くわ島一弘院長、くわ島惠子先生の独自取材記事

[一弘院長]酪農家である叔父である影響で獣医師を志したため、当初は牛や馬などを診たいという希望がありました。しかし大学の時、叔父に進路を相談したところ、畜産の厳しい現状を教えられてこちらの道に進みました。大学卒業後はしばらく勤務医をしていましたが、両親に「持ちビルの１階に動物病院を開いては」と提案され、結婚と開院を同時に決意。妻と2人で診療するのならば共通の知識と技術を得たほうが良いと考え、母校である麻布大学の大学病院にそろって入りました。そこで開業医に必要なスキルを習得したうえで、2005年に開業しました。 [惠子先生]子どもの頃から動物が好きだったので、漠然とこの仕事に興味がありました。それを決定的にしたのは湾岸戦争のオイル流出事故の際、被害にあった海鳥を日本人の獣医ボランティアの方が懸命に救助する姿をテレビで見て感銘を受けたからです。私もあんな風に動物たちの命を救う仕事をしたいと強く思いましたね。開業については大学入学時から興味ありましたが、私一人では難しいと考えていました。夫から「結婚して一緒にクリニックをやらないか」と誘われなければ、ずっと勤務医だったかもしれないし、家庭に入っていたかもしれませんね。

[惠子先生]病院を作った時のコンセプトは「人と人の輪」でした。私たちとも気軽に話し合えて、患者さん同士でも情報交換できるテラスのような病院にしたかったんです。壁やインテリアを温かみのある色合いにし、ほっとできる空間を演出しました。また、クリアな診療を心がけるために、待合室から診察室をガラス越しに見えるようにしています。 [一弘院長]患者さんに気軽に来ていただけ、何でも話していただける病院を目指しています。飼い主さんはこちらに聞きたくても、遠慮してしまうこともあると思うんです。そんな気持ちを少しでもほぐせるように、お互いに座ってじっくりお話しする診療スタイルにしました。インフォームド・コンセントをしっかりと取ることも大切にしていますね。口頭だけでは伝わりにくいこともあるので、要点をメモに書いてお渡しする工夫もしています。

[一弘院長]カラードプラ付きのエコーをはじめ、心電図の解析装置、ECGモニター、CO2レーザー、ICUキットなどをそろえ、一通りの検査・診察をできるようにしています。内視鏡はありませんが、必要な時は協力クリニックからお借りできるので対応可能です。珍しいところでは半導体レーザーの治療器もあるんですよ。コリを取ったり、ツボを押せるので犬猫の腰痛治療などに活用しています。体への負担も比較的少ないため、24歳の猫の緩和ケアにも使っています。 [惠子先生]当院は入院設備を備えていますが、できるだけお家でケアしていただくスタンスなんです。手術後、経過が良好で飼い主さんが看病できる場合は、その日のうちに帰っていただいています。もちろん、その際はどういうケアが必要なのかについては詳しく説明させていただいています。極力お家で看病したほうが飼い主さんペットも安心ですからね。

[一弘院長]この近辺だけでなく、東陽町や神保町、池袋エリアまでお伺いしています。訪問診療すると飼い主さんとの距離がぐっと縮まるから好きなんですよ。ペットが動けないだけでなく、飼い主さんが高齢で来院できない場合も訪問しています。例えば、おじいさんが認知症でおばあさんが歩けないお家の猫を往診していました。そこのお宅では診察のついでにゴミ出しや食器洗いのお手伝いもしていましたね。比較的料金も抑えているので、通院が不安な方は気軽に相談していただきたいです。

[一弘院長]通ってくださる方々へのサービスの一環として、提供しています。例えば、一般的にペットホテルは24時間単位で料金を設定しているため、朝預けて翌日の夕方に迎えに行くと2日分かかります。しかし、当院はあくまで1泊2日の費用なので少々お迎えが遅くても大丈夫です。夫婦で獣医師をしているのでサポートは手厚い点もメリットの一つですね。宿泊中はウェブカメラで監視し、何かあった時はすぐに対応できるようにしています。お預かり中は一頭ずつ散歩している点も飼い主さんには安心なようです。

[一弘院長]異物摘出などの手術スピードが速いことです。開業前に同じ大学病院で修行していたので、手術のテクニックが似ているんですよ。施術中に妻は絶妙なタイミングでアシストしてくれるのでとても助かっています。自分が往診に出ている時にも、安心して留守を任せられるのも良い点ですね。 [惠子先生]一緒に働くようになって、夫の誠実な仕事ぶりを間近で見られるようになったとこですね。学生の時から知っていますが、こんなにまじめだったのかと驚いているくらいです（笑）。メリハリのある診療をしていて、同じ獣医師としてとても尊敬しています。

[一弘院長]一つは高齢の方がお一人でペットを飼われているケースが非常に多いことですね。かわいそうだったのは、あるおじいさんがちょっと立ち話をしていた間に、飼い犬が交通事故にあったケースです。ご老人一人では20キロ以上ある犬のお世話や治療が困難だったためやむなく治療をやめることを選択され、愛犬を看取られました。こうした不幸な出来事を減らせるように、高齢の方が一人で飼われている場合はできるだけ気にかけるようにしています。もう一つは、「インターネットでこう書いてあったから」とペットの病気を飼い主さんが自己診断してしまうことですね。すべてとは言いませんが、インターネットには誤った情報が混じっていることがあります。勉強熱心なのは良いのですが、不確かな情報は鵜呑みにせずに私たち獣医師に相談していただきたいですね。そうしてうまくコミュニケーションを取っていただければ、その後のケアにも良い影響を与えるはずです。

[一弘院長]飼い主さんが治療について意見をはっきり言ってくださることにとても助かっています。例えば、「その注射はちょっと高いからほかの方法はないの？」とリクエストしていただけたほうが、その後の治療方針が立てやすいんです。私たちも飼い主さんの希望をかなえられるように、バリエーションのある診療を心がけています。あとは優しい方が多いことですね。「働き過ぎみたいだからちゃんと休んでね」など思いやりのある言葉をかけてくださいます。 [惠子先生]私たちを温かい目で見てくださっていることをひしひしと感じています。開業とほぼ同時期に出産したので、赤ちゃんだった息子を大型犬用のケージに入れて診察していたこともありました。忙しいときには飼い主さんたちが率先してあやしてくれたんですよ。みなさんのおかげで息子はまったく人見知りしない子になりました。また、外を歩いていて、「先生。こんにちは」と気軽に声をかけてくださると、町の一員として受け入れられていることを実感できてうれしいでね。

[一弘院長]飼い主さんとの距離感をもっと縮めていけるように頑張ります。「その症状いつからですか？」と尋ねると、「1週間前からです」という答えがよく返ってきます。犬や猫は私たちの6倍のスピードで生きていますので、人間だったら1ヵ月前からその症状に苦しんでいたことになるのです。もうちょっと早く来ていただければと思うことも多々あります。些細なことでもどんどん質問していただけるような関係を飼い主さんと築いていきたいですね。そして、これからも飼い主さんとペットたちのためになる診療を目指し続けていきます。 [惠子先生]飼ってらっしゃるペットの特性をもっとよく知っていただきたいですね。間違った飼い方や認識をしている方がまだまだ多いんです。例えば、小型犬にはお散歩が必要ないと思い込んでいたり、ウサギにはお水をあげなくてもいいと思い込んでいたり……。そうした思い込みを一つ一つ正していき、動物たちと飼い主さんが幸せに暮らせるお手伝いをしていきたいですね。