上原大介 院長の独自取材記事
上原どうぶつ病院
(川崎市宮前区/宮前平駅)
最終更新日: 2023/01/22
外観の真っ赤のワンちゃんのイラストが目印の上原どうぶつ病院。赤や黄色などビビットな原色を選んだ理由は、「病院=病気になってから来るところ」という既成概念を打ち破る止めに、あえて元気あふれるポップなデザインにこだわったのだとか。街の獣医さんでありたいと願う上原先生は、地域とのコミュニケーションを大切に考え、商店街の行事やお祭りにも積極的に参加しているという。院長の上原先生にお話をお伺いした。(取材日2007年3月8日)
ムツゴロウさんに憧れて、獣医師の仕事に興味を持った
どのような少年時代でしたか?
生まれたのは東京都大田区の蒲田ですが、幼い頃に、この近くの神奈川県川崎市の小田急線の百合ヶ丘駅の近くに引越しました。まだ新百合ヶ丘駅がない頃で、周囲には山と川があり、自然の中を毎日、遊びまわり、自然と戯れていましたね。
獣医師を志したきっかけを教えてください。
小さい頃から、自宅で犬を飼っていたことがきっかけのひとつだとは思いますが、獣医師になりたいとはっきりと決意したのは、中学校に入ってからのことです。ムツゴロウさん(作家の畑正憲さん)の本を読んで、動物と共に暮らして、人間と動物の種別を超えて一心同体になりたいと強く思うようになりました。ムツゴロウさんの著作には動物と暮らすことの素晴らしさだけでなく、動物と接することの難しさや、ただ可愛がるばかりではなく、科学的な裏付けを持って接することの大切さなどが書かれていたことが、獣医師という仕事を意識したきっかけだと思います。大好きな動物のために役に立ちたいという気持ちから獣医師を目指すことになりました。
開業にあたって、この地を選ばれた理由をお聞かせください。
3年前の2004年に開業したのですが、自宅や実家から近く、このあたりに非常に馴染みがあったことから、この場所でも開業を決めました。近辺にたくさんの動物病院がある中で、上原どうぶつ病院の存在を知っていただくのは、大変に難しいことなのですが、開業3年目にして、ようやく地域の皆さんに少しづつ知っていただけるようになりましたね。
もし休みが取れるとしたら、山歩きをしたい
休みの日はどのように過ごされていますか?
きちんとしたお休みをいただけるのは、年に2〜3回ですね。ですから、休みの日だからやっているというようなことはありませんね。休診日でも、入院している動物のケアがありますし、患者さんがいらっしゃらない休診日にしかできないこともたくさんありますから、結局は院内にいることが多くなってしまいますね。休みがなくて、3歳の娘には気の毒なので、時間があるときは一緒に遊ぶようにしていますね。手先を動かすことが好きですから、娘と一緒に工作のようなことをして過ごす時間がとても楽しいですね。先日は娘のためにダンボールで子どもが入れるサイズの家を作りましたよ。
もし、まとまった休みが取れるとしたら、どのように過ごされますか?
趣味とまでは言えませんが、登山が好きなので、南アルプスの山に行ったりしたいですね。登山を始めたのは30歳のときに、友人に誘われてしぶしぶ着いて行ったことがきっかけです。そのときは何も知りませんから、軽装で手提げかばんという非常識な格好で登山に挑みました。仕方なく登ったはずなのに、山頂に着いてみると、何とも言いがたい清清しい気持ちになったことを今でも覚えています。それから、少しずつ登山用のアイテムを揃えたのですが、今度は登山をする時間がなくなってしまったのが残念ですね。登山までいかなくとも、せめて山歩きくらいは、いつかまた再開したいと考えています。
地域に溶け込んだ街の獣医師を目指して
診療の際に心がけていることを教えてください。
一番に心がけているのは、無理をしないということです。まず、患者である動物が無理をせずに診療が受けられるように、できるだけ痛くないように、怖くないように診療を行っています。注射針の選び方ひとつで、痛みも変わってきますから、私の手間は増えたとしても、痛みの少ない方法を選択するようにしています。もうひとつは、獣医師である私自身が無理をしないことです。設備や器材が限られていますから、私の行える診療にも残念ながら限界があります。そんなときに無理をして診療を続けるのではなく、良い診療を受けていただくために、設備の整った病院や、信頼できる獣医師の先生を紹介するなどしています。獣医師としては、飼い主さんに率直に話していただけると、対応がしやすいですから、何でも話しやすい雰囲気を作るように心がけています。心配なことや悩みをぬぐって差し上げられるような診療をしたいですね。
力を入れている疾病分野はありますか?
皮膚科に興味を持って、力を入れています。皮膚のトラブルで来院される場合が多いこともありますし、皮膚の疾病は完治までに時間のかかるものが多く、飼い主さんにとっても根気のいる治療になりますから、できるだけ飼い主さんの気持ちに応えたいと思い、力を入れはじめました。皮膚科の疾病の中でもアレルギーが原因となっているものが多く、人間のアレルギーと同じように、投薬だけではなかなか治療効果が出ないこともあります。食生活やライフスタイルの見直しなども大切になってきますから、治療のためには飼い主さんとのコミュニケーションは欠かせませんね。
飼い主と動物との関係に変化を感じることはありますか?
動物たちと飼い主さんの関係が、より密になってきて、動物といえども家族の一員であるという意識が強くなってきたように感じますね。密になったことで、これまで気がつくのが難しかった病気などの早期発見につながることありますが、密になり過ぎて問題を起こすケースも出てきましたね。可愛いからとやってしまう行動が、裏目に出てしまうこともあります。病気のことだけでなく、そのようなことでも専門家である獣医師にして相談していただければ、動物との関係がより良いものになるのではないかと考えています。
今後の展望をお聞かせください。
専門分野に特化するのではなく、何かあったときに一番最初にかかる街の獣医として、広い知識を持って、重大な症状を見逃さないように診療にあたっていきたいと思っています。そしてこの地域に溶け込んだ、どんなことでも気軽に相談できる街の獣医師を目指して行きたいと思っています。