鈴木伸二郎 院長の独自取材記事
北寺尾ペットクリニック
(横浜市鶴見区/菊名駅)
最終更新日: 2023/01/22
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急東横線とJR横浜線が乗り入れる菊名駅。駅から少し離れて住宅街に入ると畑も点在し、庭付きの一戸建ても多く、この街がペットを飼うには恵まれた環境であることがわかる。菊名駅からバスで2つ目の法隆寺前バス停を降りて徒歩5分ほどの住宅地の中にあり、通りに面していて車で訪れやすい場所にあるのが鈴木伸二郎院長と則子副院長のご夫婦で開業している「北寺尾ペットクリニック」だ。クリニックの扉を開けると、16歳になるという看板犬のプグが優しく迎え入れてくれる。「動物は自分で痛いと言えないので、診療所に来るときには深刻な症状になっていることが多い。だからなにより予防が大切なんです」と語る鈴木院長に、ペットの上手な飼い方を含め、じっくりとお話を伺った。 (取材日2014年10月7日)
診療の基本は飼い主さんとのコミュニケーション
クリニックはいつ頃開業されたのでしょうか?
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1996年に、今のクリニックから10分ほど離れた場所で開業したのですが、そこが手狭になったので2012年、現在の場所に移転しました。通りに面した入口の上に、クリニックの大きな看板を掲げていますが、実はそこに描かれている犬と猫のイラストは、僕自身が開業時に描いたものなんです。院内には愛護団体からもらってきて、今年で16歳になるメス犬のプグ、そして猫2匹も飼育しています。さらにこちらは妻が飼っているのですが、オカメインコにオウムもいます。オウムは妻が結婚前から飼っているものなのでもう35歳くらいになりますから、僕よりもはるかに妻との付き合いが長いですね(笑)。
現在の診療内容を教えていただけますか?
診療対象は犬、猫、うさぎやハムスター、そして小鳥で、爬虫類などは扱っていません。メインはやはり犬と猫ですが、主訴として多いのはやはり皮膚病ですね。あとはやはり予防接種のために来院される方が多いです。当クリニックでも今年から、フィラリアについては投薬タイプだけではなく、一年に一度の接種で済み、安全性が確認された注射タイプの予防薬も導入しています。去勢手術も年に50例ほど手がけています。もし、繁殖させる気持ちがないのであれば、去勢は生後6ヵ月から可能なので、犬猫いずれの場合でも、なるべく早めに手術をすることをお勧めしています。去勢手術をすれば、メスの場合は乳がんのリスクが下がりますし、オスの場合は性格が穏やかになり、前立腺腫瘍の予防にもつながりますから。クリニックの休診日は水曜日で、土日、祝日は通常通り診察しています。時間外の救急対応についてはできる範囲で対応していますが、対応不可能な場合には近隣の救急診療センターをご紹介しています。また、日本動物高度医療センターの連携病院に指定されていますので、高度医療が必要な症例については2次診療専門である同センターにつなぐことができる体制が整っています。
診療の時に心がけていることはありますか?
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とにかく飼い主さんからどんなご飯を食べているのか、室内飼いなのかといった日常の様子について詳しくお聞きすることを心がけています。もちろん、ペットの性格にもよるのですが、可能な限り診察室に飼い主さんも入っていただいて、診療しながらも気になることがあればその場で確認するようにしています。実は飼い主さんは、自分の飼い方が正しいのか否かの判断基準がわからないという場合が意外と多いんですよ。例えば水の与え方一つにしても、最近は動物用の自動給水機を使用されている方が増えているのですが、機械のタイプによっては、構造上、犬はうまく水が飲めない場合があるんですね。そのため飼い主さんはちゃんと水を与えているつもりでも実際にはうまく飲めておらず、脱水症状で来院するといったケースもあります。こうしたことも、飼い主さんのお話によく耳を傾けることで原因が浮かび上がってくるわけです。また、診療は私と副院長である妻が行っていますが、1人で診療しているとどうしても自分の考えにこだわってしまいがちになるので、診療方針について2人でよく意見を出し合うようにしています。
歯石を定期的に除去することが全身の健康管理につながる
特に力を入れている診療はありますか?
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定期健診を含めた予防医療に力を入れています。動物は自分からここが痛いとか、つらいと言葉で伝えることができません。そのため「様子がおかしい」と飼い主さんが気付くのはある程度症状が進行してからで、さらにその段階ですぐに動物病院に連れて来られない場合も多いですから、病院に来た時にはすでに手遅れといったケースも決して少なくありません。だから発症する前の予防医療がとても大切になってきます。そこで当クリニックで特に力を入れているのが歯石除去を中心とした歯のケアです。人間の場合も、歯周病などがあると歯だけではなく全身の健康状態に影響が出ることが知られていますが、実はこれは動物も同じです。心臓病になるリスクが高まったり、虫歯が歯を支える土台になる骨まで浸食してしまうと、骨が溶けだして骨折の原因となる場合もあります。動物も人間同様、1日1回は歯磨きが必要なのですが、やはり自分の歯を磨くようにはきれいに磨けませんし、そもそも動物に歯磨きが必要なのだということをご存じない飼い主さんもまだまだ多いのが現実です。最近は歯磨き用のおもちゃやガム、液体洗浄剤などもありますが、やはりブラシで直接磨くほどには効果が期待できません。そこでお勧めしているのが定期的な歯石除去です。ただし、歯石除去をする際には全身麻酔が必要です。また、すでに虫歯でボロボロになってから歯石除去をしても効果がありません。ですから若く健康で全身麻酔をしても影響が少なく、虫歯や歯周病もない年齢の頃から2年に1度は専門医の手で歯石除去をするようにしていただきたいですね。また、歯石除去以外にも、不定期で動物の歯の診療の専門医を招いて歯磨き教室も開催しています。そのほかに力を入れているのは定期健診です。予防接種などで定期的に来院される方も多いので、そうした機会になるべく健康診断も行っていただけるように話します。こうした健診で疾患が見つかることは意外と多く、特に肝臓病などがよく見つかりますね。
動物の上手な飼い方についてのアドバイスをいただけますか?
猫は原則、室内飼いで外に出さないことが大切です。食事は1日2回が目安で、餌を出しっぱなしにしてダラダラ食べさせないことがしつけの基本です。犬の場合は、まず飼い主が自分より上位なんだと理解させることを徹底してください。そのためには食事を与えるときなどには必ずお座り、待てといった動作をはさんで、飼い主のおかげで餌が食べられるのだということを理解させましょう。診察していると、きちんとしつけをされているかどうかわかりますし、犬の性格などもある程度伝わってきます。あるとき、きつい性格のワンちゃんだったので飼い主さんにしつけの必要性をお話したのですが、「かわいいのでそんなことできない」とおっしゃいます。しかし1年ほど経ち「もう手に負えません」と泣きついて来られた、といったこともありました。特に大型犬の場合には、プロの手にしつけを委ねるというのも1つの選択肢だと思います。
動物病院の場合、飼い主さんの心のケアも問題になりますが。
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たまに「なんでこんなになるまで連れて来なかった」などと、獣医師に叱責された経験があるという方がいらっしゃるのですが、そうすると飼い主さんが気軽に相談に来られなくなってしまいますから、そういうことはしないように心がけています。また、ペットの死は避けることができない問題ですが、最後まで治療を続けるのか、緩和ケアに切り替えるのかといった問題は、飼い主さんの意思を尊重するようにし、余命に限りがある場合には、飼い主さんに心の準備をしていただけるように早めにお伝えするようにしています。ある70代のおばあさんなのですが、5匹の猫を飼っていて、心を込めて世話をしていたのでしょう、そのすべてが20歳前後まで生きたという方がいらっしゃいました。どの猫も最後の時が近づいてくると、少しでも猫たちがラクに過ごせるようにとご自分で車を運転されて一日も欠かすことなく診療に来られていました。その姿が今でも忘れられませんね。
症状が進行する前に気軽に病院を訪ねてほしい
どうして獣医師をめざされたのでしょうか?
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やはり小さい頃から常に犬や猫といったペットが傍らにいましたから、自然と動物好きになっていて、小学校4年生の頃には、作文にも将来の夢は獣医師になることと書いていました。その後別の職業に就く夢も持ちましたが、大学に進学する時には、やはり獣医の道を選択していましたね。
休日はどのように過ごされているのですか?
子どもがいるのですが、なにせ土日も診療しているので、なかなか休みが合わず、夏休みといったまとまった休みの時以外はなかなか一緒にいてやれないので少し申し訳なく思っています。ですから自分が休みのときには、短い時間でもなるべく子どもたちと触れ合うようにしています。また最近は少し時間的にゆとりができたので、高校生以来、久しぶりにギターを習いにいって楽しんでいます。
最後にこれからの抱負をお聞かせください。
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動物病院の場合、どうしても症状がかなり進行してから病院に連れて来る飼い主さんが多いのです。ですから現在も行っている歯磨き教室などをもっと充実させて、病気の時以外にも、気軽に立ち寄ることができ、気になることがあればどんな小さなことでも気軽に相談していただけるような診療所をめざしていきたいと思います。