下川信博 院長の独自取材記事
生田ペットクリニック
(川崎市多摩区/生田駅)
最終更新日: 2021/10/12
小田急線生田駅を出て、坂を上りながら10分の道のりを歩く。決して利便性の良い場所ではないが、クリニックの評判を聞きつけて遠方からも患者さんが絶えないという。眼科と皮膚科に力を注いでいるという院長の下川先生のもとへは、何軒もの病院を渡り歩き、ようやく先生のクリニックへ辿りつく患者さんも多いという。病気について質問をすると、説明のツールを見せながら、わかりやすく丁寧に答える姿が印象的だった。(取材日2007年2月19日)
物心ついたときから、獣医師になると決めていた
獣医師を志したきっかけをお聞かせください。
物心ついたときには獣医師になると決めていたので、きっかけを聞かれても困ってしまいますね。獣医師以外の職業に憧れたこともないですから。私は小さい頃から、動物や昆虫が大好きでした。男の子ですから、特に昆虫やトカゲなんかが大好きでしたね。父が狩猟を趣味にしていましたので、実家には猟犬がいつも数頭いました。その犬たちの診察のために獣医師が定期的に往診をしてくれていました。幼い頃から獣医師と接する機会が多かったのが、この道に進んだきっかけでしょうかね。小学校低学年の頃だったでしょうか、死期が迫った一頭のポインターが、もう身体を動かすことができないのに、じーっと私のことを目を追うんです。きっと何かを訴えたったのかもしれません、しかし何もしてあげることができませんでした。その光景が今でも強く心に焼き付いていますね。
開業されたきっかけをお聞かせください。
獣医師の資格を取得して、しばらくは沖縄県庁の職員として基礎研究を行っていました。やはり臨床に魅力を感じて開業することを決意しました。当初は実家のある福岡で勤務していましたが、当時は今と違って、東京と地方では情報に差があり、地方にいてはどうしても東京に遅れをとってしまうんです。そんなことから、東京に行こうと決意をして約10年前にこの地に開業しました。本当は東京で開業のつもりが予算の都合で、気がついたら川崎市での開業になっていました。
休みの日はどのように過ごされていますか?
休みの日は寝て過ごしていますよ。現在は人手不足でしてね、スタッフには休みが少ない中で頑張ってもらっているのに、のんびり休んでいたらスタッフたちに申し訳なくて休みを取れませんね。今年は休まなくていいかなと思っていますから、そんなに苦にはなりませんね。休みが取れていたときは、妻と1泊で温泉旅行に行くのが楽しみでした。2ヶ月に1度は行っていたかな。宿の感想は忘れないように全て記録してあるんですよ。料理は星5つだけど、設備は4つかな…そんな風に記録しているんですよ。温泉ミシュランといったところですね(笑)。
角膜移植手術を自分もやってみたい。そこから今が始まった
眼科の分野に力を注ぐようになったきっかけは何でしょうか?
十数年ほど前でしょうか、犬の角膜移植手術の資料を読み、私も同じように角膜移植手術を行いたいと考えたのが始まりですね。特に眼科は遠くから患者さんが足を運んでくださいますね。当院は眼科の手術数が多いのが特徴ですが、できれば手術をせずに済むように、眼の異常を感じたら、早めの来院をお願いしています。早い段階で治療を開始することが、治療の鍵となりますからね。
眼の異常を見極めるにはどうしたらよいでしょうか?
眼の異常を感じたら、絶対に様子を見ないことです。「明日になっても正常に戻らなかったら病院に行こう」では、手遅れになることもあります。電話でお話を聞いただけでも、獣医師でしたら緊急度の高いものかどうか判断がつきますから、まずは電話で相談をしてください。手術が必要となるような病気の場合は、ひどく痛がったりするので、すぐにわかると思います。そんなときは動物が眼を触ったり、擦り付けないように注意してください。
皮膚疾患に力を注がれたきかっけを教えてください。
動物の眼科分野は、皮膚疾患と関係が深いのです。角膜が損傷を受ける原因として、眼の周りの皮膚が痒くて、掻いているうちに角膜を傷つけてしまうことがあります。ですから、皮膚疾患に力を注ぐのは必然と言えますね。また、皮膚疾患の場合は必ず患部を顕微鏡で見るようにしています。アトピー性皮膚炎と診断された場合でも、顕微鏡レベルで観察してみると、細菌による感染症であると判明することもあります。アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患は対症療法的な治療に終始しがちですが、漢方薬なども取り入れて体質改善や免疫力アップをはかることで、完治を目標とした治療を行っています。
症例のないケースにも立ち向かっていきたい
治療の際に心がけていることをお聞かせください。
飼い主さんの話を十分に聞くことを心がけていますね。初診の場合は過去の病歴を知ることに重点をおいていますから、長いときで診察に1時間以上かかってしまうこともあります。また、治療方法の説明は、口頭だけでなく資料を見ながら説明をするようにしていますし、その資料をお渡しするようにしています。治療への理解の第一歩は病気を正しく知ることですからね。
今後はどのようにしていきたいとお考えでしょうか。
私は患者さんによって育てられたからこそ、今の私があるのだと思っています。これまでのように眼科系疾患と皮膚疾患に力を注ぎ、勉強を怠らずに突き詰めていきたいと思っています。突き詰めていき、ある程度のレベルになると、参考となる症例がないようなケースも多々あり、治療が困難なときもあります。しかし、患者さんは私を頼って来てくださっているのだから、その気持ちに応えられるように、向上心を忘れずにいたいですね。