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飛知和 豪 院長の独自取材記事
アルズ動物病院
(柏市/南柏駅)
最終更新日: 2023/01/22
2012年に開業した「アルズ動物病院」は、南柏市の閑静な住宅街の中にある。旧日光街道など大通りが近いものの、騒がしさがなく落ち着いた雰囲気が特徴だ。一面ガラス張りの受付と待合室は、光を取り込むことだけが目的ではない。初めて訪れる患者も、中が見えれば入りやすいだろうと考えた飛知和豪(ひちわ・つよし)院長のこだわりだ。「飼い主さんたちにとって、お散歩の休憩がてら立ち寄れるクリニックでありたいんです」その言葉通り、心遣いあふれる院内はどこも広々として居心地がいい。笑顔でじっくりと話を聞いてくれる飛知和院長に迎えられれば、つい長居してしまう患者も多いのではないだろうか。幼少時から獣医師になる夢を追い続けてきた飛知和院長に、診療へかける深い思いを伺った。 (取材日2014年12月25日)
ふるさとのように馴染み深いこの土地で、ホームドクターとして患者に寄り添う
広々とした院内で居心地がいいですね。
ありがとうございます。飼い主さんの多くはご家族総出で付き添っていらっしゃるため、窮屈にならないよう待合室と診察室をできるだけ広く設計しました。猫ちゃんなど動きの俊敏な動物は、逃げられてしまうかもしれないので狭い診察室のほうが適しているんですけどね。僕はできるだけご家族そろって診察風景を見ていただき、獣医師の説明を皆さんに聞いてほしいのです。正しい情報をご家族みんなで共有していただくことで、動物はより安全に健康を保っていけると考えています。特に小さなお子さんには、生き物が病気になるとどうなるか知ってもらうためにも診療に立ち会ってほしいですね。病気を通して、より動物を理解し、命の大切さを知ってほしいと思っています。
先生が獣医師をめざしたきっかけを教えてください。
実家が福島なのですが、幼少期は自宅の周辺に動物がたくさんいる環境で育ちました。自宅でも牛や豚を飼っていて、獣医師さんが往診に来るたび、「獣医師ってかっこいい」と憧れていたんです。小さいころは漠然と夢見ていただけでしたが、中学、高校と進学していくにつれ、はっきりとこの道を志すようになりました。家系には誰も獣医師がいなかったので不安もありました。でも進学に際して学校の先生をはじめ、両親ともよく話し合い獣医学部へ進学。この道を選んで後悔したことはありません。
大学ではどのような分野にご興味を持って学ばれてきたのですか?
大学で専門の勉強をしていくにつれ、ウィルスや伝染病に興味を持つようになりました。人間でもそうですが、動物は体にウィルスや細菌が入ると免疫システムが働きます。細胞が体内に進入してきた異物に対してどんな反応を示すのか、そんな体のメカニズムに面白さを感じたのです。ただ、研究は楽しかったものの、最終的にめざしていたのは動物と直接触れ合える臨床医。もともと大動物の獣医師になりたいと思っていたのですが、猫の伝染病を研究する研究室に所属していた過程で小動物の可愛さに目覚め、開業を決意しました。
なぜこの土地で開業しようと思ったのでしょうか。
大学卒業後、最初に勤務したのが千葉市の動物病院でした。そこで8年ほどお世話になって、その後柏市や松戸市の病院に勤務。いつの間にか、千葉県は僕にとって第2のふるさとのような場所になっていました。開業するならこの辺りでしたい、と思ったのです。また、千葉県はビルの並ぶ街と田園風景が混在した土地です。さまざまな生活環境がそこにあるということは、求められる診療にも幅があるということ。幅広い診療をしていきたいと考えている僕にとって、とてもやり甲斐のある土地ではないかと考えました。
めざすのは、ドッグカフェのような気軽さで立ち寄れるクリニック
クリニックのコンセプトを教えてください。
コンセプトは、気軽に立ち寄れるクリニックであること。飼い主さんの多くは、病気にならないと病院に行ってはいけないと思っているようです。クリニック前の道はワンちゃんたちの散歩コースとしてよく使われていますが、皆さんなかなか気軽にはいらっしゃいません。でも、本当は散歩のついでに爪切りをしてもらったり、雨宿りするためだけに利用して良い場所なんです。ドッグカフェとまではいきませんが、地域の飼い主さんたちとの憩いの場としても使っていただけたらうれしいですね。
先生が患者さんと接する時に心がけていることを教えてください。
まず飼い主さんとじっくりお話しして、獣医師やクリニックのことを知ってほしいと思っています。その上で、会話の中から飼い主さんが何を思って、動物をどうしてあげたいのか。それに対し自分たちは何ができるのか、といったことを考えながら診療していきたいですね。獣医師であっても、ただ動物とだけ信頼関係を築くだけでは良い治療ができません。飼い主さんとの信頼関係を大事にし、飼い主さんのご希望を汲み取ることこそが重要なのです。同じような症状であっても、飼い主さんの環境や思いによってできる治療も変わります。飼い主さんの目的をきちんと把握した上で、それぞれのご家族に寄り添った治療をしていきたいです。
クリニックで特に力を入れている診療分野はありますか?
専門的な分野を大事にするより、ホームドクターとして幅広い診療を行っていきたいです。勉強としてはウイルスを初め、ホルモンの働きについてなど専門的な分野に興味があります。でも、診療としてはどれか一つに偏るのではなく、どんな面でも患者さんのお力になれるクリニックでありたいですね。この地域の患者さんが何を求め、どんな診療を行っていくのがベストか。それを知るのが今の僕の役目でしょう。まだ開業して2年ですから、これからさらに地域に馴染み、愛されるクリニックとして成長していきたいと思います。
最近は動物も高齢化し、予防が大切だとよく耳にします。
その通りです。当院でも予防には力を入れています。体の予防はもちろんですが、皆さん忘れがちなデンタルケアにも気をつけていきたいですね。近年の高齢化に伴い、動物にも歯周病が増えてきました。当院では、高齢になってから慌てるのではなく、今からできることをやりましょうとお声かけしています。デンタルケアはふだんからお家でできることです。小さいうちから慣らしてあげれば、動物もある程度大人しく歯磨きさせてくれるようになるでしょう。溜まりに溜まった歯石を取るとなると、麻酔をかけて大がかりな治療をしなければいけなくなります。そうなる前に気をつけてあげられれば、動物への負担も少なく済みます。歯磨きについては、やれる範囲で良いので、ふだんから心がけてあげてほしいですね。
クリニックでの診療にとどまらず、活動の場を広げて地域へ貢献
動物を飼う時、飼い主さんに気をつけてほしいことは何ですか?
猫ちゃんの場合は、家から出さないこと。最近は外猫のほうが少なくなりましたが、まだゼロではありません。猫ちゃんを外に出してしまうと、飼い主の目の届かないところでケンカなどをして、感染病をもらってくるリスクが高まります。大切な動物の健康を守るためにも、徹底していただきたいですね。また、ワンちゃんの場合は食事管理が特に重要です。市販で売られているドッグフードは、栄養バランスの良いものが多くなりました。昔のように何でも人間と同じものを食べさせてしまうご家庭も少なくなり、食事事情も少しずつ変化してきていると思います。でも、薬が良くなり、栄養価の高い食事ができるようになった現代では動物も高齢化傾向です。人間もそうであるように、年を取ればそれなりのケアが必要になります。ワンちゃんにとって適切な食事を与え、高齢になっても元気でいられる体を作ってあげてほしいですね。
お休みの日はどのように過ごしていらっしゃいますか?
もともとあまり趣味がなかったんですが、人から勧められて最近ゴルフを始めました。まだ始めてから2年くらいで、練習場に通っているだけなんですけどね(笑)。ちょっとした時に1人でも打ちに行けるところが、良い気分転換になっています。また、時々バドミントンをしに体育館などに行くこともあります。僕は高校の時バドミントン部に入っていて、それを聞いた子どものお母さんたちから是非にと誘われて始めました。僕の子どもは小さいのでまだバドミントンはできませんが、いつか一緒にプレイできたらうれしいです。
今後、どのような面に力を入れて診療していきたいですか?
インターネットが普及し、近頃の患者さんは医療についてよくご存じです。ただ、あまりに多い情報量のせいで、そのどれもが正しい知識とは限りません。僕自身世間の情報に敏感になり、患者さんと知識を共有していきたいと思います。いい治療をするために技術を磨くのは獣医師として当然です。しかし、患者さんの立場に立つためには、それ以外の面でも知るべきことがたくさんあるでしょう。獣医師仲間と行っている勉強会や有名な先生方のセミナーに参加しながら、新しく正しい知識を身につけ、患者さんに還元していきたいです。また、ただクリニックで診療するだけでなく、もう少し幅広く地域に貢献したいと思っています。小学校で動物とのふれ合い教室を開かせていただくことがありますが、そうした活動をもっと増やしていきたいですね。