守屋 弘美 先生の独自取材記事
オガタ動物病院第二病院
(相模原市中央区/淵野辺駅)
最終更新日: 2023/01/22
JR横浜線・淵野辺駅から車で10分。広い公園のすぐそばで緑が多く、歩いていても気持ちが良い地域に根づいているのが「オガタ動物病院 第二病院」だ。獣医師の守屋弘美先生は、同じ飼い主のペットを数世代にわたり診療するなど、近隣の飼い主にとっての良き「かかりつけ医」であり続けてきた。取材時に来院していたある飼い主は「今は成人する年齢になった自分の子どもが生まれた頃からの付き合い。」と楽しそうに振り返っていた。子どもの頃からずっと犬や猫が家にいるという環境に育ったという守屋先生に話を聞いた。 (取材日2016年4月27日)
わかりやすい言葉で説明を
獣医師になろうと思ったきっかけをお聞かせください。
子どもの頃から、犬と猫がずっと家にいるような家庭で育ちました。当時、犬を診てもらっていた獣医さんが医療者としても人格的にも素晴らしい方だったんです。それで、獣医師という職業に興味を持ちました。資格を取って続けられる専門職で自立したかったこともあって、大好きな動物に接する仕事に就きたいと思い、大学で獣医学を専攻しました。大学院の修士課程を修了した後は2年半ほど国立の研究所に勤め、その後もともと獣医師を志すようになった気持ちに立ち返って臨床での診療をやりたいと思い、大学の研究室の先輩でもあった故・小方良一先生が開業していたこのオガタ動物病院で働かせてもらうことにしたんです。
実際に診療をしていく中で、なりたい獣医師像などありましたか?
オガタ動物病院の創設者である小方先生は、夜遅く自分の時間をかなり割くことになっても、嫌な顔をせずに獣医師としての仕事を続けていました。動物の症状が厳しい時には往診に駆けつけたりと、動物や飼い主さんに対して本当に親切だったんです。そんな治療の進め方が好きでした。小方先生を近くで見ながら、そうありたいと思うようになりましたね。見習って診療をしているうちに、動物も元気になり、飼い主さんに喜んでもらえる場面が増えてきて、それが一番の喜びになっていきました。厳しい状況の時こそ獣医師が諦めてしまえば終わりですから、どんな診療も手を抜かずにやりたいと思っています。それから、飼い主さんにはわかりやすい言葉で伝えて理解してもらわなければいけない、と常に考えています。飼い主さんは動物のことが心配でいらっしゃるわけですから、動物の状態をきちんと理解して帰っていただくことが大事かな、と私は思っています。
理解してもらうために、言葉の伝え方で気をつけていることはありますか?
専門用語はなるべく使わずに状況を伝える、ということを心がけています。そうした診療を20年以上もするうちに今ではペットが2代目や3代目になることもあり、飼い主さんも2世代で来院して下さるようになりました。長いお付き合いが続いていることは獣医師としても光栄に思います。
身近な存在として相談に乗りたい
クリニックならではの診療のポイントはどこにあると思われますか?
身身近な存在として相談に乗りたい近な存在として飼い主さんの相談に乗って、正しい情報をお伝えするところにあると思います。ですから、ささやかな変化でも不審に感じるところがあったらぜひ来ていただきたいんです。病院では緊張してしまい、つい心配していることを伝えられなかった方もいらっしゃるとは思うのですが、遠慮しないでいただければと思います。ささいな疑問や悩みをお話いただくことで、飼い主さんの事情を踏まえた提案に繋がります。
飼い主の事情も含めて相談できるのは、ありがたいですね。
例えば経済的な事情があって、それほどお金をかけられませんということであれば、ある程度の範囲でできる最大限の治療というのも選択肢の1つとしてお伝えできるのですから。もちろん、より高度な医療を求められている場合には、当院のみならず、より専門的な治療ができる当院の本院、あるいは大学病院などでの信頼できる治療を紹介もします。世間には誤った情報も流れていますが、獣医師という専門家の視点から「この分野ではあの先生が良いです」と確信を持ってお伝えしています。
獣医師として、印象的なエピソードはありますか。
以前、ペットとの最期のお別れの場で「何もしてあげられなくてごめんね」とおっしゃる方が多いという事を関係者の方から聞きました。でも、私としては、ほとんどの飼い主さんはその都度精一杯されているのにな、と感じるんですね。自分が関わっている動物の飼い主さんには、そういう思いをさせたくありません。動物を飼ったことを苦にしてもらいたくないのです。頑張りすぎるとつらくなるから、無理をしないで頑張ってね、と伝えるような診療を心がけています。
そうした相談への姿勢があるからこそ、2代目のペットを連れてくる飼い主さんも多いのでしょうか。
そうだったらいいですね。あるゴールデンレトリバーの子が骨肉腫になり、断脚しなければならない事がありました。飼い主さんは足を失わせることが良いのか悩んでいらっしゃいましたが、飼い主さんとじっくり話し合い、最終的に断脚しました。結果的にその犬は足を1本失いましたが、痛みがなくなり快適に過ごせるようになったんです。その後飼い主さんから「以前のように活発に動けるようになった。思い切って決断して良かった。」と言っていただけたときには、ほっとしましたね。その後、その犬が亡くなった後しばらくして「また飼っちゃったわ!」と同じ犬種の子を当院に連れてきてくれました。そうやって動物を飼うことを好きでい続けてくださると、やっぱりうれしいです。
心地よく通院してもらうために、言葉にも心配りを
獣医師としての仕事の合間に、息抜きにされているご趣味などはありますか?
モータースポーツを観ることです。特に「SUPER GT」という、市販車をベースに改造した車両というところから始まったカテゴリーのレースが好きです。F1などよりも現実味を感じますので。普通の生活で乗る自動車を想像できるのが好きです。その中で、ドライバーやエンジニアを始めチームで一丸となって最高のパフォーマンスを見せる姿が素晴らしいと思うんです。今はあまり行きませんが、かつてはライセンスを取り、レーシング場に走りに行っていました。運転に集中して無心になれる時間が好きでしたね。
スタッフとは診療の方針についてどんな話をしていますか?
飼い主さんに安心して帰ってもらい、また気軽に寄りたいと思ってもらえるようにと話しています。ペットの状態など、飼い主さんにとっては喜ばしくない事実を伝えなければいけない場面もありますが、どのような言葉を用いてご説明すれば不安をあおったり不愉快な思いをさせずに、しっかりとお伝えできるかということを考えながらお話することを大切にしています。
獣医師として日頃感じていることなど、読者へのメッセージをお願いします。
私は今も猫を飼っていて、動物が大好きです。飼い主の方たちがペットを大切にするお気持ちはわかるし、尊重したいとも思っています。ただ、動物と人間とは違うので、ペットとのより健やかな関係を築くために動物に人間と全く同じ生活をさせるのは避けたほうが良いということも認識していただければと思います。犬が子どもの顔をなめることは、一見するとほほえましいですが、いくら清潔にしていても限りがあり、動物の口の周りには雑菌も含まれていますよね。そこは衛生面も配慮して接する必要があります。食生活にしても、人に近づけたらいいというわけではありません。昔に比べて動物が長生きするようになり、ペットとの関係が成熟してきたからこそ、人間との違いをきちんと理解した上で接していただければと思います。何か気になることがあれば気軽にご相談ください。