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水越崇博 院長の独自取材記事

池上アクア動物病院

(大田区/池上駅)

最終更新日: 2023/01/22

東急池上線池上駅から徒歩5分。「池上本門寺参道」と書かれた巨石が、「池上アクア動物病院」の目印だ。驚いて見とれていると、「この石は、もともとビルのオーナーさんの庭にあったものを移したらしいんですよ」と笑顔で医院から出て来てくれたのは、院長の水越崇博先生。町の優しい獣医師という印象だが、実は世界でも屈指の動物専門心臓外科チームの一員でもある。日本でもまだ55人ほどという獣医循環器認定医の資格を持ち、循環器診療にはとくに情熱を傾け、論文執筆や学会発表にも意欲的だ。そんな水越先生に、開院して1年目の医院への思い、また動物の心臓疾患とその治療などについて、詳しくお話を伺った。 (取材日2013年1月9日)

町の獣医師でありながら、心臓外科チームの一員として開胸手術にも参加

明るくておしゃれで、心地よい院内ですね。

ありがとうございます。「気軽に立ち寄って、コーヒーを飲んでいってください」と飼い主さんたちに申し上げているくらいで、ホテルやカフェのような空間にしたかったんです。来院する動物たちは緊張していますし、飼い主さんは心配で気持ちが沈んでいますよね。ですから、少しでもリラックスしていただける環境にしたかったんですよ。池上での開業を決めたのは、散歩している犬によく出合い、その犬たちがみな幸せそうな顔に見えたからです。この地域の飼い主さんは、動物を大事にする意識が高いように感じました。そうして昨年の2月14日……といってもバレンタイン・デーとは関係なく(笑)、開院の日を迎えました。自分の病院で初めての患者さんを迎えた時は、混合ワクチンの接種にも関わらず、獣医師になって初めて患者さんの前に出たときよりも緊張しました。それまでも長く獣医師をしてきたのに、不思議ですね。

先生は循環器がご専門だと伺いました。

はい。私の入学したとき、母校の北里大学では2年前に心臓外科がスタートしたばかりでした。臨床に触れる機会が多いほうがよいと思っていた私は大学内にある動物病院研究室に所属し、そこでたまたま出会ったのが、現在の循環器科の教授となる人だったんです。何か一つ強みが欲しいとも思っていたので、一緒に勉強をさせてもらいたいとお願いしたことが、循環器を専門にするきっかけになりました。以来11年ほど、その教授が中心となる心臓外科のチームに所属しています。当院で診療を行いながらも、ときどきそのチームで動物の心臓手術を行うというのが、私の働き方なんですよ。メンバーは、私のように開業していたり、勤務していたりで、手術のために集まってきます。これまで合計すると300回ほど、現在は年間50症例ほどの手術に参加しています。

どんな病気の手術を行うのですか?

「僧帽弁閉鎖不全症」の手術が代表的です。心臓の左心房と左心室の間にある弁で逆流を生じてしまう病気で、症状はせきから始まることが多く、また、健康診断やワクチン接種時の聴診で、心臓から雑音が聴こえて発見されるケースもあります。10歳を越えた老齢の小型犬に多い病気ですが、キャバリア・キングチャールズ・スパニエルは、犬種の特徴として若齢からでも発症します。僧帽弁閉鎖不全症に限らず、心臓疾患の内科的治療には限界があり、残念ながら完治することはありません。薬を用いて下り坂をなるべく平坦にし、できるだけ症状がなく、先を長くしてあげるという処置しかないんですね。そこで飼い主さんのなかには、外科的な治療を希望される方がいらっしゃるんです。開院して1年の間に、すでに一例、心臓手術を希望される方がいて、適切な医療機関へのご紹介を行いました。

「本当にそうか?」と考え今も続ける研究。論文執筆や学会発表も精力的にこなす

難しい手術なのですか?

そうですね。誰にでもできる手術ではありません。心臓をいったん止め、心臓を切り開いて僧帽弁の弁形成術を行い、再び心臓を動かす開心術で、執刀医である教授のもと、麻酔、器具出し、体外循環をコントロールする担当など、最低でも6人のチームで行います。チームを率いる私の恩師は、この分野ではとても有名で実績もあり、僧帽弁閉鎖不全症の手術依頼を受け、チームで渡米したこともあります。日本の獣医師がアメリカに呼ばれて手術をするということは、日本獣医師界にかつてなかったことでしょう。僧帽弁閉鎖不全症の手術では、手術数にしても成功率にしても、私たちのチームが世界的にもトップを走っています。おそらく今後も、欧米やアジアなどから手術依頼が来ると思うので、なるべく参加したいですね。

専門性をもった獣医師は頼りになりますね。

私は獣医循環器認定医の資格をもっていますが、こうした専門性はこれからますます重要になってくると思っています。人間のように深く診療しようとすれば、細分化はどうしても必要だと思うんです。実際、私が循環器の認定医だと知った飼い主さんが、他県からも問い合わせてきたこともありました。日本に獣医師はたくさんいますが、動いている心臓を直接見たことがある人はそれほど多くはないでしょう。心電図を見せるだけでは伝わらない心臓の動きや内部の様子を説明できることにも、循環器を専門にし、かつ手術にも立ち会っている経験が生きています。また私は、論文を書いたり、学会発表をしたりするという意識そのものも、獣医師として必要だと考えています。私自身、卒業して働きながらも大学に通い、手術や実験を手伝ったり、ほかの研究室の先生方とデータを出しあって、学会での発表を行ってきました。現在は、英語論文の執筆にも取り組んでいます。それは、研究実績を踏まえて根拠のある診療を行いたいという思いがあるからです。こうした意識が、動物医療の質の向上にもつながると信じています。

そう考えるようになったきっかけはあるのですか?

教授の影響ですね。「私の言っていることが全部正しいとは思うな」とよく言われました。目上の先生や先輩が言っていることが正しいとは限らない。自分で勉強して確かめろという意味なんですね。「獣医師界で常識とされていることが実は違うかもしれない」とも言っていました。そのおかげで、「本当にそうか?」と考える癖がついたようです。ちなみに、一緒に当院で診療をしている妻も同じ動物病院研究室の出身で、彼女は眼科を研究テーマとしていました。動物や飼い主さんに対する細かい気配りは、とてもまねができません。動物はしゃべらないので、ささいなシグナルを見落とさずに、「気づく」ということがとても大事なんです。私も彼女を見習って、日々努力しています。

映画『アウトブレイク』に影響を受け、動物好きよりは探究心で獣医師の道へ

特に印象に残っている症例はありますか?

「動脈管開存症」という病気の小型犬の手術を行ったことですね。お母さんのお腹の中にいるとき使われている肺動脈と大動脈をつなぐ血管があるのですが、通常は生まれて3日くらいでその血管はきゅっとつぶれて、血流が止まるんです。それが閉じずに開いたままになる先天性の心疾患で、放っておくと1年くらいで亡くなってしまいます。その犬は1.2kgほどの体重で、開胸の幅は4センチほど。心臓も同じくらいの大きさでした。執刀している私と助手くらいしか胸の中はほとんど見えない状態で手術を行いました。診断から手術まで、自分で、しかも自分の病院でできたことに達成感を感じて、とても印象に残る症例でした。

先生はなぜ獣医師をめざしたのですか?

中学生時代に『アウトブレイク』という映画を観て、ワクチンの開発や免疫関係の研究に興味を持ち、獣医学を勉強しようと決めたんです。ところが、大学で勉強するうちに臨床の面白さにとりつかれ、開業医になろうと考えが変わったんですよ。幼い頃から動物が好きだったというより、私はむしろ探究心のほうが大きかったようです。犬を飼ってはいましたが、ほしいほしいと大騒ぎしたくせに、散歩には連れて行かないという子どもでしたからね(笑)。現在は、ネコ好きの妻の影響で、ネコの魅力に目覚めました。つかず離れずな感じが、何ともいえません。残念ながら飼っていたネコは先々月突然亡くなってしまったんです。予兆もなく突然でしたので、手の施しようがありませんでした。落ち着いたら次もネコを飼いそうですが、いつか大型犬も飼ってみたいですね。

診療を離れた趣味も教えてください。

小さい頃からスポーツが好きで、野球やテニス、バスケットボールやサッカーもしてきました。ところが大学を卒業して以来、時間的ゆとりがなくなり、運動から遠ざかっていたら、ここへきて急に体が丸くなってしまいまして……(笑)。このままではまずいので、今年からスポーツジムに行こうと決意し、入会したところです。当院の休診日に心臓外科チームで手術の助手をつとめているため、なかなか休みもとれずにいるのですが、たまの休日はできるだけ子どもと遊ぶ時間をもつようにしています。お正月は河川敷に行って家族3人でたこを揚げてきました。

これからの目標をお聞かせください。

徐々にですが、専科を増やしていきたいですね。現在は、私が循環器、妻が眼科を診られますが、皮膚科や腫瘍科などの専門性を持った獣医師を新たに増やし、一次診療でありながら総合病院のような動物病院にできたらと思っています。そうでないと、それぞれの分野の診療が深まっていきません。また、外科の症例も増やしていきたい思いもあります。私が前に勤めていた病院は外科が得意で、私自身もそこで経験を積んできましたので。そうして当院をしっかり軌道に載せたら、これまで以上に心臓外科チームに参加することもできると思います。日々の診療がおろそかにならないよう勉強を積み、循環器医療にはしっかりと関わり続けていきたいです。

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