高橋美幸 院長の独自取材記事
みやまえだいら動物病院
(川崎市宮前区/宮前平駅)
最終更新日: 2023/01/22
田園都市線宮前平駅を出て、尻手黒川道路を歩いて8分ほど。道路から少し入った矢上川沿いに、みやまえだいら動物病院は在る。今年5月に開業したばかりの院内は、ダークブラウンが基調。院長の高橋先生いわく「病院は大きくしたくないんです。」とおっしゃるだけに、シンプルでいて、こじんまりとした印象だ。 通産省(現:経済産業省)の官僚から獣医師へ。安定した職種を捨ててまで、あえて獣医学を学び直された動物への深い思いとは?「大好きな動物を助けたかったんです!」とおっしゃる高橋先生。今まで物静かに語られていた口調が、その瞬間、圧倒されるほどの力強さを帯びていたのが印象に残った。(取材日2007年10月17日)
通産省の官僚から獣医師へ。大好きな動物を助けたいと受験を決意
安定していた通産省(現:経済産業省)にいらしたのに、どうして獣医師に?
やはり私は動物が好きだったんですね。群馬の実家は農家でしたので、牛や豚、犬や猫がいるのが当たり前、動物に囲まれて育ってきました。でも、通産省に就職し東京で暮らし始めると、動物がいなくなり寂しくて。友人に誘われて何となく入省してしまったけど、獣医師になるという決心もつかず…。東京で一人になって改めて、獣医師になろうと決意し、通産省にいながら受験勉強を始めたんですよ。宮崎大学農学部獣医学科で6年学び、宮崎県庁を経て、目黒の動物病院で10年。他の獣医師に比べて、開業するのが遅かったですね。
宮崎県庁ではどんなお仕事をなさっていたんですか?
県内の牛や鶏、馬などの家畜の伝染病の予防に携わっていました。家畜の場合、隔離して病気の蔓延を防ぐという考え方なんですね。鶏舎全部を消毒したり、国道を閉鎖したり。私がいた4年間は平穏でしたが、その後に鳥インフルエンザなどが流行り、大変そうでしたね。
印象に残った患者さんとのエピソードはありますか?
犬や猫を助けることが一番嬉しいんですが、獣医師になったばかりの頃は、伝染病で助からないことも多かったんですよ。心臓病でハァハァ呼吸が苦しそうな老犬が、強心剤を使って何とか帰宅し、ごはんが食べられたと聞いた時、嬉しかったですね。私は町医者ですので、全体的に見られますが、高度な手術が必要な場合は、専門医におまかせします。ただ腫瘍関係については、専門医について10年しっかり学んできたつもりです。
動物を診るだけでなく、飼い主さんの心のケアも大切
治療の際に心がけていることをお聞かせください。
動物が元気になってくれるのはもちろん、それにより飼い主さんも元気になってくれるのも喜びです。正直この子はもうちょっと・・・という場合もあります。でも何もできませんというだけでは、飼い主さんはなぜ今まで何もしてあげなかったんだろうと苦しんでしまいます。だから、この子に対して何かしてあげられることを一緒に探してあげて、飼い主さんがやってできる限りのことをしてあげたんだという気持ちにしてあげることが大切です。獣医師の仕事は、動物を診るだけでなく、そういう飼い主さんの心のケアが重要だと思いますね。 確かに高度医療で治療をするという選択もあります。でも、高度医療を施してくれる病院が近くにあるわけではありません。ある猫が高度治療をするというので、埼玉にある癌の専門病院で手術を受け、放射線治療をしてくれる近畿地方の病院に行きました。恐がりな猫のこと。何回も何回も怖い思いをしたんですよ。確かに病気の発症を遅らせることはできます。でも、動物にとってそれが幸せなことなのかは別問題ですよね。きちんと治るのであれば私たちもそれを薦めますし、選択肢のひとつとして提示はします。でも…私は何とも言えないですね。
犬と猫、どちらがお好きですか?
私は基本的には猫が好きなんです。病院には犬が1匹いますが、自宅に猫が2匹います。学生時代から飼っている18才過ぎた高齢の猫と、もう一匹は病気で片目が失明している2才の猫。後者の猫は、カラスに突かれていて保護され、連れてこられた猫なんですよ。そのまま私が引き取り、現在に至ります。
病院に来て、暴れてしまう犬や猫を落ち着かせるコツはありますか?
それは私たちの経験で何とかするしかないですね。ただ、猫の場合は、洗濯ネットに入れていただいて、足だけ出してもらって治療します。
ペットへの何気ない観察眼が貴重な情報源に。日常生活を良くみることが大切
ペットを飼うときに、選ぶコツはありますか?
例えば犬の場合、犬種によって起こりやすい病気があるんですよ。出会いは大切です。でも、ただかわいいというだけでなく、この犬種はこういう病気が出やすいというのを知っておいていただければと思います。例えば、大型犬は年をとってから心臓病が起こりやすいとか、関節症が出やすいなど、知っていただいたうえで太らせないように飼育することができますから。そういった犬種と病気の関係を注意していただきたいですね。
人間同様、太めなペットが多いような気がしますが?
おっしゃる通り、栄養状態が良いですね。また、最近は飼い主さんが少人数なので、ペットが寄ってきたときに喜ばせたいとおやつをあげてしまう。すると、どうしても太りやすくなってしまうんですね。特にお年寄りが飼っている犬や猫は太りやすいですね。ご家族で飼っていると、お互いが牽制し合うんですけどね。
ペットの健康を保つ秘訣をお教えください。
その子の日常生活を良く見てあげてください。食欲がないとか、何でもない仕草を見ることが大切なんですね。犬や猫って、赤ちゃんと同じで、どこが痛いのか言ってくれるわけではありません。いつからおかしいのか、動きが変など、そういった飼い主さんの何気ない情報が、私たち獣医師にとって貴重な情報源になるんですよ。でも情報がないと、私たちはやみくもにすべて検査しなければなりません。食事の量もわからないし、いつから下痢してるかもわからないというのが一番困りますね。情報がなければ、費用もかかるし、治療に時間を要してしまいますから。
今後の展望をお聞かせください。
飼い主さんとしっかりお話をしながら、信頼を得たうえで治療ができる病院にしていきたいですね。 患者さんが増えてしまうと、そういったことがどうしても難しくなってしまいます。できるだけ、コミュニケーションを大切にしていきたいと考えています。