杉山 博輝 院長の独自取材記事
さいわい動物病院
(川崎市幸区/川崎駅)
最終更新日: 2023/01/22
川崎駅から徒歩15分。より通いやすい病院をめざしすぐ隣の土地にリニューアルオープンした「さいわい動物病院」がある。院長である杉山博輝先生は、優しい語り口が印象的な獣医師だ。「動物たちのホームドクター」であることを信条とし、地域密着型の動物診療を提供している。獣医師をめざしたきっかけは「高校生の頃に親身になって診療してくれたドクターがいたから」と話し、当時の経験から、動物という大切な家族に何か起きた際に、飼い主の不安に寄り添う姿勢をとても大事にしている。柔らかい話し口調で、人の話をしっかりと聞こうとする姿勢からも誠実で丁寧な人柄が伝わってくる。内視鏡を導入したり、エコーも新しいものにするなど、まじめに動物医療に向き合い治療を行う杉山院長に診療方針など話を聞いた。 (取材日2017年3月2日)
一人ひとりに合わせた、オーダーメイドの治療を提供
獣医師を志したきっかけを教えてください。
僕が高校生の頃、実家で犬を飼い始めたんです。しかし、飼い始めてすぐ嘔吐や下痢でぐったりしてしまいまして。動物病院に連れて行ったら、死に至る危険性がとても高い病気になっていたことがわかったんです。その際に診療してくださった先生の早い診断と正確な治療のおかげで子犬の病気は治り、長生きすることができたんです。その時に、自分もできればこの先生のように、動物や飼い主にとって頼れる獣医師になりたいと思いました。小さい頃に犬に追いかけられ、それまで犬を「怖い」と感じていたので、このように心境が変化することには自分で驚きましたね。
当院を開院された経緯は、どのようなものでしたか?
高校時代の経験から、町のホームドクターになりたいという思いが強くあったので、大学在学中から、そのための勉強を行ってきました。大学を卒業して4年後に当院を開院しました。もちろん、高度な医療での治療が必要な症状の場合には連携している大きめの医療機関に相談もしますが、基本的には、町の獣医というのは「何の治療にすぐれているのか」よりは「苦手な診療科目はないのか」が問われる存在で、自分でもそのようにして穴のないように心がけてきたつもりです。どんな病気の際にも、また病気ではないかもしれないが、心配になった時にでも駆けつけていただけるような地域の動物病院でありたいですね。
オーダーメイドの治療を大切にしていると伺いました。
診断により病気の詳細はわかった。教科書通りの対応や薬の処方もすぐ頭に浮かぶ。そんな時でも、薬の服用を嫌がる動物がいたり、ある程度以上に費用のかかる治療には経済的に耐えられないという飼い主さまも中にはいらっしゃったりするわけです。地域の動物病院が飼い主さま、動物も含めたご家庭のお役に立つということは、それらの個別の事情をきちんと受けとめて、ケースに応じてそれぞれに合った選択肢を提示できることだと思っています。さらに、近年の治療方法の躍進には目を見張るものがありますから、数年前と同じ治療をしないほうがいい場合もあります。だからこそ、新しい知識にも目を配りながら、オーダーメイド的な治療を進める必要があるんです。
飼い主に寄り添いながら、病気予防のアドバイスも行う
開業にあたり、この地域を選んだ理由は?
出身は横浜ですが、この地域にも小さい頃からよく来ていました。開院するなら土地勘のある神奈川県内か勤務経験があった千葉県かな、と思いながら場所を探し始めたんです。そうしたら、最初に紹介していただいたのがこの場所で、何と言うか「あ、ここだ」と本当にすぐに心が決まってしまいました。ですから、「縁があって」としか言いようがありませんが、今でも非常に気に入っています。数十年前と異なり、駅前に大きなショッピングモールやタワーマンションも建ち並ぶようになった川崎近辺には、健康意識の高い飼い主さまが多いなと感じています。こちらのアドバイスや、次の診察日の指定にも、きちんと応えてくださる方が多い。お忙しい中でも、まじめに治療を続けてくださる心にこちらも応えて、できうる最大限の動物医療を提供したい、といつも思っています。
動物や飼い主と長く接してきて、印象に残っている場面はありますか?
最初の患者さまですね。ワクチン接種の受診でしたが、「先生」と話しかけられ、最後に「ありがとうございました」と感謝までされ、動物に対してはもちろん、飼い主さまの助けにもなれるのはうれしいことなのだな、としみじみと感じ入ったのです。初心の喜びを忘れず、少しでもお役に立てればと考えています。また、場面というわけではありませんが、最近、重要だなと感じているのは、動物の高齢化に伴う各種の予防や飼い方、しつけ方などについての相談です。フィラリアの予防などが顕著ですが、今は可能ならば治療ではなく、病気を予防することで動物に長生きしてもらおうという時代です。数十年前には遭遇しなかったような症状や行動にも合わせて、良き相談相手になっていきたいと考えながら情報を伝えています。
診療の際に心がけていることを教えてください。
まずは、飼い主さまと信頼関係を築くことです。そのためには、しっかりと話を聞き、丁寧に説明していくことが大切になります。次に、飼い主さまに優しく接すること。皆さん、動物病院には不安を抱えて来られます。自身の飼い方に間違いがなかったか、費用など悩みや心配は多くあるはずです。その皆さんに寄り添いながらコミュニケーションをとっていきます。動物の病気は獣医師だけでは治せません。飼い主さまの協力があるから治っていくものなので、飼い主さまが前向きになれるよう努めています。また、診療時間外であっても、可能な限り受け入れていこうとも取り組んでいます。今は夜間診療を行う動物病院もありますが、それでも飼い主さまはできれば慣れ親しんだホームドクターに診てもらいたいと思うでしょうからね。個人のクリニックなので限界はあるのですが、できる範囲で行っていきたいなと考えています。
ささいなことでも相談できるホームドクターをめざして
今後の展望をお聞かせください。
今後も、これまで通りの姿勢で診療を継続したいですね。規模を大きくすることよりも、自分自身の目の届く範囲でしっかりと診ていきたいな、と思っています。もちろん、獣医療の進歩にしっかりとついていくため、知識・技能・機器なども更新し続けてもいきたいですね。地域の皆さんに支持されて成長できたクリニックなので、例えば高齢の動物のための活動をするなどして、いずれはこの川崎に恩返しをしていけたら良いなと考えています。
お忙しいとは思いますが、息抜きでされていることは何かありますか?
実はあまり時間が取れず、趣味などは本当になかなかなくて(笑)。入院中の動物やホテルに泊まる動物がいるので、休日も何かと病院に来ていますね。しかし、そのように動物や飼い主さまのためになる仕事ができることは喜びとも感じております。良い診療をするにはこちらも健康である必要があるため、よく睡眠をとることは意識しています。10分でも時間が空いたらさっと眠れるほうなので、そのような短い時間の休息も大事にしていますね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
気兼ねなく安心して来ていただける動物病院をめざしています。散歩がてらなどでもかまいませんので、気軽に立ち寄っていただけたらと思うんです。ささいなことでも遠慮なくご相談いただき、それに対してそれぞれの状況に合った答えやご提案を示していけることが、飼い主さまと距離の近い「町のかかりつけ獣医師」としてできることなのだと考えています。