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北島 祐一 院長の独自取材記事

ナイル動物病院

(千葉市中央区/千葉寺駅)

最終更新日: 2023/01/22

千葉市中央区千葉寺、大網街道のハーモニープラザ交差点そばに立つのが「ナイル動物病院」だ。ターコイズブルーの外観が印象的な同クリニックは1998年の開業。以来、ホームドクターとして地域に暮らす犬や猫を見守ってきている。院長の北島佑一先生は、麻布大学を卒業後、人間医療の臨床検査技師として就業したが、再度、同大学の獣医学部に入学し、憧れの獣医師をめざしたという。北島院長は、地域の動物病院としてまずは一次医療をしっかりと行うことが重要と捉え、飼い主と動物に寄り添いながら丁寧に対応している。2004年には、千葉市緑区おゆみ野に分院を開設し、より多くの飼い主の期待に応える体制を整備。そんな北島院長に獣医療への思いを聞いた。 (取材日2017年4月27日)

臨床検査技師から憧れの獣医師の道へ

開業までの経緯を教えてください。

実は、私は、当初から獣医師をめざしたわけではないのです。子どもの頃から動物が好きで、カメや昆虫、鳥などいろいろな生きものを飼っていました。そんな姿を見て、母は獣医師にでもなれば、と話していました。でも、私自身はなりたいけれど、無理、絶対なれっこないと。それで、麻布大学の環境保健学部(現・生命環境科学部)に進み、人間医療の臨床検査技術を学びました。卒業後は、臨床検査技師として就労したのですが、やはり長年の憧れであった獣医師になりたいと思い、同大学の獣医学科を受験しました。当時は獣医師である妻と結婚したばかりだったのですが、妻が「仕事を辞めてもいいから」と言ってくれたことが大きな後押しとなりましたね。ずっと獣医師に憧れていましたし、大学時代には獣医師をめざす友人も多く、そんな周りの影響も大きかったと思います。

開業にあたってこの千葉寺を選んだ理由はどんなことだったのですか。

私の出身が長野、妻が神奈川ですので、千葉とはまったく縁がないんです。開業の場所を探している時、たまたま千葉に大学の先輩がいまして、一緒に見て回ったところ、この土地を見つけました。妻は長く勤務医をしていて獣医師としての基盤がありましたので、開業するなら早いほうがいいということで、ここで開業することにしました。当初はこの界隈はほとんど何もなかったですね。ここ最近になって沿線に新興住宅地が開発されてにぎやかになってきました。ナイルという名称は、実は、役所に開業届けを申請する時に慌ててその場で考えました。というのも、近くに青葉の森公園がありますので、それにちなんだ名前にしようと申請したら、その名前はすでに使用されています、と言われて。で、急に頭に浮かんだのがナイルでした。妻とエジプトに行ったことがありますので、それで思いついたのでしょう(笑)。

緑区にある分院はライン動物病院という名前ですね。

この病院が軌道に乗ってきましたので、2004年に千葉市緑区おゆみ野に分院を設立しました。名前は川つながりです。分院は妻が院長を務めており、スタッフはこの病院と交替で診療しています。診療設備はほとんど同じです。この界隈は、昔からお住まいの方や都会から引越してくる若い世帯とが混在していますので、このクリニックにも共働きの若い方々からお年寄りまで幅広い層が来院してくださっています。ライン動物病院のほうは、地元で長く住まわれている主婦の方が多くいらしています。

飼い主が無理なく行える治療を選択できることが大切

診療方針についてお聞かせください。

どの医療現場でもインフォームドコンセントが大切と言われていますが、私は、その医師側の話し方によって飼い主さんの受け取り方はまったく変わってくると考えています。ともするとインフォームドコンセントは、医師がやりたいことを飼い主さんに納得させるために行うと捉えられる恐れもあります。以前、ほかの病院から転院してきた飼い主さんがいらしたのですが、前の病院の治療経過や検査データを見ると非常にしっかり診療がなされていました。それで、何も問題はないですよ、と飼い主さんにお話したのですが、その飼い主さんは「もうこんな治療はやりきれません」と言うのですね。よくお話を伺うと、前の獣医師があまりにも熱心で親身になって話してくれるため、治療を断ることができないというのです。きっと時間的、あるいは経済的なこともあったのでしょう。

獣医師に言われるとなかなか断れないのもわかります。

獣医師の考える理想の医療と飼い主さんの考える理想の治療とは、隔たりがあることも多いと思います。その隔たりをなくして、飼い主さんに理解、納得していただくためには、選択肢をいくつも提案して、それぞれについてメリット・デメリットなどよく説明することが大切だと思います。私は、飼い主さんが無理なくできる範囲で、最良の獣医療を提供していきたいと考えています。ですので、時間や費用で制約がある場合は、例えばこの検査を省くとか、別のこんな治療法がある、しかし逆にこんなリスクもあります、というようにお話しています。飼い主さんとのお話にはかなり時間をかけていると思います。特に初診で初めて犬を飼われたという飼い主さんには、犬との付き合い方について充分に時間をかけて話していますね。

ほかに普段心がけていることはございますか。

1.5次医療といいますか、一次医療と二次医療の中間のやや高度な治療を謳っているクリニックもあるようですが、私は、地域のクリニックは、まずは一次医療機関としての役割をきちんと果たすことが重要と考えています。獣医師としてはもっと踏み込んだことをしたいとも思いますが、それは割り切って、高度医療はその専門施設にお任せすることにしています。地域のドクターとして当たり前のことを当たり前に、親切丁寧に診療を行っていこうと考えています。いろいろな検査をしてデータを得られれば診断に役立ちます。しかし、その分費用もかかりますし、何回も通わなくてはならず、飼い主さんの負担も大きくなります。そうではなくて、いかに少ない情報で正しい見立てができるか、的確な診断を下すことができるか、それが地域ドクターとして求められていることだと思います。

地域に多い野良猫。今後は行政とともに有効な打開策を

これまでで何か心に残ったエピソードはございますか。

開業当時、小さな子ども3人が母親と共に犬を連れてやってきたことがありました。彼らはそれはもうやかましく、クリニック内を走り回ったりして、とても困ったことを覚えています(笑)。それで、つい最近のことですが、その小さな子が大人になって、また犬を連れて来院してくれたんです。あの時のやんちゃな子どもがこんなに大きくなったのかと驚いたのと同時に、とてもうれしく思いました。もう開業してから20年近くたちますから、親子2代といわず3代にわたって通ってくださる方も多くおられます。先ほどもお話しましたように、この千葉寺は私の出身地ではありませんが、今ではもうほとんど私の地元だと感じています。

ところでプライベートの時間はどのようにお過ごしですか。

開業してからはほとんど休みなく働いてきて、ここ最近になって少しゆっくりできる時間がとれるようになりました。以前はバイクやサーフィン、バンド活動といろいろなことを楽しんでいましたが、開業後はすっぱりとやめましたね。休日は、家で小説を読むなどゆっくりしています。あとは、半年前に買ったスポーツカーにはまっています。軽自動車なのですが、なかなかの走り心地で楽しんでいます。以前、釣りをよくやっていたので、また海釣りも楽しみたいとも思っていますね。子どもも大きくなって手を離れたので、少しは自分の時間を楽しもうかなと思い始めています。

では最後に今後の展望をお願いいたします。

今後もスタッフと協力しながら、地域に密着した獣医療を提供していきたいと思います。近くに暮らすおじいちゃんおばあちゃんが庭で飼っている犬を、散歩がてら気兼ねなく連れて来られる、そんなクリニックでありたいですね。また、この界隈は大きな公園がある影響か、野良猫がとても多いのです。現在も公園の管理事務所の依頼で野良猫の去勢手術を行っています。今後は、行政や公園管理事務所などと協力して野良猫問題に対する打開策を考えていきたいですね。

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