渡辺 忠 院長の独自取材記事
サムペットクリニック
(横浜市港北区/綱島駅)
最終更新日: 2023/01/22
日吉駅からバスで7分、南綱島住宅で下車すると目の前は「サムペットクリニック」。西洋医学から東洋医学まで勉強されている院長・渡辺忠先生は、ペットの状況に合わせて幅広い治療を提供できる頼りになる先生だ。夜間ペットの具合が悪くなったらどうしようという飼い主の不安と、ペットのつらさを解消するために、夜間診療の病院を立ち上げた。動物のことを第一に考え、よいと思うことは取り入れ提供してくれるとても熱心な渡辺先生に、どのように動物と付き合ってきたのかお話を伺った。(取材日2010年12月6日)
医療の進歩に貢献してくれる動物に、感謝の気持ちを忘れない
なぜ獣医師を目指されたのですか?
今はこの地域も住宅街になってしまいましたが、昔はこの辺は原っぱがいっぱいあって、小さい頃から昆虫や動物が好きでしたので、亀やザリガニや虫を採って来ては自宅で飼っていました。獣医師になろうと考え始めたのは、高校3年生頃からです。前から医療関係や薬に興味があったことと、動物が好きだったこともあり獣医師を目指すことにしました。
獣医大学ではどんなことに興味をもたれ勉強をしていたのですか?
大学では薬に関する勉強に熱心に取り組みました。動物に対して薬がどのように効き、どのような効果があるのか。それは、高校時代からとても興味を持っていたことだったのです。動物の病気を治すための薬の実験では、どうしても動物を殺さざるを得ません。命を失ってしまった動物達のためにも、この実験の成果を病気で苦しんでいる動物達に生かさないといけないなと強く思いました。日々の治療や薬の進歩に貢献してくれている動物に、感謝の気持ちを絶対忘れないようにしないといけないですよね。
開院するまでの経緯をお聞かせ下さい。
獣医大学を卒業してから3年間食肉関係の会社に勤め、青森県で農場にいる動物の健康管理の仕事をしていました。こちらでは農場での養鶏場の鶏舎内や養豚場内の環境チェックをして、病気の予防に努めていました。その後、小動物の治療に携わりたいと思い、知り合いのクリニックで勤務医として2年勤めさせて頂きました。勤務医として働いていた最初の頃は、飼い主さんとコミュニケーションが取れなかったりして戸惑うことが多く、慣れることに一生懸命でした。その後、ここ綱島に開院して18年になります。基本的には地域の方達に利用して頂いていますが、近頃はパソコンの普及によって、ホームページを見てわざわざ来て下さる方も多くなりました。
ペットによいと思われることは取り入れ提案する
犬や猫に多い病気はなんでしょうか?またその原因はなんでしょうか?
犬は皮膚病が多く、犬猫ともに多いのが腫瘍、がん、また糖尿病等の内分泌系の病気です。日常生活のなかで元気がないとか痩せて来たら要注意で、なんらかの病気を持っているかもしれませんので、変化を見逃さないようにしてください。医院では治療や手術も行っていますが、手に負えない病状の場合は、専門病院を紹介しますのでご安心ください。犬の病気は食生活の変化もありますが、近年ブームに乗ってブリーダーさんが流行りの犬を無理に繁殖させたり、短期間で人が好むような犬を改良することが進められているので、どうしても繁殖に無理があり、病気を持っている犬が増えてしまっています。
こちらのクリニックではペットの歯磨き指導も行っているとか。
スタッフが中心に定期的に飼い主さんに歯磨き指導を行っています。ペットの健康を考えたら歯ブラシはやってあげた方がよいと思います。でも歯ブラシに慣れていないと手間も掛かり、飼い主さんは毎日行うのがつらくなりますよね。そこでちょっとしたテクニックを覚えて頂き、飼い主さんもワンちゃんも楽しく続けてもらえるといいかなと思っています。
「マイクロバブル温浴」を治療に取り入れていらっしゃいますが、どういう効果がありますか?
「マイクロバブル」は、細かい泡が毛の中に入り込み皮膚をきれいにします。マイクロバブルのよい点は、科学的な薬剤や洗剤類を一切使わないので皮膚に刺激がなく、擦らなくても汚れが落ちるのでペットにとってはストレスが少ないようです。アトピー性皮膚や脂漏症で皮膚が脂っぽい犬には効果が高いです。ずいぶんにおいが還元されるので、においが強い犬にも効果があります。また腰痛や関節炎などの筋肉疲労にも効果があるようです。入浴時間は35度〜37度のお湯の中に15分ほど浸かるのですが、温泉効果もあるので犬達は比較的おとなしくて気持ち良さそうですよ。湯船は広いので小型犬から大型犬まで対応できますので、お風呂に入れる感覚で気軽に使って下さい。
ペットの食事についても美味しそうな手作りレシピを考案しアドバイスされていますね。
東洋医学の勉強で食事について考え、ペットにとって栄養のバランスのとれた、見た目もきれいなレシピを考案しました。たとえば、茹でたもつ、ニンジン、ブロッコリーに5分粥のお米を合わせたごはんや、生の肩ブロック肉と中脂に、茹でたアスパラガスとニンジンを混ぜたごはんなど、犬が食べるので味は付けていませんが、人間が食べてももちろん大丈夫ですよ。材料の注意点はネギ類は入れないこと、猫の場合はもともと肉食なのでお肉中心にしてあげて下さい。カロリーは毎日細かく計算せず、1週間のトータルでだせばよいと思いますので、細かいことは気にせず、作ること食べてもらうことを楽しんで作って下さい。市販のフードから手作りフードに変えると始めは下痢をする犬もいますが、腸内環境の変化で起きることなのであまり心配はいりません。少々手間は掛かりますが、興味のある飼い主さんは詳しく指導しますのでご連絡ください。またホームページでも一般的な食事編と腎臓疾患のための食事編に分けて、公開していますので参考にしてください。
夜間の不安を解消するために立ち上げた横浜夜間動物病院
昔と今ではペットの環境や、飼い主さんの考え方はどう変化していますか?
昔は外で飼われている中型の雑種が多くて、犬にお金をかける時代ではありませんでした。治療するという考えがない飼い主さんも多く、予防を考える飼い主さんは少なかったですね。そのため感染症やフィラリアにかかる犬が多かったです。昔はマンションでペットを飼うのは禁止されていたのですが、今はマンションでも飼えるところが増えたので、小型犬が中心になって来ています。マンションはフローリングが多いので、犬が狭いところで走り回り床で滑ってしまい膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)になるケースが増えています。また昔に比べ食生活もずいぶん変わったので、生活習慣病も増えています。今はペットに関する情報も豊富になり、飼い主さんも気にかけるようになったので、昔よりペットの予防に気を使われる方は増えています。
広めていきたい活動はありますか?
昔と大きく違うことの1つにマイクロチップの導入があります。私が所属している港北区獣医師会では、野良猫の里親支援やマイクロチップの普及活動を行っています。マイクロチップはペットのための身分証明書です。首輪につける鑑札とは違い体内に埋め込むので外れる心配がなく、迷子になったときや地震が起きて離れ離れになっても、見つかる確率が高いのです。いざという時にためにマイクロチップを装着してあげてください。
ペットのために夜間救急病院を立ち上げられたそうですが、詳しくお話しいただけますか?
オープンしてからもう10年目ですが、私を含め横浜市内の有志11人の獣医師で立ち上げたのが「横浜夜間動物病院」です。港北インターを降りてすぐの所にあります。ペットも診療時間が終わってから具合が悪くなることもあります。飼い主さんが一晩様子を見守るのは大変ですし、なによりペットがつらいはずです。そんな夜間の不安を解消するために、横浜では初めての夜間救急専門の動物病院を作ったのです。夜間ペットの様子がいつもと違うと思ったら、まず電話をしてペットの症状を伝えて下さい。そして先生のアドバイスに従い行動して下さい。横浜夜間動物病院では治療を受けられた場合、検査データや治療内容はすべて飼い主さんにお渡しして、翌日かかりつけの先生にスムーズにバトンタッチできる体制を取っています。専門医がかかりつけの先生に代わり、しっかり診させて頂きますので、夜間でも安心してご利用ください。
ペットを飼われている飼い主さんにアドバイスをお願いします。
予防医学の観点から、散歩や食事内容や歯ブラシの指導などに力を入れて、飼い主さんに予防の大切さを広めいきたいと思っています。また寝たきりの大型犬の介護の仕方も指導していますし、訪問看護も行っています。老犬の最期に関しては、飼い主さんの心構えが大切なので、専門の獣医師が話をさせて頂きカウンセリングを行っています。ペットは大切な家族の一員です。飼い主さんもペットも最後まで幸せに暮らして欲しいと願っています。