渡邉 幸孝 院長の独自取材記事
アニマルウェルネスセンター
(西東京市/ひばりヶ丘駅)
最終更新日: 2023/01/22
西武池袋線ひばりヶ丘駅から徒歩15分。閑静な住宅にたたずむ一軒家風の動物病院が、「アニマルウェルネスセンター」だ。気鋭の6人の獣医師がそれぞれの専門分野で日常の予防接種や健康管理のほか、「病気の原因がわからない」、「さまざまな原因で麻酔をかけることが危険」といった難しい状況の動物たちを、渡邉幸孝院長をはじめとする各獣医師が診療していく。広々とした院内は、カフェのようなおしゃれな雰囲気。「初診の動物は、とにかく全身を触診して異常がないか調べる」という渡邉院長に話を聞いた。 (取材日2016年7月19日)
気鋭の獣医師が先進の医療設備で客観的な診断
こちらには、獣医師が6人いらっしゃると聞きましたが?
はい。私自身は、1998年に麻布大学大学院を卒業し、日本生命科学大学で研修医を経て、2005年から当院の院長をしています。他の獣医師も大学での研修医や他院での勤務経験を積み、現在は当院で診療にあたっています。定期的に獣医師同士の共有会を行い、全員が重篤な子や入院中の子の情報を共有できるようにしています。他にも、飼い主さんが納得して治療を進められるような方法を、それぞれのドクターの視点から考えられ、実際の治療に生かせることはメリットの一つであると考えています。
来院する動物は犬や猫が中心ですか?
犬が50%猫が40%、あとの10%はエキゾチックですね。私は、日本獣医循環器学会に属しており、心臓病については詳しく診ることができます。当院にいらっしゃるのは、かなり重症化して、他では「手の施しようがない」と言われた動物が多いですね。患者さんは、クチコミや紹介でいらっしゃいます。高齢化で病気が進行している場合もありますし、若い場合は、先天性の病気の場合が多いですね。
高度な診療が評判ということですが、設備も整っているのですね?
CTとMRI以外の設備は整っているので、データに基づいた客観的な情報を提供できます。手術も行っていますよ。また、ペインコントロールもやっています。これは、「痛み」によるストレスを軽減させるものです。また、その子にとって最良の医療を提供するために、サプリメントや統合的な治療を行います。他にも、内視鏡の設備も整っていて、犬や猫が何かを飲み込んでしまった場合などは、この内視鏡を使って取り出します。犬の場合、「こんな大きなものが」と思うようなものがお腹の中に入ってしまっていることがあり驚きますね。
獣医師になろうと決意した少年時代
小さい頃は、どんなお子さんでしたか?
私は、茨城県の出身で、子どもの頃は辺りが暗くなるまで、野山で遊んでいましたね。田んぼの中にいるかえるをつかまえようとしたり、かえるの卵を見つけたり、いろいろな生き物と触れ合う毎日でした。父も動物好きで、家ではいつも動物を飼っていました。私の小さい頃は亀などでしたが、中学に入った頃犬を飼うようになって、それから大型犬も飼うようになりました。生き物が好きだったので、将来の仕事を考えたとき、動物にかかわれる仕事といったら獣医師しか思い浮かびませんでした。それから、麻布大学に行って、大学院では研究職でしたが、大学院を修了してから臨床を始めてもう15年になります。今も日々勉強ですね。
ご趣味を教えてください。
学生時代はテニスをやっていました。今は走っていますね。実は私は3年前まで体重が100Kg以上あったんですよ。あるとき、病院で医師に「痩せた方がいいけど。ま、無理だよね」と言われまして。それで火がついたのですね。やはり運動で痩せると、運動を続けていれば、痩せた状態を維持できるものですね。
動物の肥満を心配される飼い主さんも多いようですが?
そうですね。動物の場合、避妊・除去手術をすると発情しなくなるので、代謝が10~20%落ちますから、手術の前より太ってしまう子が多いです。とは言ってもその子によって、同じ量食べて太る子もいれば、太らない子もいるので、当院では個別にご相談する形になります。また、当院では看護師もフードの勉強をしていますので、フードについてのご相談に乗ることもできます。
犬や猫の避妊・除去手術は、かわいそうという飼い主さんもいます。メリットを教えてください。
早期の避妊・去勢手術のメリットは、まず、メスだと初回発情の前に避妊手術をすると、乳腺腫瘍になる可能性が低くなるということですね。猫の胸のしこりの90%はがんです。猫と人間の乳腺の悪性腫瘍の割合は同じくらいと言われています。犬の場合は乳がんの割合が半分くらいで、手術すればさらに半分になります。防げる病気としては、子宮蓄膿症、乳腺腫瘍などがあります。また、オスの場合は、前立腺肥大症や会陰ヘルニア、精巣腫瘍など、性ホルモンが影響する病気が防げますね。かわいそうに思うか、病気になってから手術するのと、病気になる前に手術するのとどっちがいいかという問題ですね。デメリットとしては、全身麻酔をかけるので、100%安全かと言われると、そうとは言い切れないという点ですね。時期としては、生後6ヵ月以降、初回発情が来る前がいいですね。
客観的な情報で、飼い主の不安を取り除く
こちらの基本理念を教えてください。
当院では、基本理念に、「ハッピートライアングル」を掲げています。トライアングルを構成する動物、家族、そして獣医師、アニマルナースの三者全員が満足できるような医療を実現するのが目標です。正しい診断・適切な治療、飼い主さんにしっかりとインフォームドコンセントを行うこと、クオリティーオブライフを最優先することに重きを置いています。具体的には、動物にとって、不快でない診療ですね。押さえつけず、少し自由に動かして、診療を進めます。また、できるだけ室内を清潔に保ちます。手術にも保温マットを使用していますが、これは手術中に体温が下がりすぎるのを防ぐ役割に合わせ、柔かいマットの上の方が快適に手術を受けられるだろう、という思いから導入されています。また、飼い主さんとのコミュニケーションも大事にしています。飼い主さんは、「こんなこと聞いてもいいのかな」などと思わず、どんどん質問していただきたいですね。
今後の展望をお聞かせください。
最近は、ネットが普及して、いろいろな病気がわかっているので、こちらもますます技術を高める努力をしなければならないと思っています。「この病気でこの検査、なんでしないのでしょうか?」など飼い主さんから聞かれます。飼い主さんも情報が多くて、もやもやしていることが多いのではないかと思います。でも、遠慮があるようで。何でも聞いてもらえれば、何でもお答えしますので、もやもやしているなら聞いてくださいね。
最後にメッセージをお願いします。
当院は、それぞれ得意分野をもつ獣医師が高度な治療を行っています。ペットのことで、気になることがあったら、ご相談ください。どんな病気でもできることはあるので、あきらめないでくださいね。例えば、手術ができなくても、残りの時間を痛みを少くなく、苦しくなく過ごせる方法を考えます。また、飼い主さんには少しでも不安をなくしていただくために、十分なインフォームドコンセントを行います。飼い主さんが不安になってしまうとペットも不安になってしまいますからね。わからないことはどんどん質問して、不安をなくしていただきたいです。もちろん、治療ができる病気とできない病気がありますが、それでも「ここに来てよかった」と思っていただけたらと、スタッフ一同、日々精進しています。