鈴木基宏 院長の独自取材記事
ベル動物病院
(横浜市鶴見区/綱島駅)
最終更新日: 2023/01/22
ここ鶴見に開院して8年目。大きなステンドグラスのなかのカンガルー親子が出迎えてくれる「ベル動物病院」。中学生のときに動物園の飼育体験をしたことにより、獣医の道を選んだ院長・鈴木基宏先生。「ちょっとしたペットの変化も見逃さないで欲しい」と真剣に語る鈴木先生は、自宅でも動物に囲まれていて、ペットとのふれあいを大切にしている先生だ。とても優しい眼差しで動物を診る鈴木先生に、子どもの頃の飼育体験やその後の経緯を伺った。(取材日2010年12月2日)
事件をきっかけに里親の掲示は院内に
カンガルーのロゴマークが印象的ですね。
動物のなかでもカンガルーが大好きで、新婚旅行でオーストラリアに行ったときに、カンガルーと触れ合ったことがとても印象的だったのでカンガルーをマスコットにしました。一般的にカンガルー親子のイメージはお母さんのおなかの袋から子どもが顔をだしているイメージですが、私はお母さんカンガルーのしっぽに子どもカンガルーがしがみ付いている姿をロゴにしました。その方が斬新な気がしたんです。院名にベルと付けたのは、私の苗字が鈴木でやわらかなイメージにしたかったので、鈴を英語にしてベルと付けました。
医院の中と外に掲示板がありますが、この2つの掲示板の役割はなんですか?
告知する内容で、2つを使い分けているのです。以前は里親募集の掲示を外に出して、クリニックの前を通る方々にも見て頂いていたのですが、5〜6年前に横浜で猫の虐待が問題になったことがありました。このような掲示板を見て里親になりすまし、あちらこちらから猫をもらいうけては虐待していた男性が捕まったのです。その事件から里親募集に関しては院内のみの掲示にして、クリニックに通ってくださっている方にもらいうけて頂くようにしました。ペットの診療に訪れた際に院内の掲示を見て、もう1匹飼おうかなと思われる方や、知り合いの方にお声掛け頂いて引き取られるケースがほとんどで、大体一ヵ月以内に里親さんが見つかるケースが多いです。そして医院の外の掲示板には不特定多数の方の目に触れて欲しい、迷いペットの紹介や予防接種などのお知らせだけにしています。
将来を決めた上野動物園での飼育体験
獣医師を目指したきっかけについてお聞かせください。
小学校の高学年のころから獣医師になりたいと思っていました。とくに小さい頃から動物園に行くのが大好きで、動物園獣医師になりたかったのです。東京に住んでいたのでよく上野動物園に行き動物を観察しました。上野動物園には子どもを対象にサマースクールがあり、夏休みに抽選で選ばれた子どもは、動物のお世話を手伝う1日飼育係を体験することができたり、園内の動物病院の見学をすることができました。私も2度抽選に選ばれました。1度目は中学1年のときでトドの担当になり、餌をあげたり檻の中を掃除したりしました。2度目は中学2年のときで、猛獣のトラの世話をしました。さすがにトラの檻の中には入れませんが、餌の用意をしたり、トラが外に出ているあいだに寝所の掃除をしました。この2度の刺激的な体験が獣医師になろうと強く思った理由でした。
その後、動物園獣医師に?
いえ、結局は動物園獣医師にはならなかったのです。というのも、獣医大学に進み動物園の就職事情が分かりました。動物園は全国でも数が少なくて、毎年必ず動物園で採用があるわけではなかったのです。たとえば上野動物園は都立ですから、そこで働こうと思えば都の職員にならないといけないし、職員になったからといって必ず動物園に就職できるわけではでないのです。そうなると希望通りの職業には就けないなと思い仕方なく断念しました。次に興味があるのは何かなと考えたときに、牧場への憧れや穏やかな性格の牛に興味が広がり、牛を診る獣医師になろうと思うようになりました。そして大学4年生の頃には牧場実習や牛の診察の見学に積極的に行きました。
卒業後は、どのようなキャリアを積まれましたか?
卒業後は福島で1年半、牛の体調管理や診療をさせて頂きました。福島での仕事はとても印象に残っています。勤めていた診療所の先生のご実家は酪農をされていて、先生は獣医師として診療をしながら、ご実家の酪農を手伝っていらっしゃいました。牛も何頭か飼っていて、朝は先生が乳搾りをして夕方は私が乳搾りをするというように、酪農の経験もさせて頂きました。体験前は酪農の仕事もいいかなと思っていましたが、実際お手伝いさせて頂き命ある動物をたくさん扱う酪農は大変だなと実感しました。福島でのもう1つの思い出は、先生の配慮で村の青年会に入れてもらったことです。この地域は酪農地帯で同年代の方がたくさんいて青年会の活動が盛んでした。青年会では村おこしにも参加させてもらい、仕事以外でも濃い1年半を過ごすことができました。福島での生活は今でも大切な思い出の1つとして残っています。
開院までの経緯をお聞かせ下さい。
しばらく体調を崩し休んでいたのですが、事務仕事ならできるくらいに回復したので、東京都の家畜の保険(家畜共済)を運営する仕事を7年していました。畜産農家は家畜が病気になったり、死んでしまった場合の保障のため共済に入るのですが、その共済金がおりるかどうか動物を診て判断する仕事をしていました。ほとんど事務仕事でときどき農家に行き家畜を診ていました。この仕事をしているなかで動物を診療している獣医師の先生方と会うと、やっぱり動物と触れ合う仕事っていいなと思い、共済の仕事を退職。川崎の動物病院で4年勤めさせて頂き、40歳でここ鶴見に開院しました。
ペットの観察が病気の予防につながる
お休みはどう過ごされていますか?
とくにこれといって趣味はないのですが、休みの日は子どもと遊ぶのがストレス解消になります。それと我が家には猫4匹と犬3匹がいます。大人の猫は里親さんが見つかりにくいので、うちで飼うことが多く今は4匹になりました。犬は3匹いてこちらはすべて違う犬種です。休みの日は子どもとペットで大騒ぎです。
上手に病院にかかるコツはありますか?
先日も犬の調子が悪くなり、うちのクリニックに連れて来られた方がいらっしゃいました。しかしいらしたときにはもうその犬は手遅れでした。お話を聞いてみると、夏に一週間くらい食欲がない日があったそうです。ほかに気になる症状がなかったので様子を見ていたら、また食事をするようになったので気にしていなかったそうなんです。でもその辺りからペットは体調を崩し始めていたようです。食欲がないときに診させて頂いていたらと思うと残念です。もう1つの例では、血尿をしていた猫でしたが、食欲があるから大丈夫だと飼い主さんが判断され、クリニックには連れて来られませんでした。一週間くらいしてその猫はおしっこがでなくなり、尿石症で入院してしまいました。飼い主さんはペットに食欲があれば大丈夫だと思いがちですが、日頃の様子をよく観察してあげて、少しでもおかしいなと思ったらすぐに病院に連れて来てください。