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川嶋光平 院長の独自取材記事

あざみ野ペットクリニック

(横浜市青葉区/あざみ野駅)

最終更新日: 2023/01/22

川嶋院長が好きだという"むらさき色"をベースにオシャレな雰囲気のイラストがあしらわれた看板が目印の「あざみ野ペットクリニック」。休診日にも関わらず取材に応じてくれた院長のもとを訪れると「スタッフのペットを預かっていて」とワンちゃんを連れ、にこやかに出迎えてくれた。もともとは日本中央競馬会で競走馬の診療に従事していたという川嶋院長は、なぜ動物病院の開業に至ったのだろうか。そして、動物医療にかける想いとは?「アットホームな診療」が信条だという先生の言葉通り、和やかな空気が流れる院内でお話を伺ってきた。(取材日2009年10月29日)

中学生の頃に獣医を志すも、なぜか外国語外部に…!?

先生はおいくつくらいのときに獣医師を志されたんですか?

僕の出身大学は武蔵境にある日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)というところなのですが、その近くに叔母が住んでいまして。遊びに行くたびに大学の横にあるスーパーに買い物に行っていたんです。叔母は僕が動物だったら何でも好きな子どもだということを知っていたので「そんなに好きならここの大学に入れば?」と言ってくれていたので、小さな頃から名前だけはずっと知っていたんですね。それで、中学の時に将来、自分がどんな道に進むべきかを考えたときに生き物系というか生物系に進もうと思いまして。文系の科目が全くダメだったっていうのもあるんですけどね(笑)。でも、高校時代にラグビーに熱中しすぎたがために勉強が疎かになってしまいまして。それで、イギリスに住んでいた経験から英語だけは得意だったことから、なぜか獣医とは関係のない大学の外国語学部に進学。でも、「やっぱり獣医師になりたい!」と思い直し、大学を辞めて日本獣医畜産大学に入りなおしたんです。

おぉ、かなりの紆余曲折ですね。ちなみにラグビーは強い学校だったんですか?

かなり強かったですね。東京都のベスト8常連チームで、朝練に昼練、夕方に部活動としての練習を毎日繰り返して、日曜日に試合という生活を送っていました。毎日クタクタなでの成績は下がる一方…。親父には「学校を辞めろ」と言われたくらいでした。でも親父の言い分はちょっと変わっていて「そんなに夢中になるんだったら、辞めて全国大会に出るような学校に行け」って話だったんですけど(笑)。

(笑)。ポジションはどこだったんですか?

いわゆるガッチリ型の体型ではないのでポジションはバックスだったのですが、覚えているのは試合で負けた悔しい気持ちだったり、顎の骨を折ったことだったり…。こうして思い返すと、いわゆる"いい話"は浮かんでこないのですが、途中で投げ出さなかったというのは何事にも代えがたい貴重な経験だなと思っているんですよ。

先ほど、「動物ならなんでも好きな子どもだった」とおっしゃっていましたが…

そうですね、なんでも飼っちゃってました(笑)。中でも一番長く飼っていたペットは"陸ガメ"ですね。親の仕事の関係で8歳から12歳までイギリスに住んでいたのですが、向こうって庭が広いので陸ガメを放し飼いする人が結構いまして。春先になるとペットショップで売っているんです。それを見て、もともと日本にいたころ川の近くに住んでいて亀も好きだったもので気軽な気持ちで2匹飼い始めたんですけど…まさか25年も飼うことになるとは(笑)。

え、25年も飼っていたんですか!?

そうなんですよ。で、イギリスから帰ってくるときにまさか日本に連れていけるとは思っていなかったウチの親には「誰か友だちにあげなさい」って言われたんですが、どうしても諦めきれずに粘りに粘ったら、「空港まで連れて行っていい。その代わり、そこで没収されたら諦めろ」と条件を出されて。そして、僕も諦め半分で箱に入れて空港に持っていったら…その頃は法律が今と違っていたようで「オッケー、オッケー」と軽〜く出国(笑)。入国のときも問題なく通りましたね。そうこうするうちに卵を産み始めて多い時では50匹くらいまで増え、友だちにあげたりしていたんですよ。

動物が感じる"痛み"を取り除く、さじ加減の難しさ

大学時代の実習で想い出深いことは?

解剖が辛かったですね。医学のためとはわかっているものの、そのために死んでいる動物がいると思うと本当に辛くて。そこを出発点として、保健所で年間に20数万頭も殺されてしまっている現状についてじっくりと考えていました。

そう思っていた先生が日本中央競馬会の獣医師になったキッカケは?

実習で馬や牛を診ていたときは、正直、「意味ないよ」と思っていました。でも、所属していた外科の教室の教授が馬の去勢などを受けていたこともあり、ある日突然、手術をしたポニーの面倒を「お前やれ」って任されたんです。さわったこともなかったんですが一生懸命、面倒をみていくうちに、意外や意外、そのかわいさにハマってしまいまして。そして、府中競馬場でアルバイトをしたときに本物のサラブレットをみて、その格好よさに心を奪われてしまったんです。

そして、卒業後、栗東と美浦のトレーニングセンターで獣医デビューとなるんですね

はい。やはり何千万もする馬を相手にするだけあって学生時代に思い描いていたように院内の設備もすごいし、治療も思いっきりできる環境でした。でも、それを受けられるのは、ごく一部の強くて勝ち進める馬だけだったんですよね。競馬場の外でも、完全なる生き残りレースが繰り広げられていました。しかしそんな中でも、勝てるように、走れるようにと最高のコンディションを作ってあげる仕事に、僕はやりがいを感じたんです。最後に診ていたのは、G1のレースに出たこともある"リンカーン"という馬。見栄えもオーラも凄い子でしたね。

その経験から学んだ動物を診ることの大変さを教えてください

僕が日本中央競馬会で診ていた馬たちは動物ではありますが、アスリート。炎症や腫れというのは、そこの部分を使い過ぎているから気をつけなさいという信号でもあるんです。人間が相手なら完全に痛みを取っても、その状態を説明して「あまり動かさないようにねー」なんて言えますけど、動物の場合は「治った!」って勘違いしちゃうんですよ。そうすると、その部分にさらに負担をかけることになりますよね?しゃべれない動物を相手にどこが痛いのか見つけるのも難しいのですが、痛みを取るさじ加減はさらに難しい。これは馬だけでなく犬や猫にも同じことが言えます。だから、私たちは治療するだけでなく「しばらくはゲージに入れておく」などのその後のケアまできちんと飼い主さんと共有しないといけないんです。

経験や知識をサポートする最新機器を用いて正確に診断!

先ほど「痛みを見つけるのが難しい」とおっしゃっていましたが、こちらのクリニックは診断をするための機器が、かなり充実しているうような気がします。

そうですね。今は「たぶん、ここが悪い」では済まされない時代だと思っているので。もちろん経験や知識というのは一番重要なのですが、それを最大限サポートできるような診断機器を用いて、なるべく正確に診断するというのも重要だと思うんですよ。治療法というのはある程度、決まっています。だけど診断が間違っていたら治療法まで間違いかねない。特に今の時代はMRIやCTIを用いれば頭の中にどんな腫瘍が出来ているのか、それが取れる腫瘍なのか、それとも無理なのかまでわかってしまいますから。私は個人の病院の院長として今までの経験を活かしながらも、来てくれた患者さんをベストな状態で帰してあげるための装置を揃えたいんです。

先生が独立しようと思ったキッカケは?

何年も勤めていくうちに、徐々に管理職的な役割が多くなってきて、大好きな動物と接する機会が少なくなってきてしまったのが…嫌だったんですね。学生時代はもともと犬や猫を中心に診る獣医師になるつもりだったので、そろそろやってみようかな、と。そして、日本中央競馬会を辞めてからはしばらく、東京都内の様々な動物病院に勤務して経験を積み始めたんです。それと同時に週に1回大学にも通い始めて、今も最新の治療を勉強しています。この世界、常に勉強していかないといけないんですよね。満足したらお終い。去年まで治らなかった病気が今年は治せるなんてこともあり得る状況の中で、知りませんでしたじゃ済まされないですから。

先生の医療方針を教えてください

なるべく飼い主さんの「こうしてほしい」という要望に応えた上で、自分が出来る最大限の力を出すことです。治療費の問題などを無視して進めることは医師であれば誰でもできると思うんです。でも、それってよくないことだし、限界がある中で何が出来るかを考えてやるのが僕らの仕事なんじゃないかと。もちろん、レントゲンやデータや画像を見てもらった上で、私の見解を話し納得してもらえるように努力することもありますけどね。ちなみにウチでは血液検査や尿検査、便検査など、動物の健康診断も行っているので予防の観点からも一度受けてみることをオススメします。そこで疾患が見つかったという例もあるんですよ。あとウチで診察を受けてくれた子は、一人ひとり写真入りの診察券を作ってあげることにしています。すごくかわいい!と飼い主さんには好評なんですよ。

最後に今後の展望やプランを教えてください

正確で確実な診察を行いつつも、ウチに来たことで飼い主さんの気分が良くなるようなクリニックにするのが目標です。そしてアットホームな雰囲気の中で、小さな疑問に対する質問や、細かな要望など、とにかく何でも相談してくれるような関係を患者さんと築けたら最高だなぁと思います。

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