広々としたエントランスの受付カウンターには、かわいらしいぬいぐるみや手芸品が置いてある。「すべて飼い主さんからのお礼なんです」と教えてくれた代表取締役の大澤健先生。取締役兼病院長の西角井 開先生、取締役兼副病院長の中村悟先生をはじめとする、さいたま市の獣医師会有志メンバーにより設立された「夜間救急動物病院さいたま大宮」。「地域に急患対応の夜間動物病院を作りたい」という思いから生まれた同院。2015年に開院した新しいクリニックながら、近隣に住む飼い主からは連日多くの問い合わせが寄せられている。勤務する獣医師の多くは個別に開業しており、日中個人動物病院での診療を終えてから同院で勤務しているというから驚きだ。動物と飼い主の不安を取り除くべく尽力する、獣医師たちの思いを聞いた。
(取材日2015年12月4日)
―はじめに、大宮地域で開院に至った経緯を教えてください。
【中村先生】20年以上前のさいたま市には夜間の救急病院がなく、深夜に動物の容態が急変しても問い合わせる場所がありませんでした。こうした状況を改善するべく「地域を網羅できる夜間救急病院を作ろう」と声をあげたのが、さいたま市の獣医師会会員有志一同です。各自が設立をめざして自力を高めていたある日、同じ夢を志すメンバーが集まり、知識取得や開院準備に取り組むように。そしてようやく大宮地域での開院が実現。現在はのべ34名の獣医師が個人での診療を終えたのちこちらへ登院し、持ち回りで診療にあたっています。
―夜間ならではの独特の診療体制の中、心がけている点などはありますか?
【大澤先生】「処置を終えた翌日には、必ずかかりつけ医にお返しすること」を大前提にしています。飼い主さんの訴え、病状、治療の結果を報告書にまとめ、朝までにかかりつけ医宛てにFAXかメールを送信。かかりつけ医を持っていない飼い主さんに関しては報告書を手渡しし、日中開いている動物病院に行ってもらうよう徹底しています。私たちが行うのは、あくまでも応急処置。ここで完結する治療はほとんどないと言っていいでしょう。いつも通っている動物病院だからこそわかることやできることがあるし、その後の対応もスムーズです。また、ここは救急病院ですので、予防処置などには対応していません。そうした点においても、相談できるかかりつけ医を持つことは大切ですね。
―先生方が獣医師をめざしたきっかけはなんでしょうか。
【西角井先生】両親が動物好きで、生まれたときから犬や猫、にわとりなどと一緒でした。動物の生と死を近くで見てきて、病気でつらそうにしているのを救いたいと思ったことが獣医師をめざしたきっかけですね。今この仕事に就けていることが本当に幸せです。
【大澤先生】私も幼いころから魚や爬虫類を中心に動物が好きだったことが理由です。学生時代は人と話すのが苦手で、動物となら話せるかなと思ったのもありましたが(笑)。小さい頃はよく虫や動物を拾ってきて、両親に怒られていましたね。
【中村先生】実家が「但馬牛」というブランド牛を育てている畜産農家で、昔から動物に親しみを感じていました。学生時代に開業医の先生にお世話になっていたこともあり、そのまま自分も開業医に、という流れですね。
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