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山田耕一 先生の独自取材記事

公益社団法人川崎市獣医師会 夜間動物救急センター

(川崎市高津区/二子新地駅)

最終更新日: 2023/01/22

二子新地駅より徒歩13分、多摩川沿いに面した「公益社団法人 川崎市獣医師会 夜間動物救急センター」。日本動物高度医療センターと併設していて、365日動き続ける動物の夜間救急を専門とした施設だ。深夜の診療時間帯には真っ暗闇の中、救急センターの一角だけに灯りがともる。「大切な命を救い、その時の苦しい状態をいかに楽にしてあげられるか」にこだわって診療にあたっているセンター長の山田耕一先生は、朗らかで親しみやすい印象だ。幼少期を動物たちと「同居」することで育まれてきた慈愛の心と、生死に直結した医療現場へのこだわりが、地域に暮らす多くの動物と飼い主の生活に安心を与えている。動物の夜間救急診療について、山田先生に伺った。 (取材日2015年7月9日)

突発的に起こる動物の病を救う夜間救急センター

このセンターが設立された経緯について教えてください。

このセンターは川崎市獣医師会の運営で、会所属の獣医師3名が交代で勤務しています。獣医師会が夜間診療の場所を探していた2007年頃に、日本動物高度医療センター設立に伴って「夜間診療をやって欲しい」という話をもらいました。そこでお互いのニーズが合致して、獣医師会の前理事長の協力でこのセンターが開設されました。高度医療センターとは併設していますが、それぞれ独立した病院として運営しています。それまでは個々に夜間診療を行っている病院も中にはありましたが、夜間を行う大きな病院は川崎市獣医師会所属ではない病院1つという状態でした。救急時に動物がすぐに駆け込める場所が少ないので、どうしたらいいか悩む飼い主さんが多い状況を考えて、それなら獣医師会でやろうと会員の総意で設立することに決まりました。

夜間救急どのような場所ですか?

一般の動物病院とは違い、予防・ワクチン・避妊手術などを行う場所ではなく、病気に特化しています。このセンターは夜間だけなので、入院はできません。翌朝には退院させてかかりつけ医に引き継ぐ、これが大基本です。重篤な症状の場合や継続治療が必要な場合には、高度医療センターに移動させて常に連携を取ることが可能ですが、年に1〜2件程度です。次にかかりつけ医が診ることも考えて、その獣医師のやり方を頭に入れた上で診療しなければいけません。持病のある場合は薬を持参してもらい、処方薬を見てその獣医師の考え方が長年の経験からすぐにわかります。その方針を尊重しながら診療することが大切です。1日でよくなることはありませんから、今ある病気をどう楽にして帰すかを重視しています。

患者の傾向を教えてください。

開設から8年携わってきた中で、ある程度病気の傾向をわかってきました。梅雨時は突然体をかゆがったり、低気圧が近づくと脳神経系の病気が増えます。飼い主がおいしいものを食べている12〜1月には拾い食い、2月はバレンタインデーがあるのでチョコレートの誤食もあります。寒い時期はカイロを誤って食べてしまうこともあり、猫の膀胱炎が増えたりします。誤食については何らかの症状が出ている場合もあれば、食べてしまってどうしようと心配して来られる場合もあります。老齢犬の持病悪化ももちろんあります。心臓や呼吸器疾患には酸素ボックスが必要で、貸出用の酸素ボックスに入れて、酸素発生器と一緒に帰宅してもらうケースも月に2件ほどあります。来院前の問い合わせの電話だけで、その病気について4割は把握できると思っています。

経験を積まなければこなせない命の現場

夜間救急の獣医師として必要なことはありますか?

獣医師1名、看護師1名の体制で診療にあたっています。救急患者を1人で診るため、ある程度の経験を積んでいなければ務まりません。ここでは手術も行いますから、1人で開腹手術ができなくてはいけません。最初は獣医師会で輪番をしていましたが、自分の病院が忙しく体がもたない獣医師が増えて、現在は3名で交代して診察を行っています。かかりつけ医に報告書として渡すために、治療した内容・血液検査・レントゲンなどすべてを明らかに、専門用語など並べず、飼い主が読むことを前提として書いています。次の患者がいなければ不安なことは何でも話してもらい、聞きたいことは聞いてくださいと言います。普段、かかりつけ医では聞きにくいことも聞けるのではないかと思います。

記憶に残っている患者のエピソードを聞かせてください。

一番大変だったのは、原因はわかりませんが腎臓の血管が切れてしまった犬で、ぐったりした貧血状態でした。エコーやレントゲンをした結果、お腹に血が溜まっているだろうと想定して開腹すると血の海でした。たまたまその時に獣医師会の会長がいて、2人で必死になって止血して助かりました。ここは診察台と手術台を兼ねています。飼い主はリアルタイムで治療の様子や、お腹の中も見ることができるのでびっくりされていました。止血して翌朝に帰宅しましたが、腎臓は一番奥にある臓器で出血点を探すまでが大変でした。あの時は出血が収まって、飼い主より獣医師の方がほっとしていたかもしれません。

夜間救急に携わることをどう感じていますか?

一般的な動物病院と違い、真の意味で生死に直結しています。命を預かっている意識を高く持って、医療をしている獣医師をしていると心から実感できるので、この仕事が好きです。その時の症状を緩和してあげるのが仕事で、ずっと先まで見守るわけではないので責任は感じないかもしれません。ただ今の状態を治してあげようという気概を感じていますし、とてもやりがいがあります。だからこそ続けられると思っています。後日お礼状をいただくこともあります。万が一亡くなってしまっても、「お世話になりました」と感謝の言葉をもらえるのが嬉しく感じています。治療する時は、飼い主がどう獣医師を見ているかなど気にもしないで、一生懸命治療に専念しているので、必死になってやれるだけのことをやります。その姿勢を認めてもらえたのかなと思っています。

幼少期をともに過ごした同居動物が育くんだ慈愛の精神

センターとして行っている取り組みはありますか?

センターが開設される前から「夜間傷病動物」という無料の制度があります。今は、保健所が閉鎖している時間帯や休日に動物の保護をセンターで引き受けています。飼い主のいない動物が事故などで倒れていてまだ息がある場合、ここに連れて来てもらいその治療にあたります。警察が動物を連れてくることもあります。そうした動物は飼い主がいないために帰す場所がないので、動物愛護センターに引き渡して里親を探してもらうようにしています。数は、全体の1割ほどいます。たとえ飼い主がいなくても、大切な命だから具合が悪い患者をほおっておくことはできません。地域の飼い主のいない動物に対しての大切なことだと信じています。

先生の子ども頃のお話を聞かせてください。

小学校1年の頃から、いつも動物がそばにいる生活をしてきました。一番多い時で犬1匹、猫5匹と暮らしていたこともあって、家族全員動物が好きでした。室内犬は今飼っているのが初めてですが、小さい頃は父と一緒に犬小屋を作った覚えがあります。中学時代に父が猫を拾ってきて以来、猫は絶えず家にいました。動物という意識はあまり持っていません。どちらかというと同居人というイメージです。ただ当時は動物病院が身近ではなかったので、患者の立場に立った経験がないことが一番の欠点だと思っています。もともと理科系で数学の教師をめざしていましたが、2年浪人してもうなれないだろうと諦めました。シフトチェンジして大学にたまたま合格したのが、獣医師になったきっかけです。

今後どのような展望を持っていらっしゃいますか?

「動物のためになる獣医師会」にしていきたいと思っています。動物が老人保健施設を訪問して触れ合うことで、痴呆が緩和したり悪化を遅らせるというデータが出ていますから、動物がどのような力を持っているか人はもっと知らないといけないと思います。動物を飼っている高齢者がもし先に亡くなっても、残されたその動物を育てていけるようなシステム作りをしたり、福島原発での出来事を踏まえて災害時の動物保護についても考えていこうとしています。このセンターの経営自体は赤字続きですが、それでも他の獣医師が休めるように、夜間救急を続けていこうと思います。

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