「夜間動物救急センターでの緊張感を要する診療と、ここでの予防医療中心の診療でメリハリをつけた獣医師ライフを送っています」と語るのは、「山田動物病院」の山田耕一院長。川崎市獣医師会の副会長として、東日本初の獣医師会運営による夜間専門動物病院「夜間動物救急センター」の立ち上げに力をつくし、現在も週2回ほどセンターでの夜間診療を担当している、バイタリティーにあふれたベテラン獣医師だ。木曜、日曜、祝日の午後以外はクリニックで予防接種・健康診断を中心とした動物医療を提供しながら、夜には急性期のペットに対応する忙しい生活を続ける原動力とは? 「金儲けには興味がないから」と笑う山田院長に、動物、飼い主への思いとクリニックでの診療、そして救急センターでの診療との違いなどについてお話いただいた。
(取材日2015年7月22日)
―ご経歴を簡単に伺えますか?
東京都武蔵野市の日本獣医畜産大学で獣医療を学びました。私立の獣医科大学としては、麻布大学と並んで古い歴史を持つ大学ですが、数年前に名称変更を行い、日本獣医生命科学大学となったようです。当時は獣医科を卒業したら、数年間獣医院で修行をするのが当たり前の時代。私の場合、大学のケネルクラブの先輩から紹介を受けて、葛飾区にある「宮田動物病院」に職を得て、2年ほど修行時代を過ごしました。その後、川崎市幸区の尻手駅前に自分の動物病院を開業し、20数年前に現在の場所へ移転してきました。
―修行先の「宮田動物病院」はどのような医院でしたか?
犬猫を中心に、ごく一般的な診療を行う動物病院でした。当時は犬猫以外のいわゆるエキゾチックアニマルへの医療ニーズというのはほとんどなく、ビジネス的にも成り立たなかった。「動物病院は犬猫を診るもの」というのが常識のような時代だったのです。院長の宮田勝重医師は、先駆的でとてもエネルギッシュな方。「Dr.ネコひげ」の愛称で親しまれ、TV出演も多数、著書も多く出していらっしゃいました。そんな院長の動物病院で、「お金儲け」以外の獣医師のすべてをいろはから学ばせてもらったのです。現在でも私の動物医療はビジネスよりも臨床を大切に考えています。このスタイルで続けている限り、お金持ちにはなれそうにありませんが(笑)。
―「宮田動物病院」ではどのようなことを学ばれたのでしょうか?
動物の病気とその治療についてを全般的に。それに加えて、獣医師としてはとても大切な「固定のコツ」も学ばせてもらいました。診療時に動物をいかに安定した状態に保つかということなのですが、近年ではこれができない獣医師も多くいるようです。当院では基本的に私一人で診療にあたっていますので、動物たちをいかに安心させるか、いかに落ち着かせるかがとても重要になってきます。個体差はありますが、基本的に犬に対しては獣医師の方から距離を詰めて押さえる方法で、猫に対しては飼い主に語りかけをお願いしたりして固定しています。言葉の通じない動物相手ですから、全身を使ったコミュニケーションで安心させるようにしています。
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