安福孝之 院長の独自取材記事
フィル動物病院
(横浜市青葉区/青葉台駅)
最終更新日: 2023/01/22
「情熱」というとあまりにも簡素な表現だが、安福医師のお話には動物に対する大きな愛情と情熱を感じずにはいられなかった。こちらの質問に対して、一つ一つとても丁寧にわかりやすく答えてくれた。理想と現実をシッカリ見据えて、次に何をするべきか?どう解決していくべきか?自分に出来る最大のことはなにか?「生き物」をとりまく全ての環境を含めて、対峙するひたむきな思いが、その澄んだ瞳にあふれていた。(取材日2007年1月11日)
「生き物」がとにかく好き
獣医師を目指す上で影響を与えたことは?
子どもの頃から「生き物」との関わりが強かったんですね。ただ好き、というのも、もちろんあるんですが観たりかわいがったりするだけじゃなくて、もっと深い部分で生き物と接していたようなところがあると思います。 小鳥や他の小動物、自分で釣って来た魚とか、とにかく生き物を沢山飼っていまして。もちろん子ども時代は失敗もあったりしたんですが、その都度「何故ダメだったんだろう?」ということを常に考えて次へとつなげていましたね。 雑誌や本も「アニマル」とか「ムツゴロウ」さんのシリーズは殆ど読みましたよ。賛否両論あるみたいですが、やっぱり実体験を通しての動物の素晴らしさ、そして難しさに関してはとても惹かれました。この影響が大きかったと思いますね。
獣医師になった理由は?
父は生物学の教員だったんです。釣りが好きでよく一緒に連れて行ってくれました。そんな時に色んなことを聞いてくれるんです。「フナとはどんな生き物だと思う?」とか、そういう疑問を子どもの自分に投げかけてくれたんですね。僕が興味を持っているのを知っていてくれたから、というのもあるかもしれません。でもこのおかげで「自分で考える事」を身につけたと思います。わからないことがあると父は図書館についてきてくれて、一緒に調べてくれるんですよ。今のようにインターネットで調べられる時代じゃないですからね。図鑑などで自分が知りたいことや疑問をどうやって調べたらいいのか……いわゆる学び方を導いてくれました。こうやってどんどん生き物に興味をもっていく僕に対して「獣医師という職業があるんだよ」と言ってくれたのも両親です。それで自分で「獣医師とはどんな職業か」を調べ、とても興味深い仕事だなと思ったのもこの道に進んだ理由の一つですね。 でも一番大きなキッカケといえば…、小学校低学年の頃のことなんですが。ウチに野良猫が遊びにくるようになりまして。最初は元気でよく遊び回っていたんですが、その内カゼをひいてしまったんですね。僕なりに色々尽くしてみたのですがよくならなくて、突然姿が見えなくなってしまったんです。母親に話すと「人間の見えないところで死ぬものなんだよ」って。その時に、悲しいのと同時に「もっと自分にできることがあったのでは?」とすごく思ったんです。この一件が、獣医師を志した直接のキッカケになっていると思いますね。
獣医師として
どんな風にお仕事をとらえていらっしゃいますか?
よく獣医師と小児科医は似ているとおっしゃる方もいらっしゃるんですが、それは何故だと思います? それは「本人が(病状や症状について)喋ってくれない(=話す事が出来ない)」からです。これが一番難しい点と思われるんですが、逆にここがわかってくると「よりよく役に立てる」一番の喜びでもあるんです。動物だってその訴え方をみれば何をどう伝えたいのか、どういう状況なのかをちゃんと把握することが出来るんです。 本人が話せないとなると第三者、動物の場合は飼い主さんになりますが、その人の捉え方の違いで随分違った解釈になってしまいがちなんですね。だからとても慎重になります。飼い主さんから色んな状況を細かに伺い、具合の悪い要点や原因を慎重に診て解きほぐして行きます。カウンセリングとも言えるかもしれない部分もありますよ。飼い主さんの意識や環境についても色んなアドバイスをさせていただくこともありますからね。
「獣医師」としての理想はなんでしょう?
動物病院でも、最近では細分化されて来てエキスパートも出来てきていますが、人間の医療と比べたらまだまだです。エキスパートにはエキスパートなりの突出した部分も、もちろんいい意味であるのですが、僕自身はこの種のエキスパートではなくいわゆる「ホームドクター」になりたいと思っています。 先ほどもちょっと申し上げましたが、動物に関しては飼い主さんの意識というのはものすごく大きいんですよ。例えば同じワンちゃんにしても種類で全然特徴や性格が違います。もちろん、人間とは全く違うんです。だから謝った擬人化をすることで正しい理解を妨げるケースがいくつもあって、それが動物のストレスになったり、ストレスが原因で様々な弊害を起こしたり、という例が非常に多いんですね。 獣医学の専門家でも未解明な部分が多い分野ですから、最初から誰もがそれを解るということはあり得ないわけで。だからこそ僕らをうまく活用して頂きたいって思います。 ペットショップに行く前に、ご家庭の状況や生活環境などを教えてくだされば、そして何を求めるか、というのを詳しくお聞きすることができれば、一番合った種類をアドバイスすることもできます。ペットショップでご相談なさるのと同じように、僕ら獣医師にも相談してください。ペットと良い出会いをすればお互い(飼い主さんもペットも)がハッピーでトラブルが少ないんですよ。 動物(ペット)による恩恵は大きいですからね。人間にはマネのできない魅力がありますし、心をうるおわせてくれる存在です。だからこそ、欲求やブームに左右されるのではなく、まずはどう迎え入れるかというところからキチンと考えてみてあげて欲しいと思います。