明確な治療につながる場合が多い。診療にあたる獣医師の立場から見ても、相談できる人間が近くにいるという安心は大きいと思います。そうしたことも含め、スタッフ全員のコミュニケーションをより強固にしていきたいですね。
後輩育成や災害拠点を担う「地域の動物病院」をめざして
今後の展望についてお聞かせください。

【西角井先生】現在は開業医がメインとなって各自昼間の診療ののち診療にあたっていますが、いずれは夜間専従の獣医師をそろえたいと考えています。後輩たちだけで当院をまわせるようになれば彼らの勉強にもなりますし、朝から深夜まで働いている開業医の負担を減らすことにもつながります。学生の実習やセミナーの開催も予定していますよ。 【中村先生】近年、夜間病院に努めている獣医師の健康被害が問題視されている背景もありますので、もう少し運営が安定したら体制の変更に取り組みたいですね。飼い主さんや動物はもちろんですが、スタッフの健康を重要視することも経営陣の務めだと思いますので。
行政との関わりも視野に入れているとか。
【大澤先生】考えているのは、災害時に何かお手伝いができないかという事です。当院のそばにある三橋総合公園は犬や猫も入れるので、動物の避難場所という役割も果たせる場所ではないかと。当院は「みんなでつくったみんなの夜間救急動物病院」だと思っていて、災害時はもとより、普段の生活においても不安を相談できる「地域の寄り合い所」として認知される場所にしたいんです。そのためにも、行政を含め、周辺企業や学校との関わりを大切にしていきたいですね。
それでは最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

【中村先生】飼い主さんの不安を取り除くのが夜間救急病院の役目です。動物のことで気がかりなことがあったら「まず救急に電話する」という意識を持っていただきたいです。 【西角井先生】治療の経過は専門の獣医師に診てもらうのが一番ですから、通院しているかかりつけ医と連携している夜間救急病院を知っておくことが大切です。 【大澤先生】どんな症状でも飼い主さんが不安だと感じたら、それは救急病院にかかる理由になります。動物のためであると同時に、飼い主さんの安心にもつながるはず。まだ新しい動物病院ではありますが、開院を後押ししてくれた地域の皆さんに感謝をお返しできるよう、これからも精一杯日々の診療にあたっていきたいと思います。