各線が集う多摩センター駅の南側に位置する「こうご動物病院」の院長を務めるのは、向後亜希先生。2009年に独立後、2015年に現在の場所へ移転した。低層マンションの1階にあり、犬と猫が向かい合った緑の看板が目印になっている。同院を訪れる飼い主の多くは、西洋医学を主とする他院の治療内容に満足が得られず、最後の希望を向後先生に託す。事実、従来の薬物や外科手術では治らなかったペットが、東洋医学を取り入れた治療を受けて歩けるようになることも少なくないそうだ。また、猫とそれ以外の治療導線を完全に分けているのも、同院の大きな特徴。動物に対する目配りと気配りを怠らないという向後先生に、ペット診療の新たな可能性を取材した。
(取材日2015年6月12日)
―まずは、獣医師をめざしたきっかけから教えてください。
もともとは人の心の動きに興味があり、心理学科へ進学していたのです。しかし、勉強を進めていくうちに、「人生経験の浅い20代の若者が、はたして年配者の悩みを受け止められるのかしら」と、そんなことが気になりだしてきました。そんな時に知り合いから猫を預かったのです。ペットを飼ったことがなかったので、最初は「かわいい」から入っていったのですが、やはり情が移りますよね。そこで、その猫を最終的には譲っていただきました。心理学科を卒業後、編入できる獣医学科を探して、再入学しました。
―その後、現在までの経緯を、簡単にお願いします。
いくつか動物病院を勤務した後、「わんにゃんワールド多摩」というテーマパーク内にある医療機関の院長を拝命しました。ところが、残念なことに、そのテーマパークが閉園してしまったのです。院長として責任を持った治療を行っていましたし、そのままにしておくわけにはいかないじゃないですか。そこで急きょ、最寄りの土地で開院できる場所を探すことに。その当時、こことは別の場所で独立したのですが、2015年にこちらへ移ってきました。というのも、いずれ「わんにゃんワールド多摩」にあったようなお散歩途中によってくれるようにしたかったんです。そのために、大通りから離れていて、敷地が広げやすいこの地を選びました。
―心理学科で学んだことは、治療方針に生かされていますか?
ペットといえども、ストレスが原因で体調を崩すことがあります。そうした意味では、学んだことが役に立っているのかな。でもそれよりも、入口が西洋医学ではなかったので、別の視点を保ち続けられたことが大きいと思っています。また、ワンちゃんと猫ちゃんの治療導線を分けているのですが、これも、猫を怖がらせないための工夫。おかげさまで、欧米の認証制度ですが、「猫に優しい病院(キャット・フレンドリー・クリニック)」のゴールド認定を受けることができました。
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