のどかで趣ある町並みが続く練馬区石神井。バス通りから一歩入った閑静な住宅街の一角に、黄色いメルヘンチックな建物が見える。象やキリンたちをモチーフにした手すりの階段を上った2階にあるのが、「東京ラブリー動物病院」だ。黒田佳之院長は34年の経験を持つベテラン獣医師。大学時代に知り合った妻の黒田千草副院長とともに、地域のホームドクターとして献身的に尽くし、飼い主とは長年にわたって強い絆で結ばれている。人一倍責任感が強く、動物たちの健康のためには決して妥協を許さないという黒田院長。真摯なまでに動物たちを愛する姿の背景には、どんな人生の歴史があるのか、その素顔を伺ってみた。
(取材日2013年2月22日)
―とても素敵なアプローチフェンスですね。
動物たちをかたどった階段の手すりですか? これは当院をオープンするとき、私がとてもこだわった物のひとつです。外観やインテリアをどうしようかと考えていたとき、ふと雑誌で目にした鍛鉄工芸家の西田光男さんの作品を見て、「これしかない!」と思えるくらいにとことん惚れ込んでしまいました。「ぜひ西田さんに当院の装飾をお任せしたい」とご本人に連絡を取って頼み込み、作ってもらったのがこの手すりです。動物をイメージした看板や、手作りの受付案内板も西田さんにお願いしました。病気を治しに行くだけの暗いイメージの医院ではなく、飼い主様が幸せな温かい気持ちになれるような動物病院にしたかったのです。
―こちらの医院を開院する前も、お近くで開業されていたようですが?
ええ、こちらには2003年に自宅兼病院の4階建てビルを建てて移転しました。最初に開業したのは1979年で、医院があったのはここからすぐ近くの場所です。当時から“明るいオープンな雰囲気の医院にしたい”という思いがあったので、正面は透明ガラス張りにして院内がよく見渡せるようにしました。ペットの美容室やペットホテルも併設したのですが、そんな動物病院は当時はほとんどなかったんですよね。なかなか飼い主様に認知していただけませんでした。「カットをお願いします」といらした方がいると思うと、なんと動物を連れていない。人間の美容院と間違われてしまったんです(笑)。昔の動物病院といえば、ホテルや美容室を併設している所などほとんどありませんでしたし、中は壁やスリガラスでまったく見えないのが当たり前でしたからね。
―“ラブリー”というお名前もめずらしかったのでしょうか?
そうなんです。当時の病院名は、医師の名前か地名を付けている所がほとんどでした。でも、それではどうしても堅いイメージになるので、医院名にはぜひカタカナを入れたいと思っていたんです。何かしゃれた楽しい名称はないかと探して、結局“ラブリー”に落ち着きました。
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