石井健太 院長の独自取材記事
石井どうぶつ病院
(厚木市/愛甲石田駅)
最終更新日: 2023/01/22
大きな掃き出し窓から外光が差し込む明るい待合室に、真っ白な壁、木目を生かしたインテリア。愛甲石田駅より車で5分ほど、厚木市南部にある「石井どうぶつ病院」は、「病院らしからぬ」内外観が目を引く動物病院だ。北海道出身という石井健太院長と妻の石井賀子先生が二人三脚で診療にあたっている。ペットと飼い主両方の気持ちを大切に、コミュニケーションを重視した信頼に基づく診療がクリニックの基本方針だ。「獣医師がひとりで治すのではなく、飼い主さんと一緒にペットの疾患を治していく姿勢が大切」と語る石井院長に、この地域での動物病院開業に至ったきっかけから、かわいい盛りの子どもたちと過ごす休日のこと、地域でクリニックが果たすべき役割まで、幅広いテーマについて、楽しく話を伺った。 (取材日2015年7月3日)
殺伐とした現代社会で「思いやり」を育てるペットとの時間を支援
開院の経緯を教えていただけますか?
私は北海道の出身で、相模原の北里大学で獣医学を学ぶためにこちらにやってきました。地元での開業も考えたことはあるのですが、このあたりの環境が気に入ってこちらでの開院に至りました。神奈川のこのあたりでは「都市」と「自然」が絶妙のバランスで共存しているのが魅力です。便利な市街エリアへのアクセスも良いのに、少し車を走らせれば山あり川ありで自然を満喫できます。近所づきあいや自治会の行事なども比較的盛んで、3歳の娘と6ヵ月の息子がいるのですが、子育てにも最適な環境だと思っています。
どのようなペットが来院していますか?
犬猫を診療していますが、来院される数としては犬が多いです。環境の変化に弱い猫は、通院が難しいもの。私自身、猫を3匹飼っていますので、その難しさはよくわかります。猫は体を包まれると落ち着く習性があるので、タオルでくるんだり、洗濯ネットに入れた状態でケージやキャリーに入れて来ていただくことをおすすめしています。あと、この辺りではお年を召した方がペットを迎えるケースも増えているようです。ペットとの時間は人間に「癒やし」を与えてくれるだけでなく、他者への「思いやり」の大切さを再認識させてくれます。うちの猫たちも私の子どもたちと一緒に暮らしていますが、お互いに良い影響を与え合っているように感じるのです。自殺やいじめ、暴力などに溢れ、殺伐とした現代社会ですが、獣医師の立場でペットとの暮らしを支えることで、少しでもより良い社会を作るお手伝いをできればと考えながら、日々の診療にあたっています。
院内がとても開放的ですね。何かこだわった点などございますか?
ありがとうございます。ペットと飼い主さんの両方の気持ちを大切にできる動物病院でありたいというのがひとつ。それから、さまざまな意味で「オープン」なクリニックでありたいということも大切にしています。インテリアも大きな窓を採用し、天井を高くすることでオープンで入りやすい雰囲気にこだわりました。さらに、診療時にも情報を包み隠すことなく、「オープン」に伝えるということを心がけています。私自身が子どもを小児科に連れていく際などに、検査結果や具体的な治療内容を詳しく知りたいと思います。そうした経験から、当院ではできる限りの情報を飼い主さんと共有し、治療の選択肢を提示することで「一緒に病気と向き合う」という姿勢を大切にしています。選択に悩む方には、同じペットオーナーとして、飼い主目線からのアドバイスを差しあげることも多いです。
信頼関係を築くため、気軽な来院を促すサービスを提供
診療の一般的な流れを教えてください。
当院では「具合が悪い」と連れてこられたペットに対し、いきなり採血して検査するようなことはナンセンスだと考えています。まずは目に見える症状から原因を想定し、ガイドラインに従って身体検査をしていきます。五感をフル稼働させて診る、こうした診察こそが重要だと考えているのです。以前、食欲がないと訪れた猫ちゃんの不調の原因が血液検査をしても判明せず、よくよく口の中を見てみたら歯肉炎(口の痛み)だったというケースもありました。もちろん、診察により必要となれば検査をしますが、不要な検査はペット自身にとっても負担となります。一番の敵である「思い込み」を捨てて、さまざまな可能性を捨てずに丁寧に診ていくことが大切だと考えているのです。
診療はどのような内容が多いのでしょう?
ワクチン接種や定期健診といった予防的な通院が多いですが、症状を持つペットの場合、肝臓、腎臓などの疾患や糖尿病などの内科疾患、皮膚病などが多いですね。ペットは言葉を発することができません。元気がなく活動性が低い、食欲がない、散歩に行きたがらないなど、飼い主さんが普段と違う様子に気づいたら、一度診させていただければと思います。また、当院では診療時に爪切りや耳掃除などを無料で行うサービスも実施しています。ご不安はもちろん、病気の予防に対しての疑問点など、お気軽にご相談ください。
診療上で心がけていらっしゃることは?
ペットに恐怖心を与えないように、なるべく高い声で接するようにしています。言葉は通じなくても、ペットにムードは伝わります。忙しいからとギスギスした雰囲気で接していては、ペットの方から避けられてしまうのです。私は「母親が赤ちゃんに接するような」態度で、常にペットに接するように心がけています。ペットはもちろん、飼い主さんとの信頼関係も、スムーズな診察のために欠かせないものです。そのため、当院では「コミュニケーション」を大切にしています。
それでは、「コミュニケーション」のために気をつけていることは?
診察の際に、できる限りしっかりとお話させていただくようにしています。検査や診察の結果わかったことがあれば飼い主さんにご納得いただけるようにお話しいたしますし、その後の処置についても幅広くご説明するようにしています。あと、爪切りなどの無料サービスを行っているのも、来院回数を増やしていただき、飼い主さんと目を見てお話ししたいから。やはり、顔を合わせて直接お話しすることでしか築けないのが信頼というものだと思うのです。
地域に根差し、愛される動物病院を目指したい
心に残るエピソードがあれば教えていただけますか?
ペットを飼う以上、「別れ」は避けては通れないものです。もちろん、最期の時を一緒に迎えたことも多くあります。大切なペットを失った飼い主さんが、その悲しみを乗り越えた後に、新たなパートナーと一緒に来院してくださる時、大きな喜びを感じますね。「信頼してまた大切なペットを連れて来てくださった!」と率直にうれしいですし、獣医師冥利につきる瞬間でもあります。
お忙しいとは存じますが、休日はどのように過ごされていますか?
子どもが3歳、0歳とまだ小さいので、休日は子どもと遊ぶことがほとんどです。公園に行ったり、水族館、動物園などに出かけたり。ここは自然が豊かで遊び場にも困らないですね。あとは、他業種のグループでフットサルをしたり、中学から大学まで部活動でやってきたバドミントンのサークルに参加したり、体を動かしてストレスを発散することも。私は自宅兼クリニックでの勤務となり、気分転換が難しい環境ですので、リフレッシュのために休日は積極的に外に出るようにしています。良い仕事をするためには、遊びも一所懸命に取り組んで、常にフレッシュな状態で仕事に向かうことが大切だと思うのです。
今後このクリニックをどのように展開していきたいと考えていらっしゃいますか?
オープンから3年、多くのペットと飼い主さんに来ていただいていますが、まだまだ地域に根を張っているとは言い難い状態だと思っています。今後も現在のスタンスをキープしながら、さらに地域に根差した動物病院にできればと考えています。ペットと飼い主のみなさまのお気持ちを大切にできる、安心して通っていただけるクリニックでありたいですね。
来院を検討されているみなさまにメッセージをお願いします。
当然のことながら、獣医療に関しては、常に100%の力であたらせていただいています。その上で、飼い主の皆様とのコミュニケーションを大切にしようと考えています。ちょっとした疑問や不安点を聞きづらい病院では、ペットや飼い主さんのお気持ちに十分応えているとは言えません。不安やもやもやをそのまま持ち帰らせることはなく、納得して帰っていただけるクリニックであるように全力を尽くしますので、ぜひ一度ご来院ください。