佐藤理文 院長の独自取材記事
トレア動物病院
(川崎市多摩区/中野島駅)
最終更新日: 2023/01/22
JR南武線中野島駅より歩いて10分ほど、用水路のせせらぎが耳に心地よい閑静な住宅街に誕生したのが「トレア動物病院」。犬、猫を中心としたペットの治療だけでなく、飼い主の不安軽減も行ってくれることはもちろん、ペットがストレスにならないように配慮した「快適に通えること」にこだわった動物病院だ。院長自身が細部にまでこだわったという待合室のインテリアは、まるで友人宅を訪れているかのようなリラックス感を演出してくれる。また、スタッフ一同、ペット、飼い主とのコミュニケーションを何よりも大切に考え、笑顔を忘れない「おもてなし」重視のクリニックとなっている。今回は、準備に追われる開院直前の慌ただしい時期の院長にお時間をいただき、クリニックにかける意気込みなどを語っていただいた。 (取材日2015年6月5日)
ペットブームは成熟期を迎え「飼育の質」が問われる時代に
まずは先生のご経歴からお聞かせいただけますか?
東京農工大学を卒業した後、江東区にある動物病院で10年ほど勤務いたしました。そこの動物病院は全体で5つのクリニックを擁し、従業員数も100人以上にのぼる規模の大きな病院です。中でも3つのクリニックでは夜間診療を含む24時間診療を行っています。私自身10年の間には夜勤も経験し、ハードな勤務をこなしてきました。退職した昨年の9月より当院の開院準備に本格的に取り掛かり、来週のオープンにこぎつけたという次第です。
大きな病院でハードな勤務をご経験されたのですね。
夜間に飛び込みで運び込まれる子の中には、特に状態の難しい子も多くいました。交通事故にあった子や産気づいた子なんかも来院しますので、出産の取りあげや帝王切開を含む外科的な治療も迅速に行う必要がありました。内科や外科などとらわれずに何でも対応しないといけないので、幅広く経験を積みましたね。
幅広いご経験の中で、先生のご専門は何になるのでしょう?
専門は皮膚になります。大学時代に所属していた研究室の教授が皮膚を専門にしていたこともあり、私自身もその道に進みました。動物の皮膚疾患でも色々とありますので、気軽にご相談頂きたいですね。私が飼い主さんに日ごろから伝えていることとしては、シャンプーの仕方です。人間と同じように40度前後のお湯でごしごしと洗う方が多い様に思いますが、実はお湯は36度前後で、5分くらい湿らせてから泡で洗う方法が一番動物にとって最適な方法なんです。気温や湿度が高まる夏場は感染による皮膚疾患が増える時期ですし、シャンプーする頻度も高くなると思いますが、洗い方にも気を付けて頂きたいですね。
夏場に多い疾患というのはありますか?
他にも熱中症など、夏特有の疾患というのはあります。熱中症は外に出ている子だけでなく、エアコンの付け忘れなどにより、室内に暮らしているペットにも起こります。ぐったりして、ひどいと血便が出たり、けいれんを起こすことも。重症度によって対応は違いますが、緊急状態だと人工呼吸や点滴を行ったり、軽ければ涼しくして水分を与えるといった対応になりますね。とはいえ、熱中症に関しては、年々飼い主さんの意識が高まっているように思います。10年前に比べるとかなり少なくはなっていますね。ペットブームも後押ししているのかもしれませんが、雑誌などでの情報も増え、啓発が進んできているなと感じます。とても良い傾向ですよね。
意識の高い飼い主さんが増えてきたということでしょうか?
ひと昔前に爆発的に犬が増えた時代に比べると、今は登録頭数自体、減っています。ただし、一頭ごとの飼育の質は高まってきているように思います。ペットブームが成熟期に入ったというか、意識の高い飼い主さんが増えたのではないかなと思います。飼う方は減って、覚悟と責任を持って飼っていただいている気がします。
ホスピタリティーを重視した「オンリーワン」の動物病院をめざして
開業に至ったきっかけは何でしょう?
自分で考える理想の病院をつくりたかったというのが一番です。少し経営的な話にもなってしまいますが、今までのように病院を開けていれば患者さんが来るという時代ではなくなってきました。近年は、飼育頭数が減ってきているという状況もあり、動物病院の数も横ばいです。そうした状況の中で、動物病院として、一人ひとりの飼い主さんに対してできることは何か考えた際、今まで以上にホスピタリティーを重視することが大切だと思いました。ホテルやカフェでもそうですが、人の病院でもホスピタリティーを重視しているところは増えていると思います。とはいえ、動物病院ではまだそのあたりの考え方が浸透仕切っていないのですね。そこで、その辺りを重視して動物病院のブランディングをしていきたいと考えたのです。患者さんの立場に立って、満足度の高い、よりおもてなしに近いサービスができる病院というのが私のめざす動物病院です。
飼い主さんの動物病院を選ぶ目も肥えてきたということでしょうか?
そうですね。選択肢が増えてきたこともあって、そうした「ホスピタリティー重視」の動物病院に対するニーズの高まりも感じています。もちろん、医療面で平均点以上をめざすということも大切なのですが、この病院ではさらにそこに加える形で「ホスピタリティー」という点を重要視していきたいと思っているのです。「トレア動物病院」という名前にも、そのあたりの願いが込められているのですよ。
トレアという名前にはどのような由来があるのでしょうか?
「Torea(トレア)」とは、以前旅行でタヒチのランギロア環礁に訪れた際に宿泊したホテルの部屋の名前なのです。日本人観光客のあまり訪れない環礁にあるホテルなのですが、タヒチはフランス語圏であるために、コミュニケーションの手段はお互いに片言の英語のみ。それにもかかわらず、そのホテルのスタッフはあふれんばかりの笑顔で「OK! OK!」と不安でいっぱいの私たちを包み込んでくれたのです。南の島ならではの余裕ある対応に温かいものを感じ、忘れられない時間となりました。具合の悪いペットと一緒に初めての動物病院に来院されるみなさんも、「どんな先生だろう?」「満足のいくサービスが得られるかな?」と不安だらけのことと思います。そうした皆さまの一人ひとりを高いホスピタリティーでお迎えできるように、開院にあたってこの「トレア(Torea)」という名前を採用させてもらうことにしたのです。ちなみに、トレア(日本名ムナグロ)は渡り鳥で、毎年必ず同じ越冬地に帰ってくると聞きます。皆さまにとっても「また戻って来たくなる場所」「安心して快適に過ごせる場所」となれるよう、努力していきたいと考えております。
「快適な通院」を支える、院内設備とウェルネスプログラム
「快適に通える病院」ということで具体的にはどのような工夫をされていますか?
ペットを連れての待ち時間は辛いものです。人間と違ってペットにはトイレの問題もあります。当院では待合室に犬用のトイレを設置していますが、猫の場合どうしてもそういう訳にいかないケースが多くなります。そこで、1時間ごとの予約枠を設けて、大体の待ち時間を予測していただけるように配慮しています。また、待ち時間という不快になりがちな時間を少しでも快適に過ごしていただけるよう、待合室のスペースをかなり広くとっています。診察室やバックヤードを広くとるために待合室を削るというケースが多いようですが、当院では逆で後ろの方を少し削ってでも待合室を広く取れるよう、設計時に強くお願いしました。待合室も二つのスペースに分けて、こちらは犬、こちらは猫というように住み分けを可能にしたんですよ。
なるほど、「猫ちゃん」にも通いやすい病院なんですね?
わが家にも4匹の猫がいますので、「猫飼い」の気持ちはよく分かります。環境の変化に弱い猫は、犬以上に通院がストレスになることが多いのです。特に、見知らぬ犬と一緒に過ごすという時間はかなりの負担になりますので、猫の飼い主さんは「猫が嫌がるから」ということで来院率が低くなりがちです。そうすると手遅れになることもありますし、そのため「猫に優しい病院」をめざしました。
診療上大切にされていることは何ですか?
一番大切なのはコミュニケーションであると考えています。同じ治療や手術を行うにしても、お互いの信頼関係が出来ているかによってさまざまな面で違ってきます。治療を円滑に進める上で、信頼関係はとても大切なのです。そうしたペットと飼い主さんとの関係性を築くためにはライフスタイルに合わせた治療をお勧めするということも大切ですが、定期的にお会いして顔を合わせるということが基本になります。そのために、当院ではウェルネスプログラムという定期通院システムを導入しています。
ウェルネスプログラムとはどのようなシステムなのですか?
年に一度の血液検査、尿検査などの健康診断に加えて、毎月一回の身体検査を年会費で受けていただけます。身体検査のついでに爪切りや耳掃除といったケアを受けることも可能となるお得な仕組みとなっています。以前勤務していた病院でもご好評をいただいていたのですが、病気を早期発見するために欠かせない「定期通院」をサポートする効果的なシステムです。毎月当たり前に通う場所としてペット自身が認識することで、スムーズに通院できるようになりますし、トータルに通いやすい病院になれればと思っています。
最後に、地域の皆さまにメッセージををお願いします。
地元出身とはいえ、ほとんどの方が「はじめまして」の関係になるとは思いますが、スタッフ一同ペットと飼い主さんの目線に立って、おもてなしの心でお迎えします。問題や不安な気持ちを抱えていらっしゃる方は、ぜひ一度ご来院ください。