動物病院・獣医を探すなら動物病院ドクターズ・ファイル

動物病院・獣医を探すなら動物病院ドクターズ・ファイル。
獣医の診療方針や人柄を独自取材で紹介。好みの条件で検索!
街の頼れる獣医さん 918 人、動物病院 9,832 件掲載中!(2024年03月28日現在)

豊田昌太郎 院長の独自取材記事

けいこくの森動物病院

(世田谷区/等々力駅)

最終更新日: 2023/01/22

世田谷に名高い等々力渓谷。23区内唯一の渓谷と言われるこの沢の縁に、その名を付けて建つのが「けいこくの森動物病院」だ。待合室の中はちょっと変わったベンチや犬を模した時計があり、不思議と落ち着いた雰囲気を損なわないのがこのクリニックの特徴かもしれない。豊田昌太郎院長は、応用生物科学の研究から獣医学に転身した経歴を持つ。それだけに、より確実な治療を期するために「自分が飼ったことのある動物しか診ない」というポリシーを持つなど、獣医療にかける情熱は強く、頼りがいのある獣医師だ。歯科や自己免疫疾患など、人医でもホットな治療にスポットを当てて取り組む珍しい獣医師でもある。日本のローカルからグローバルワイドの状況、そして、これからめざすべき獣医療の在り方などを熱く語ってもらった。 (取材日2015年4月1日)

増加する歯科、アレルギー治療のニーズに応える

対象の動物と主訴について教えてください。

当院は犬と猫の専門のクリニックです。それは自分が飼ったことのある動物だけを診るようにしているからです。どういう生活をしているのか、病気がどんな症状になるのかが実感を持って見ることができないからなんです。まだ開業して間がないために、それほど多くの症例を診ているわけではありませんが、高齢のペットが多く、猫は高齢になると腎臓病、心臓病、甲状腺疾患がワンセットになって発症することが多い傾向にあります。高齢の犬は外耳炎でいらっしゃることが多いです。耳も皮膚の延長ですので、皮膚の弱い子やケアが足りないとかかりやすいのですが、トリマーの方でもご存知ないことが多いようですね。飼い主さんは、臭いが出ていたり、かゆがったりすることで気が付きます。犬種によってかかりやすい、かかりづらいという違いがありますので注意が必要です。ケアが行き届かず、慢性化すると治療も困難になるので、症例によっては耳道の一部を切除する外科手術をすることもあります。ただし、耳道手術も犬種や症例によってリスクが高くなることもあるため、高度医療機関をご紹介することもあります。

歯科の治療を行っているそうですね。

破折などの治療もありますが、主に歯周病対策を行っています。人間同様、ペットも歯周病になることがあり、特に高齢化が進んでいる今、8歳以上になったらメンテナンスを考えていただいたほうが良いと思います。おそらく昔から歯周病はあったのでしょうが、長寿命化したために目立ってきたのが現状でしょう。歯周病は放置すると、腎臓や心臓などの全身疾患の原因になります。例えば犬なら「僧房弁(そうぼうべん)閉鎖不全症」という、大変重い心臓の病気にかかる可能性がとても高いのです。歯科的な対策としては、重度でない場合は、人間と同じように歯石除去をして、歯周病の改善を図りますが、重度の場合は抜歯してしまうこともあります。その後のリスクが軽減できるので、すべての歯を抜いてしまうこともあります。食事を心配される飼い主さんもいらっしゃいますが、歯を全部抜いてもドライフードなども問題なく食べられますので、ご心配は無用です。飼い主さんには、日ごろからハミガキのしつけなどをしていただければとも思いますが、犬に比べ、猫の場合は難しいかなと思います。

変わったところで、アトピー性皮膚炎、アレルギーの治療もされているとか。

近年増えているようですね。特に犬に多いです。遺伝的な要素が強く、柴犬によく見られます。人間の場合、原因となるアレルゲンは血液検査で分析しますが、ペットの場合、検査は高額なうえ精度が低く、可能性のある物質が100項目くらい出てきてしまう。正確を期するならその100項目の食品、物質を1個1個試していく負荷試験をやらなければならないわけです。現在はその程度の試験しかないので、かえって飼い主さんの負担にもなりますから、いきなりアレルギー試験をすることはありません。まず最初に通常の皮膚疾患の治療として内服薬や薬用シャンプーを試してみて、それでも長期間改善しないようなら、アレルギー試験を検討するというやり方にしています。

長寿命化するペットを長期で健康管理する

歯科、アレルギーなどニッチな領域に取り組んでいるのはなぜでしょうか。

本当に大切なのは内科だと考えて、それを中心に仕事はしていますが、同時に、罹患率の高いところをやらないとダメだろう、見逃したらまずいだろうと考えてのことです。最近は犬だけでなく猫のアレルギーも増えていますし、例えば、2〜3歳の犬の7割が、なんらかの口腔疾患を持っていると言われています。しかし、実際に治療をしている人はほとんどいません。ということはつまり、見逃されているということですよね。これは現在の教育制度の問題でもあるのだと思います。学部では、ウシやウマなどの歯科と一緒にほんのわずか学ぶだけで、小動物の歯科を学ぶ時間はほとんどありません。学部生の勉強はどうしても国家試験対策に偏重しがちですし、全体的な教育の在り方が変わらない限り、この状況は変わらないのではないかと感じています。とはいえ、最近は、若い先生方の間でも、口腔疾患の研究会に参加し熱心に取り組まれる方も増えてきました。

定期健診も積極的に取り組んでいらっしゃると伺いました。

1年に1、2回は受けていただければと考えています。というのも、犬猫は1年で人間の4歳に相当する年を取りますから。最低でも1年に1回受けていただくことで、疾病の早期発見、早期治療をすることができるでしょう。また、もうひとつ重要なのが、健康な状態のデータを取っておくということです。これは世界的にも有名なニューヨークのアニマルメディカルセンターで提唱され、グローバルスタンダードになりつつあります。集めるべきデータとして、主に血液、尿、便があります。血液からは腎臓病、肝臓病、内分泌系疾患が見えてきます。尿からは、ぼうこう・腎臓、便は消化管の疾病の有無を調べることができます。こうした基本調査に、年齢や必要に応じて超音波検査やホルモン検査を追加していくことになります。健康な状態のデータを把握しておくことで、体調不良が起きたときに、原因を特定しやすくなり、治療もスムーズに行えるようになります。日本ではまだ珍しいとは言われていますが、最近は問い合わせも増えてきましたし、取り組んでいるクリニックも少しずつ増えていると思います。

特に、定期健診を強く勧める症例などはあるのでしょうか。

犬の胆のうの病気が、近年ものすごく増えているのが問題だと思っています。「胆泥症(たんでいしょう)」という、人間でいうところの胆石症のような病気です。これは諸説ありますが原因がはっきりしておらず、世界的にも治療法が確立していない難しい症例で、10歳以上の犬で飛躍的にリスクが増加します。初期症状は、吐いたり食欲不振になったりする程度で、翌日にはケロっとしていることが多いのですが、進行してしまうと胆のうが破裂し胆汁性腹膜炎を起こします。こうなると死亡率は上昇してしまいますので、早期発見、早期治療しなければなりません。しかし、申し上げたようにはっきりとした症状が出にくいため、危険な状態になるまで飼い主さんが気づきにくいのがこの病気なのです。定期健診で観察していくのが一番良い方法ではないかと考えています。

飼い主に寄り添う治療を

設備が大変充実しているようですが、どのような特徴がありますか。

ペット用のデンタルユニット、歯科用レントゲンを入れているところは確かにそれほど多くないかもしれません。また、眼圧計と検眼用顕微鏡も導入しています。やはり病気を見逃したくありませんから設備にはこだわっています。あと、注意しているのが「視覚化し、モニターに映す」ということ。耳の中を見られるようにするオトスコープなどもそうですね。診察室にはモニターを4台入れており、尿、便の顕微鏡画像はもちろん、すべてのデータを飼い主さんにお見せできるようにしています。ペットの治療は基本的に高額になることも多いですから、飼い主さんに納得していただけなければ進めるべきではないと思うからです。また、納得していただけないまま治療すると、不信感を招き、もしかすると転院もお考えになるかもしれません。そうなると、また別のクリニックで一から検査を受けなければならず、時間の無駄になってしまいます。お金はお返しできても、時間はお返しできない。設備にこだわるのは、ご迷惑をおかけしないためでもあるのです。

飼い主さんとのやりとりで他に気を配られていることはありますか。

飼い主さんに寄り添うために、一度すべてを受け止めたいということです。私たちは普段の治療で見慣れている症例であっても、飼い主さんにとっては初めてで不安なものです。最初に、飼い主さんの持っている不安や要求をすべてお聞きする。説明や納得していただくのは、その後のこと。これは「なだめる」というのとも違うように思います。例えば皮膚病でいらした犬の話をお聞きするときに、「(皮膚や毛が落ちて)お掃除が大変なんですよね」と一言言って上げることができたら、飼い主さんも落ち着くことができるんです。

先生が獣医師をめざした理由を教えてください。

実は、一度他大学で院まで進み、研究職を志していたのですが、ちょうどあるときに獣医師に転換するきっかけとなる出来事が重なって、転身することになりました。それは、友達の犬がバンダナを飲み込んでしまったのを助けて「よかった!ありがとう!」と感謝されたことや、カンボジアの農村で痩せ衰えたウシを見て、このウシたちが農耕牛として寿命をまっとうできれば、小さな子どもたちの労働の負担が減るのではないか、と感じたことなどです。そうしたことすべてを満たしてくれるのが獣医師だったんですね。その時、応用生物科学分野で醸造の研究をしていて、研究成果は例えば100万、1000万の人の役に立つかもしれませんが、面と向かって交流できる仕事をしたかったという思いもありました。研究職になるかどうするかという時に、学部に入り直す勉強をして、なんとか合格したので獣医学科で学び直しました。同期に同い年の人間が2人いたのは面白いと思いましたね。1学年に10人くらいは、普通とはちょっと違うルートで入ってくるのがいるのだと後から聞きました(笑)。

今後の展望について教えてください。

より多くの知識を学び、技術を向上させていくことはもちろんですが、飼い主さんの不安を取り除くにはどうしたらいいかもしっかりと考えていきたいと思います。私は、飼い主さんも大切な治療スタッフの一人だと考えています。実際にお薬をあげたり、一番間近に触れ、見えているのは飼い主さんだからです。相互に信頼を得て、リレーションを取ることで、より良い治療ができる。そのために飼い主さんと良い関係を構築できるようにしていきたいですね。院としては、まだまだスタッフの手技が追いついていないところがありますので、しっかりと経験値を積ませていくようにしたいと思います。また、クリニックとしては夜間診療にも力を入れていくことも考えています。このエリアでも夜間救急の体制も整ってきましたが、やはり初めてのところではペットも緊張してしまいますので、できるだけなじみのあるところで診られるようにすることもできればと考えています。

動物病院ドクターズ・ファイルは、首都圏を中心としてエリア拡大中の獣医師・動物病院情報サイト。
路線・駅・行政区だけでなく、診療可能な動物からも検索できることが特徴的。
獣医師の診療方針や診療に対する想いを取材し記事として発信し、
ペットも大切な家族として健康管理を行うユーザーをサポートしています。

掲載情報について

掲載している各種情報は、株式会社ギミック、または株式会社ウェルネスが調査した情報をもとにしています。
出来るだけ正確な情報掲載に努めておりますが、内容を完全に保証するものではありません。
掲載されている医療機関へ受診を希望される場合は、事前に必ず該当の医療機関に直接ご確認ください。
当サービスによって生じた損害について、株式会社ギミック、および株式会社ウェルネスではその賠償の責任を一切負わないものとします。
情報に誤りがある場合には、お手数ですがお問い合わせフォームより編集部までご連絡をいただけますようお願いいたします。

TOP