竹内潤一郎 院長の独自取材記事
めい動物病院
(川崎市中原区/武蔵新城駅)
最終更新日: 2023/01/22
南武線武蔵新城駅北口から徒歩2分。駅前の大通り沿いにある「めい動物病院」。オレンジ色のクリニック名が鮮やかで気軽に入れる雰囲気。白を基調とした院内はカジュアルかつ清潔感にあふれ、待合室に大きく設けられた窓からは陽光が注ぐ。ペットも不安なく診療を待てるような開放感が嬉しい。開院してから3年だが、着実に周辺に住むペットを飼う人々から信頼を集めているクリニックである。院長の竹内潤一郎先生はフレッシュな熱意と深い治療技術と知識を併せ持つ先生で、街の動物病院として「より多くの、病気を抱えた動物たちの力になりたい」と語る。また、クリニック名となっている「めい」に関して特別な思い入れがあるそうだ。竹内院長にクリニックや診療へのこだわり、そしてご自身のことなど、たっぷりとお話を伺った。 (取材日2013年7月16日)
命の輪を繋ぐ動物病院をめざして
医院名の由来を教えてください。
由来については2つあります。まず、「めい」というワンちゃんとの出会いです。大学生の頃、研究室で保護していた柴犬の老犬がいました。それが、めいです。もともと皮膚アレルギーなどがひどい子でしたが、治療の甲斐あって毛並みの綺麗な柴犬になりました。その後、私がその子を引き取ることを決め自宅で飼いはじめました。犬が好きというのもありましたが、獣医師をめざす学生として動物と私生活を共にするということは非常に大切なことだと考えていたというのもあります。めいとの生活はおよそ3年間、大学を卒業してからも続きました。病気になりやすい体質で、アレルギー疾患だけでなく、子宮の病気なども患ってしまい、私が初めて獣医師として執刀し治療した子でもあります。飼い主として、また獣医師としても、めいと過ごした日々はかけがえのない思い出です。そして、もうひとつは、携わる動物すべての命を大切にしたいという想いからです。私は大学生時代に心臓外科の研究をしていた時期があります。その時に研究室の恩師が「今ある人医療や動物医療は動物たちの命なくしては語れない。だから、臨床家は論文や研究データを決して無駄にしてはならない。そして過去の常識がこの先の常識とも限らない。常に情報のアップデートをし、それを患者さんに還元しなければならない。そして研究者はその臨床家の声を聞くべきである。」という話をされて、命の繋がりの重要性を強く感じ感銘を受けたことがありました。命は「めい」とも読みます。その研究室時代に恩師や友人たちとよく命について語り合ったこともあったので、この2つの思い出と想いから「めい動物病院」としました。命の輪を繋いでいくというのでしょうか、ある子に対しての診療で得た経験や知識または論文情報などを次の子へ、そしてまた次の子へ……と決して無駄にしない、受け継いでいく『懸け橋』となることをクリニックのポリシーとしています。
開院してから3年が経ちましたが、どのような感想をお持ちですか?
最近ようやく、地域の飼い主さんたちに知っていただけるようになったかなと感じています。そして、この土地で開業して良かったとも思いますね。知人がこの付近に住んでいて、「雰囲気もよくてアットホームな街ですよ。」と紹介してくれました。開院してから診療は犬と猫が多いですが、さまざまなペットを飼う飼い主さんが気軽に通えるような動物病院をコンセプトにしているので、ウサギ、フェレット、ハムスターなども連れて来られる飼い主さんもいます。どこへ連れていけばいいのかと悩まれる飼い主さんも多いと聞きますので、そういった方々のお役にも立っていければと考えています。
先生にとっての、また診療に対してのこだわりをお聞かせください。
ありふれた言い方かもしれませんが、患者さんと飼い主さんに安心を提供できる獣医師でありたいということでしょうか。広い視野を持ち、常に可能性を探りながら、また先入観にとらわれず常にあらゆる疑いを持ちそしてその確認を行うようにしています。一言で言えば、動物医療のゼネラリストが私のスタイルですね。このこだわりは開業してからのものではなく、ずっと以前からのもので、病気で苦しんでいる動物がいれば、何であっても力になりたいと感じていたことが一番の理由だと思います。そのため、大学生時代は循環器を専門にしていましたが、卒業してからは、東京大学大学院外科系診療科で軟部外科や硬部外科そして高度画像診断(MRIおよびCT)について学び、現在はクリニックの傍ら日本大学獣医学科獣医内科学研究室にも籍をおいています。今後もさらに広い視野を持って幅広い医療の提供ができるように向上心をもち診察を行っていきたいですね。診療に関しては、症状を見逃さないように最善を尽くすというのがモットーです。動物は問題なさそうに見えても大病だったり、早急な治療が必要となる場合が少なくないです。そのため、視診や触診そして聴診など基本的な事は特にシビアに行うよう心がけ、まずは症状の度合いを正確に把握することを念頭に置いてます。専門的な治療が必要であれば二次診療施設へ、エキゾチックアニマルでは実績のあるクリニックへのご紹介も行っており、飼い主さんのニーズや症状に応じて適した治療施設への良い架け橋となることも心がけています。
幼少期に抱いた「助けたい」という気持ちを胸に獣医師へ
開院する前は二次診療を積極的に受け入れる高度医療施設で勤務されていたと伺いました。
そうですね。外科系診療科を修了したあと、以前勤めていた動物病院から、分院を開業するので立ち上げメンバーとして参加してほしいというお話をいただき、沖縄県の琉球動物医療センターに勤務しました。ここでは一次診療も行っていましたが、CTなどを導入していましたので、近隣の動物病院から依頼を受け、専門的な治療を行うことも多かったです。二次診療施設としての要素が高かった動物医療センターでの日々は、獣医師としての知識や技術を磨けてやりがいを感じていましたが、同時に患者さん、そして飼い主さんともっと向き合える診療の場を求める自分もいて、開業を考えました。動物医療センターで2年の勤務を経て開院しましたが、一次診療と二次診療、それぞれの立ち位置を明確に把握できているのは、この時の体験のおかげだと感じます。
小さいころから獣医師になりたいと思われていたのですか?
意識したのは小学生の時ですね。子供の頃は北海道に住んでいたので自然や動物の存在が身近な環境でした。特に動物は種類を問わずに好きでしたが、当時は社宅だったのでハムスターやセキセイインコなどを飼っていました。ある日の朝、ハムスターの体調が悪そうで、病院へ連れて行こうと両親と相談したのですが、どうしても所用があり、お昼になったらということになりました。しかし、病院受診を待たないままハムスターは亡くなってしまいました。もう少し早く気付いていたらという思いと、僕に何かできることはなかったのかという気持ちでいっぱいだったのを覚えています。そして、その頃から『動物のお医者さん』という存在について考えるようになりました。中学生の時には、「10年後の私」という卒業文集で『見習い獣医さん』と書いていましたね。ただ、実際に私が将来のことを真剣に考え、獣医師の道を決めたのは高校時代の友人の後押しが大きいと思います。その頃の私の友人は皆、個性的で自分の意志をはっきりと持っている人たちばかりでした。それぞれに夢を語り合っていました。そろそろ進路を決めなくてはいけないという時期がきて、友人から「竹内はどうするの?」と聞かれ、初めて自分だけの思いを明かしました。帰ってきた言葉は『竹内らしくていいよ!それぞれ夢に向かおう!』でした。私の家はごく一般的な家庭でしたので親に迷惑がかかると思い家族にはなかなか言い出せずにいたのですが、この言葉が後押しとなったと感じています。振り返ってみれば獣医師は秘めた希望だったのですが、この時、獣医師に「なりたい」ではなく、「なる」に変わったのだと思います。そして、北里大学に進学しました。
強く憧れを持っていたころと、院長としての今を比べてどう感じられますか?
あのころの気持ちには甘い考えが多分にあったと思いますね。かわいいから、好きだからだけでは務まらない仕事ですし、絶えず責任感が求められます。ただ、ハムスターが亡くなって動物のお医者さんになりたいと思った自分と、獣医師である今を比べると根本的なところに違いはないと思っています。それは、『力になりたい助けたい』という気持ちです。これは、私を勇気づけてくれるものでもあり、またプロとしての自覚を常に意識させてくれるものです。そして、獣医師を天職だと感じさせてくれる気持ちでもあります。
患者の症状、飼い主の気持ち。納得してもらえる診療を
飼い主さんとのコミュニケーションを大切にされている先生だとも伺いました。
飼い主さんとの信頼関係なくして、最良の治療は行えませんので、できる限り飼い主さんの考え方やペットとの接し方などをお聞きし、そして何を問題視していらっしゃるのかをまず共有するようにしています。飼い主さん一人ひとりが求められていることは、それこそ千差万別ですので、何を望まれているかをしっかりと把握することが大切だと思っています。そのうえで、実際自分で診察した結果と飼い主さんが不安に感じていらっしゃる問題点などを照らし合わせて、患者さんのことを飼い主さんと一緒に考えてベストもしくはベターな処置を模索していくというのが私のスタイルです。
お忙しいとは思われますが、休日はどんなリフレッシュをされていますか?
入院している子もいますし、重症の子がいれば泊まったりと、ちょくちょくクリニックには顔を出しているので、なかなかまとまった休日をとってリフレッシュするという機会はありませんが、空き時間を利用して本を読むことは、いい息抜きになっていると思います。ミステリーサスペンス関連から経済関連、文学・哲学関連なんでも読みます。東野圭吾さんの本は読みやすいので最近よく読んでますね。
最後に読者にメッセージをお願いします。
本当は、個々の動物が持つ特性に合った飼育環境を整えるというのが一番良いのでしょうが、都市近郊はじめ限られた環境でペットを飼う方が増え、人の生活スタイルに合わせて生活する動物が多いように感じます。これはある程度仕方のないことかもしれませんが、知らず知らずのうちに動物たちの健康に負担がかかってしまっている場合もあります。そんな時、もしかしたら動物は何かしらのサインを出しているかもしれません。そこを飼い主さんが気づいてあげることは大切だと思います。例えば歩き方の変化や、体重や体格の変化、食べているごはんの量や飲む水の量の変化、フケが多くなっていないか、イボはできていないか、腫れているところはないかなど、ちょっとした変化を知ることでも病気の早期発見や、大病を防ぐケアに繋がります。そして、わからないことや不安に思うことがあればホームドクターさんに聞いてみてください。動物は気持ち悪いとか、お腹が痛いとは言えませんので、かけがえのない家族の一員として健康に気を配ってあげてくださいね。