- 動物病院ドクターズ・ファイル
- 神奈川県
- 横浜市緑区
- 鴨居駅
- おくだ動物病院
- 越久田 活子 副院長
越久田 活子 副院長の独自取材記事
おくだ動物病院
(横浜市緑区/鴨居駅)
最終更新日: 2023/01/22
開業からおよそ40年と長い歴史を誇り、多くの飼い主から信頼を集めているのが「おくだ動物病院」だ。「自然界においては弱みを見せれば捕食されてしまいますから、病気で弱っていても、動物たちはそれを隠そうとします。だからまず、動物の健康に気を配ることが必要なんです」と語るのは、JAHA認定家庭犬しつけインストラクター、Tタッチプラクティショナーの資格を持つ、越久田活子先生だ。今回は病院の歴史から動物たちの予防医学に対する新たな取り組みまで、まさに動物たちのために一生を捧げているともいえる越久田副院長にじっくりと話を聞いた。(取材日2015年12月28日)
開業当初から飼い主のモラル向上にも尽力
歴史ある動物病院だとお伺いしました。
2016年で開業から40年になります。おそらくこの地域では一番古い動物病院かもしれません。我が家は夫婦で獣医師です。開業当時、夫は勤務医を続け、この病院は私一人で切り盛りしていました。開業当時、このあたりは初めて自分の一軒家を持つという人たちが、家を建てて暮らし始めるという典型的な新興住宅地でした。当時はペットというよりも番犬として犬を飼う人も多かったですね。そのためか予防接種に連れて来られた犬が、名前も犬種も前年と同じだけれど明らかに別の犬になっていて、事情を尋ねると「前の犬は番犬として飼い始めたのに全然鳴かないから保健所に置いてきた」といったこともありました。フィラリア症を媒介する蚊も多い地域で、症状がひどくなり、手のほどこしようがなくなってから連れてくるような飼い主さんもまだまだ多いといった時代でした。
そうした飼い主さんと当時はどのように接していたのでしょうか。
もう、飼い主さんたちのモラルを向上させるために、それこそ怒ってどなってということもありましたよ(笑)。現在はしつけを専門とする施設も増えましたが、当時はそうした施設もなかったので、犬のしつけだけではなく、犬とはどんな動物なのか、犬と楽しく一緒に暮らすためにはどんなことが必要なのかといった、犬を飼う上で必要な心構えをレクチャーするための「しつけ方教室」に取り組み、これは現在も継続して行っています。
診療はどのような動物を対象にしているのでしょうか。
私が在籍していた当時、獣医大学はペットの診療というよりも家畜治療が授業の中心で猫は対象外という時代でしたし、治療に関する参考資料も非常に限られたものしかありませんでした。ですから他に診てくれる病院がない分、開業当初は魚類から爬虫類までどんな動物でも診療していました。最近は犬、猫、うさぎ、小鳥、ハムスターなどの診療が中心です。ただし、小鳥やハムスターなどの小動物は基本的に予約診療とさせていただいています。診療内容は健康診断から予防接種、不妊処置、ケガや疾患に対する一般的な手術などです。高度医療が必要な動物には大学病院や二次診療病院など、専門性の高い治療ができる病院をすぐに紹介できる体制を整えております。
飼い主が元気なら動物も元気になれるがモットー
診療する上で工夫している点はありますか?
動物たちストレスを与えないということを一番大切に考えています。そして患者であるそれぞれの動物にいっぱい声をかけるようにしています。また、例えばその子をいつも診療する部屋で、爪切りのようなその子にとって嫌なことをはせず、違う診療室で爪切りを行うようにします。なので、いつもの診療室でリラックスして診療ができるのです。また、犬、猫、小動物、症例などによって待合室を分けることもしています。
診療する上で心がけている点をお聞かせいただけますか。
モットーは「飼い主が元気なら動物も元気になれる。飼い主が幸せなら動物も幸せになれる。逆もまた真なり」です。飼い主さんの心のケアや病気で苦しむペットとの向き合い方の指導を大切にしています。飼い主さんは心配のあまりマイナス面に目が向きがちです。そんなときに私は以前と比べて、その子ができたことを言ってもらいます。できていることに気づくと、顔がパッと輝き元気になるんです。すると不思議なことに、動物たちの症状も快方に向かっていくことが多いです。また、病気ではなくその子を診ることも大切にしております。以前、保護犬として預かりそのままわが家のペットになったマロという犬がおりました。数値だけ診れば腎不全で余命もわずかという状態でしたが、そこから2年ほど、最期まで比較的元気に過ごしてくれました。病気を治療することはもちろん大切ですが、その子が最期まで楽しく生活できるための治療を大切にしております。
予防にも力を注いでいらっしゃるそうですね。
当院では従来から現代医学的アプローチと並行して、漢方や鍼灸、マッサージ療法などのその子全体を診るホリスティック治療も積極的に導入しています。それは、私はその子が自ら治そうとする力を重視しているからです。ですから、どんな良い治療法や薬があっても、まずは病気にしないことがなにより大切なことなんです。そのため別の動物病院で治療を受けながら、それと並行して当院でそうしたホリスティック的治療を受けるために遠く神戸や仙台から通院されている飼い主さんもいらっしゃいます。免疫力を高めて病気にかかりにくくすること、そして先ほど病気のコントロールというお話をしましたが、たとえ病気にかかってしまった時でもできるだけ快適に生活を送らせてやるという点では、現代医学と並行してホリスティック的アプローチをすることはとても有益であると私は考えています。
ホリスティック治療の一部として別施設も立ち上げられたそうですね。
病院とは別の施設として、調圧健康ルーム「進盟ルーム・横浜」を開設しました。これは室内の気圧を変化させ、体内に酸素をたっぷりと取り組んで細胞を活性化させて免疫力を高めることにより気の予防や治療に役立てることを目的としたもので、ペットと飼い主さんが一緒に利用できるスペースも設けています。人間が入るスペースと仕切りを設けた部分に動物たちはケージの中に入り、飼い主さんはその前に座っていただきます。最初は動物が騒ぎ出すのではないかと心配される方もいらっしゃいますが、とてもリラックスしており、実際には寝てしまう動物が多いですね。併設の施設ですので、初めてご利用いただく場合には、動物については当院で事前に一般健康診断を行っていただきます。
幼い頃の動物の死をきっかけに獣医師になることを決意
小さい頃から獣医師を志望されていたそうですね。
自分では記憶にないのですが、父の日記には私が2歳の時に「将来は獣医師になる」と言ったと書かれているそうです。当時は名古屋に住んでいたのですが、飼い犬の“のらくろ”が、今思えばアカラス症という、寄生虫由来の病気で亡くなってしまったんです。その頃は犬や猫を診る動物病院がなかったそうで、幼心に自分が獣医師になって病気で亡くなる動物をなくすのだと考えたのでしょうね。
それから迷いなく獣医師をめざされたのですか?
はい。中学生の頃に、日本の女性獣医師の草分け的存在である増井光子さんのご著書を読んで「どうしたら獣医師になれますか」という相談の手紙を書いて、そこから文通させていただいたくらいです。大学に入っても同期200名余りの中、女性はわずか12人でしたから、卒業後に研修のためにインターンとして採用してくれる場所もなかなか見つかりませんでしたが、世田谷の宮坂動物病院の院長先生が採用してくださり、そこで獣医師としての臨床経験を重ねました。
獣医師として、飼い主の方にアドバイスをお願いします。
動物はDNAの中に昔ながらの種固有の習性が刻み込まれています。動物を飼うときには、その動物の本来の習性をよく知っておいていただきたいですね。また、日頃から動物の様子をよく観察してください。動物たちは言葉で苦痛が伝えられないだけではなく、病気で体が弱ったらそれを隠そうとする習性があります。だから日頃元気な時の姿をよく観察し、少しでも違うなと感じる点があれば、すぐに診療を受けさせてほしいんです。そして、最期の時が近くなったら、きちんとお世話をしてあげてください。その子は長い間、数え切れない幸せを飼い主に与えてくれています。ですから一緒に暮らしたうちの少しの期間を感謝を込めてお世話していただきたいと思います。私は現代西洋医学だけではなく東洋医学の知恵も活用しながら、動物たちが最期の時を迎える時まで、快適に楽しく過ごすためのお手伝いをこれからも続けていきたいと思っています。