遠藤秀仁 院長の独自取材記事
ローレル動物病院
(横浜市西区/西横浜駅)
最終更新日: 2023/01/22
西横浜駅から徒歩5分。大きな幹線道路沿いに鮮やかな緑色の看板が見えてくる。「ローレル動物病院」は2010年開業。電子カルテやデジタルレントゲンを導入するなど、常に環境にやさしい動物病院を目指し診療を続けている。「ペットと飼い主さんと治療をする自分と、みんなが笑顔でハッピーになれる治療を心掛けている」というのは地元出身、優しい笑顔が印象的な遠藤秀仁院長。内視鏡を使い、動物たちにも負担の少ないやさしい診療を心掛ける遠藤院長に、日々の診療に対する思いから獣医師を目指した理由などプライベートなことまで、じっくりと伺った。 (取材日2011年03月09日)
ペット、飼い主さん、獣医師、みんながハッピーになれる治療をしたい
こちらを開業されたのはいつですか。
2010年ですから、ちょうど1年前です。この辺りは僕の生まれ育った地元なんですよ。開業にあたっては、「なるべく環境にやさしく」ということを常に念頭に置いて考えました。看板のグリーンもエコロジーを意識したイメージカラーですし、院内の設備には電子カルテやデジタルレントゲンを導入しました。今、もうパソコンの時代ですからね。紙を使わず環境に配慮できますし、管理も楽になります。飼い主さんにご説明するときも有効に使えますから、とてもいいんですよ。周辺にマンションが増えて、一人暮らしの方が多いせいか、ここに来るのは小型犬と猫がほとんどです。予想していたよりも猫が多い印象ですね。やはり鳴き声がしないからなのかな、と思っています。
これまで診療してきて、動物たちの病気について何かお気づきになったことはありますか。
開業当初は、フィラリアやワクチンなど予防系の診療が多いのかと思っていたんですが、案外、病気でかかる子が多くてびっくりしました。人間と同じように動物も高齢化がすすんでいるせいか、腫瘍にかかっている子が案外多いんです。たまたまなのかもしれませんが、こんなに当たらないだろうと思うくらい、腫瘍の見つかる子が多いんですよ。犬も猫もどちらも多く見つかっています。飼い主さんがちょっとした変化に気づいて連れて来られる場合もあるし、普通に予防接種に連れて来て身体検査をしたときに「ちょっとおかしいね」と検査したら腫瘍だった、という場合もあるんです。やはり、普段からよくペットのことを気に掛けていらっしゃる飼い主さんは早めに気づいて連れていらっしゃいますね。一番近くにいるのは飼い主さんですから、とにかく普段からペットの様子をよく見ていてあげてほしいと思います。昼間はお仕事で接する時間の少ない方でも、トイレや食事の世話は必ずされると思いますから、食事やおしっこの量、食欲の変化といったところはやはり注意していただきたいですし、普段からよく動物たちを触っていると、腫瘍に気づくことが多くなるかと思いますね。
診療する上で一番心掛けていらっしゃるのはどんなことでしょう。
やはり人間の診療と違ってペットの場合は、ペットと飼い主さん、それぞれのことを考えながら診療しなければいけません。一番大事なのはバランスだと思っています。きちんとバランスをとらないと信頼関係も築けないし、できていたものも壊れてしまうんです。もちろんペットが健康でいることは大切ですが、そればかり優先してしまうと飼い主さんの都合や生活スタイル、ペットとどう関わっていたいかということが後回しになってしまいます。僕には僕の意見もありますが、それを患者さんに押し付けることもできませんしね。医者目線で上から何か言うことだけは絶対にしてはいけないと思っているんです。話のできないペットの言葉を代弁して、「こうしたほうがいいんじゃないですか」というお話はしますが、あとは飼い主さん次第。治療法は必ずいくつかの選択肢を用意し、飼い主さんがそのなかから選ばれるときには獣医師としての僕の意見も交え、最終的にペットと飼い主さん、そして治療にあたる僕自身も、みんながハッピーになれるように。それを常に心掛けているんですよ。
飼い始めたばかりの犬の事故が獣医師を目指すきっかけに
先生はなぜ獣医師を目指されたのですか。
大学受験前の浪人時代、拾ってきた迷い犬を実家で飼い始めたんです。本当にかわいくて、いろいろと世話をするうちに、それまで考えたこともなかった獣医師の道を、少しずつ意識するようになっていきました。決定的になったのは、その年の夏の夜、犬が交通事故に遭ったんです。当時、動物の救急病院なんてありませんでしたから、治療してもらうのに、あちこちの病院に連絡したり探したり、とても大変でした。電話帳を調べて電話しても、どこも閉まっていて全然ダメで。そのとき「自分が救えたらいいのに」と思ったんです。それがきっかけで獣医師を目指すようになりました。結局その犬は、数年前、腫瘍で死んでしまったんですが、最後の手術は僕が執刀したんです。個人的な感情が入ってしまうといい仕事ができないと思い、そのときは1つの医療として手術に臨みました。あのとき犬を飼っていなければ、僕は獣医師になっていなかったでしょうね。大切な出会いだったと思います。
生まれ育った西横浜周辺の町は昔と変わりましたか。
ずいぶん変わりましたね。僕が子どもの頃は、この辺りも平屋の家ばかりだったんですよ。それが今では、マンションばかりになってしまいました。建設中のところも、まだたくさんあるようですから、これからもどんどん変わっていくのかな、と思いますね。この動物病院には大型犬を診療に連れて来る方はほとんどいないんですが、いらっしゃるとすると、大抵は昔ながらの平屋に住んでいる高齢者の方が多いんです。なかなか通院されるのが大変な場合には、僕が往診に伺うこともあるんですよ。
お休みの日はどのように過ごされているのでしょう。
普段はずっと動物病院の中にいますから、とりあえず外に出かけるように心掛けています。僕は自然が大好きなんですよ。大学時代は青森で過ごしたんですが、周りにはいつも自然がたくさんありました。それで、今でもつい、時間ができると自然を求めて出かけてしまうんです。最近は日帰りで浜名湖まで行ってきました。やはり自然の中は気持ちいいですね。旅行も好きなので、毎年1回は海外旅行に行こう、と決めているんですよ。昨年はグアムに行ってきました。日本とは違った風景の中にいると、とてもリフレッシュできますね。まだ今年の行き先は検討中ですが、時間を作って、ぜひ出かけたいと思っています。
大切なペットの健康を守っていくため、気軽に病院に足を運んでほしい
思い出に残るエピソードがあればお聞かせください。
一番思い出に残っているのは、エイズで亡くなってしまった猫ちゃんです。初めてここに来たときからエイズを持っていたんですが、発症し、免疫不全でいろいろな症状が出てきてしまったんです。エイズは根本的な治療はありませんから、出てきた症状に対してそれぞれ対処していくしかありません。その猫ちゃんの飼い主さん、亡くなってしまうまでの3、4ヵ月間、毎日ずっと治療に連れていらしたんです。お仕事されている方だったのに、帰宅されてから本当に毎日。「できる限りのことをしてほしい」とおっしゃって。僕もいろいろ調べて勉強させていただき、できるだけのことをさせていただきました。あそこまで熱心にお世話された飼い主さんは見たことがないですね。今でも忘れられません。
内視鏡を使った治療もしていらっしゃるのですね。
はい。何か異物を飲み込んでしまったときなど、これまでは開腹手術をしなければいけなかったものが、内視鏡を使えばそうしなくても済むんです。ペットへの負担も軽く済みますし、飼い主さんも安心されると思いますね。それ以外にも、例えば、「よく吐くんです」と言って連れていらして、内視鏡で診てみたらポリープが見つかったということもあるんですよ。腫瘍の一歩手前の状態で見つかることもあります。そういった予防的な使い方をすることもできるんです。症状を飼い主さんに説明するときも、実際の映像で見ていただけますから、とてもわかりやすいと思いますね。今、内視鏡を使うクリニックは増えてきていると思いますが、まだどこの動物病院にもあるわけではありません。早く適切な診療をするために、ぜひ有効に使っていきたいと思っています。
ペットの健康を守って快適な生活を送っていくために、読者にメッセージをお願いします。
これからはペットも予防医療が大事になってくると思うんです。例えば、がんも早期発見できれば選択肢がたくさんあって対処のしようもありますが、時間が経ってしまってからでは選択肢も狭まり、手術しても後遺症が残ったり、いろいろと難しいことも出てきてしまいます。予防しておけばかからなくて済む病気もたくさんあります。そういったところを、飼い主さんの意識をもっと高めるよう働きかけていきたいと思います。とにかく、なるべく動物病院に足を運んでほしいですね。ちょっと具合の悪いくらいでも、飼い主さんでは判断が難しい部分もあります。なんでもなければそれでいいし、意外に大きな病気が潜んでいる場合もあるかもしれません。気軽に来ていただいたらいいと思うんですよ。予防注射は病院に行く、いいきっかけになりますから、欠かさず連れて行ってあげてほしいですし、できれば健診にも連れて行ってあげてほしい。どんな年齢の犬や猫でも健診は大事ですが、「うちの子はとにかく健康で問題ないです」という場合でも6歳、7歳といったシニア年齢になったら、やはり少なくても年に1回は必要になってくると思いますね。ペットも高齢化していますから、それに対処できるよう、僕自身も勉強し、向上していきたいと思っています。何か派手なことをするのではなく、毎回の治療を真剣に真面目に取り組んでいきたいです。そして、すべてのペットたち、飼い主さんとしっかり向き合い、ベストな治療をし、みんなが笑顔でハッピーでいられるよう、これからも頑張っていきたいと思います。