鵜飼 純 院長の独自取材記事
おたき動物病院
(船橋市/滝不動駅)
最終更新日: 2023/01/22
新京成線・滝不動駅から徒歩10分ほど。伝統ある御滝不動尊前にある「おたき動物病院」は、2013年に開業した真新しいクリニックだ。院長の鵜飼純先生は、地域に密着した動物医療を実現するため、往診も積極的に実施。3つの動物病院に勤務し、東京大学附属動物医療センターで研修を受けた経験から、手術や緊急の対応にも落ち着いて対処してくれる。診療対象は、犬、猫、うさぎ、フェレット、ハムスターなど。院内には事故に遭って院長に助けられた猫が飼われ、受付では看護師が優しい笑顔で迎えてくれる。広々とした待合室は、ほっとできる雰囲気だ。実直に1人ひとりの飼い主に寄り添い、ペット1頭ごとにきめ細かく診察する鵜飼院長に、クリニックの特徴を中心に話を伺った。 (取材日2015年6月12日)
時間外対応や往診も行う、地域密着型の動物病院
獣医師になろうと思ったのはなぜですか?
小さい頃から動物が好きだったんです。団地に住んでいたので犬や猫は飼えなかったのですが、インコやカメの世話をしていました。また、動物の図鑑を見るのも大好きで、テレビで動物が出てくると、名前を当てては喜んだりしていましたね。それで小学生の頃からずっと、獣医師か動物園の飼育員になろうと一途に思って、北里大学の獣医学科に進みました。専門は内科全般です。大学卒業後は、3つの動物病院に勤めたほか、東大の動物医療センターで約2年研修を受けました。
開業前のエピソードで、印象に残っているものはありますか?
東大の研修医になるきっかけになった飼い主さんと猫のことは、とても印象に残っています。クッシング症候群という病気だったので、東大を紹介することになりました。その猫は最終的には亡くなってしまったのですが、一時は容体が安定し、飼い主さんと落ち着いた時間を過ごすことができました。また腫瘍の犬を飼い主さんの代わりにお預かりして、毎月車で東大に連れて行っていた時期もありました。その子のこともよく覚えています。できるだけのことをしたいという一心で、最後まで寄り添って飼い主さんと連帯感を持って取り組むことができました。その流れで東大で見学させてもらうようになり、その後研修医になったんです。
クリニックについて教えてください。
2013年に開業したので、現在3年目です。場所は自分自身がずっと過ごしてきた新京成線沿線で探しました。道路事情からいっても来やすい場所ですし、目の前に御滝不動尊と御滝中学校があり、地元の方には「滝中の前」で通じるわかりやすい場所です。駐車場スペースは3台あります。御滝不動尊の隣には公園もあるので、散歩がてらいらっしゃる方も多いですよ。内装は清潔な雰囲気にしたかったので、全体を白でまとめました。外観にはぱっと見て動物病院とわかるように、木や犬、猫のシルエットのシールを貼っています。ロゴは私が原案を書いて、業者さんに作ってもらったんですよ。「OTAKI」の「O」を使って、犬にも猫にも見えるぽっちゃりした動物の顔をデザインしています。設備としては、レントゲン、手術の際に脈波や血圧を見るモニターなど一通りそろえています。ペットホテルは犬も猫も6、7頭までお預かり可能です。犬が鳴いたりすると猫は萎縮しがちなので、別室でのお預かりや待合室も、犬と猫が同時に来ても大丈夫なように広めにするなどの配慮もしています。診療時間は平日は19時まで、日曜・祝日も午前中は診療しています。時間外受付も対応出来る時には行っています。つい先日も嘔吐と血便で犬を連れてこられた方がいました。翌日には回復したので良かったです。当院で対応が難しい場合は大学病院などをご紹介していますが、基本的には当院で診療しています。また、高齢の飼い主さんも多いので、往診も積極的に行っていますよ。
大切にしているのは、飼い主の話をよく聞くこと。年齢別の検診、往診の体制も充実
診療のスタンスとして、どんなことを心がけていますか?
最も大事にしているのは、飼い主さんの話をよく聞くことです。その上で、どんな治療や検査をするのか、一緒に決めるようにしています。まったく同じ症状などありませんので、1頭1頭ごとに飼い主さんの希望に沿えるようにしたいんです。それが地域密着型の診療につながるのではないかと考えています。ですから、診療時間は長くなることが多いですね。 勤務医時代も1頭にかける時間が長いと怒られたことがあるくらい(笑)、いろいろ聞いてしまうんです。でも、そうして得た情報が、治療に生かされることも多いんですよ。
診療している動物の割合はいかがですか?
当院は、犬だけでなく猫も多いんです。割合としては、犬4割、猫4割、うさぎ、フェレット、ハムスターが2割という感じです。犬猫には年齢別のワンワンドック、ニャンニャンドックを用意しています。若いうちは血液検査の項目数などを少なめにして、料金を抑えた受診しやすいものを、5歳を超えたら超音波も使用するしっかりパックを用意しています。犬・猫の5歳は人間でいうと中年期にあたりますから、5歳が1つの目安になりますね。特に猫は犬のように散歩をしませんし、年をとると余計に動かなくなるので、具合が悪いのかどうかわかりにくいんです。ですからやはり、年齢が上がると検診が大事になってきます。
手術はどういったものが多いですか?
多いのは避妊・去勢手術のほか、腫瘍や結石をとるものですね。また、歯のケアで麻酔して歯石を取ることも多いです。歯石が多いと、歯肉炎から細菌が入って全身的な影響が出ることがあるので、ある程度たまると除去したほうがいいんです。普段の診療で全身チェックしていますので、そういった時に歯石がたまっていたら、お勧めするようにしています。
往診にも力を入れてらっしゃるそうですね。
飼い主の方が高齢で通いづらい場合は、私が運転して伺っています。ペットタクシーもありますが、病院のスタッフが行くと安心していただけるようです。往診といっても、ご自宅ではできることが限られるので、病院に連れて戻ることも多く、そういう時は飼い主さんも一緒に乗っていただくこともあります。玄関先でも診ることもできますので、ぜひ気軽に活用していただきたいですね。
飼い主一人ひとり、ペット1頭ごとに、しっかりと最後まで寄り添って
ペットたちにはどんな思いを持って接してらっしゃいますか?
簡単には答えにくい質問ですが、生き物というのは、やはり特別な存在だと思うんです。1匹の虫にも命の尊厳があり、生きる権利があるのではないでしょうか。人間に飼われるペットたちにも当然、命の尊厳があります。ところが、私自身、猫を飼ったりうさぎを飼ったりしていますが、ペットを飼うという行為にはある意味人間のエゴが出る面もありますし、ペットとして飼われている動物たちはもはや人間なしでは生きられない存在です。そう思うと、ペットの幸せは飼い主次第ですし、ペットたちには本来の命をまっとうしてほしいですね。
飼い主さんにアドバイスがあればお願いします。
できればペットを連れて来院される際には、自分が病院にかかる時のことを考えて、ある程度ヒストリーをまとめて来てくださると助かりますね。いつから何が起きているのか、時系列で説明していただくと、診断もしやすくなります。時々、飼い主さんご本人が来られず、代理の方がいらっしゃる場合があるのですが、その時はメモ書きにして預けてくださるといいですよ。また、吐いた物、血がついた物、誤って食べた食品など、現物を持ってきていただくのも大切なことです。
お休みの日にされていることや、趣味はありますか?
音楽が好きで、大学時代にジャズサックスの演奏を始めました。上手いか下手かは別問題で、管楽器というのは、音とともに体が振動するのが単純に楽しいものなんです。最近は演奏する時間がなかなかとれないのですが……。ジョギングなどもしたいのですが、現在はほとんど休みなくここにいて、なかなか時間がとれないですね。近所の方には車が停まっていると私がいるのがわかるので、「先生、いつもいるよね」と言われたりしています(笑)。
日頃大切にしている思いについて教えてください。
大切にしているのは、自分がされて嫌なことはしないということでしょうか。先ほど申し上げた命の尊厳は、もちろん人にもあるわけです。ですから、お互いに人としてちゃんと接したいという思いがありますね。また、何事も人に助けられてやっていると感じるので、家族やスタッフには本当に感謝していますし、その気持ちをできるだけ言葉にするように心がけています。
最後に、今後の展望をお願いいたします。
これからも、地域に密着したオーダーメイドの診療で、一人ひとりのご希望に沿いたいと考えています。こちらの考えを押しつけるのではなく、個々の要望に応えるのが自分のスタイルだと思っていますし、それを貫きながらしっかりと最後までペットと飼い主さんと一緒に寄り添っていきたいですね。もちろん情報は提供しますし、技術的なことや機器の充実には努めていきますが、今は飼い主さんが動物病院を選ぶ時代です。たくさんの病院がある中で、当院にわざわざ来てくださるわけですから、「先生に診てもらえて良かった」「ペットが元気になって良かった」と言われるように頑張りたいです。そして、飼い主さんと無駄話しながら、いろんな相談にのっていきたいですね。飼い主さんはやはり価値観の近い獣医師に診てもらいたいものだと思うので、これを読んで何となく合いそうだなと思われたら、ぜひいらしてください。可能な限り、何でも相談にのらせていただきます。