中村 睦 院長の独自取材記事
アニマルメディカルセンター
(川崎市中原区/新丸子駅)
最終更新日: 2023/01/22
武蔵小杉駅から徒歩5分に、綱島街道沿いとJR線の高架に挟まれるように建つ細長いビルが「アニマルメディカルセンター」。およそ30年前に設立された、日本初の24時間365日対応の救急及び二次診療を掲げる動物病院だ。中村睦院長は、フロアごとに救急医療センター・センター病院・看護センターなど機能別にわかれて、きびきびと働くスタッフとのチーム医療をモットーに、獣医師・看護士・他スタッフとの垣根をなくしたフラットな関係での意見交換を重んじている。動物の匂いはほとんどなく、充実した検査機器が揃っていて、動物病院であることを忘れてしまいそうな印象だ。動物たちと飼い主の幸せのため、重篤疾患の治療のみならず、日々健やかに暮らしていくために必要な予防知識の伝授にも注力している中村院長に伺った。 (取材日2015年7月6日)
チームで取り組む医療は全ての患者のためのホスピタリティ
病院の特色について聞かせてください。
この病院では、救急そして二次診療機関としての役割を担っています。主に急性期医療においては、病気は待ってくれませんので、いつ何時でも対応できることが大切です。二次診療機関として何が病気の原因であるかの確定診断には、検査機器はもちろん人材も重要な鍵となります。そのためにも、世界基準(グローバルスタンダード)の知識を常に得るために人を招聘して学び、不明なことは連絡相談しながら、患者さんにとって一番いい治療を受けてもらえるように努めています。大学病院のように予約を取ってから数週間や数ヶ月待ちといったことがなく、病気になったその時に、なるべく早く診断して治療にあたるようにしています。そうした急性期医療、二次診療そして先進医療を行うことが大きな病院としての役割だと思っています。
どのような医療体制で治療にあたられていますか?
チーム医療を主体としています。体は一つの有機体であって、特定の部位だけではなく、いろいろな問題が関わっているものです。まず一般的なことを診てから、どの獣医師がより専門性を持って治療にあたるかを考えるようにしています。一番いい治療を受けてもらうためには、一人の獣医師ではできないものです。より知識を得るために、世界基準の最新医療を学んだら、みんなで共通の勉強会を開いてその知識をわかち合うようにして、治療レベルの向上に努めています。チーム医療を行っていくためにも、スタッフ全員が同じ医療人としての立場で意見交換することができる。このフラット医療も病院の特色ですね。
フラット医療について詳しく聞かせてください。
獣医師・看護士・受付やその他の病院スタッフ全員が同じ医療に携わる人間として、患者さんにとって最善な方法は何かを考えるようにするのがフラット医療です。これはスタッフ全員で作り上げてきたもので、それぞれがいろいろな経験を持っていて、それに基づいた意見を出し合います。症例がどのようになっているかを話し合うラウンドは毎日行っていて、スタッフ全員が同じ方向を向いて治療にあたっているのを感じます。間違いは決してあってはいけませんが、獣医師も人間です。見逃しがちなことを助言してもらっています。このフラット医療を行うことでスタッフ全員の方向性が一致して、患者さんへのホスピタリティにつながっていると信じています。
動物と人のために尽くすことができる獣医師の道へ
獣医師をめざしたきっかけについて教えてください。
小さな頃から鳥・ハムスター・魚・犬を飼っていて、動物が好きだったということは前提としてありましたが、もともと自然科学や生命科学に純粋な興味を抱く子どもでした。いろいろな形の動物がたくさんいることだけで好奇心も沸きましたし、動物がどういう進化をたどり、どういった動きをしているのかということに関心があり、それがスタート地点です。医療現場には人と人との関わりがある、それも一つの魅力です。医療の中で人ではなく動物を選んだのは、その分野の広さからです。命にはたくさんの種類があって、それを勉強することができる、追求することができるのは獣医学だと感じました。動物のため、人のために、その両方が叶えられるのも獣医師だけだと思ったため、この道を選んだのです。
この病院を選んだきっかけは何ですか?
実家から近いこともあって、獣医師になる前からこの病院のことを知っていましたし、24時間診療を行うすごい病院だと思っていました。人間も同じですが、病気は予測できない、いつ起こるか誰にもわからないものです。その動物の病気に対して、人と同じような医療を提供してあげられる重要性を強調されていた理事長の言葉に非常に感銘を受けました。大学に入学してから、よりこの病院の理念に素晴らしさを感じて、学んでいくうちに獣医師として臨床を経験するならここだと初めから決めていました。16年前にこの病院が大きくなったと同じ時期に獣医師になり、それ以来ずっと勤務し続けています。
飼い主さんたちとコミュニケーションをとるうえで気をつけていることは何でしょう?
人は具合が悪くなれば救急車を呼べますが、動物の場合は飼い主が半ばパニック状態で慌てて連れて来られます。動物がどういった状況であれ、それは「救急」にあたると捉えます。慣れたスタッフによる問診で状態を正確に判断し、なるべく早く検査をして治療を行います。動物が回復して元気になることが一番ですから。やってあげられることがあったのに、そこで亡くなってしまっては全く意味がない。しっかりと状況を飼い主に説明し、早期検査治療が必要なことにきちんと同意を得るようにしています。引き離されることへの動物と飼い主の不安について、お預かりする前に一緒にいたいなどの意向を聞いた上で、診療にあたることも大切にしています。
病気の予防は最終的には動物の幸せにつながる
こちらでは予防医療にも注力されているようですね。
動物も7〜8歳を過ぎると、自覚症状もなく、飼い主が気付かないうちに病気を抱えてしまうケースがあります。人と同じく、動物の病気も早期発見・早期治療が大切です。費用はかかってしまいますが、一般的な検診ドック・CT検査も加わった当院オリジナルのAMCドック・内視鏡検査と歯科検査も合わせたプレミアムドックを行っていて、目に見えないところに対応できるのが特徴です。それを行わなくても、診察における触診や視診は最も重要で、おおよそのことがわかります。血液検査やレントゲン、画像診断を合わせて行うことで、病気をより早く見つけることができます。フィラリアやノミを予防するなど、日々のケアも健康維持の一つだと思いますね。
獣医師になられてから今まで大きく変化したと感じることはありますか?
どの方も、動物に対して「この子でなければ」という家族意識を強く持っていると思います。ご高齢の方も、飼っている動物に元気にしてもらっているように感じます。動物自体も高齢化が進んできて、腫瘍(がん)が増えてきました。日中働いていて不在な家庭では、しつけも絡んでいますが、漁って食べてしまうなど異常行動や問題行動が原因で、家に帰ったらぐったりしていたというケースもあります。動物と人とが関わる時間が少なくなってきているのかもしれません。動物と人の双方が幸せになる方法をアドバイスをしていきたいと思っています。人間と同じではない、本来持っている行動や習性などの自然科学を理解した上で、最低限の知識や倫理観を持って飼うことが大切です。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
急性期医療はこれからもっと必要になってくるので重要視していきたいですね。そのためにも、日本には専門医制度はありませんので、いろいろな疾患に対してのスペシャリストを増やしていこうと考えています。ただ、治療したからいいわけではなく、その後も考えた総合的なケアを行い、動物にも飼い主にもホスピタリティを持って、愛のあるいい医療を提供したいと思います。病気以外のことでも、動物と飼い主が幸せになれるよう講義やふれあいを通して伝えていけたらいいですよね。かわいがるだけでなく、病気予防は最終的に動物の幸せにつながります。病気だから動物病院に来るのではなく、触っただけで、話しただけで異常を見つけられる可能性もあります。ですので、飼い主の皆さんにはもっと気軽に遊びに来てもらいたいと思っています。