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齋藤 央 院長の独自取材記事

さくら動物病院

(浦安市/浦安駅)

最終更新日: 2023/01/22

東西線浦安駅から徒歩5分ほど、浦安市の交通の中心やなぎ通りに面した「さくら動物病院」を訪ねた。ガラス越しに明るい光が溢れる院内は、淡いピンクを基調とした和む空間。受け付けスタッフの笑顔に迎えられ、馴染みの場所に来たような安心感を覚える。院長の齋藤央先生は、2006年に麻布大学を卒業。6年間勤務医として経験を積み副院長も務めた後、2012年に独立開業した。日常の診療から予防接種、去勢・避妊の手術、外科手術、健康診断まで幅広く診てくれるほか、ペットホテルと浦安市内では唯一、院内トリミング室も併設。「町の獣医師」として飼い主のニーズに応え、日曜・祝日の診療も行っている。齋藤院長に仕事への想いや診療において大事にしていることなどを伺ってきた。 (取材日2015年7月24日)

理想であり、原点でもあるのは「町の獣医さん」

獣医師をめざしたきっかけから教えてください。

実は小さい頃は動くものには恐怖心があって、あまり動物に触れませんでした。そこから獣医師になるまでにはいろいろな縁があるんですが、1つは妹が動物好きで昔から獣医師になりたいと言っていたこと。その影響もあって、家で初めてのペットとしてハムスターを飼うことになったんですね。そのハムスターを亡くしたのがちょうど進路を決める高校2年生の時。まだ将来何がしたいのかわかっていなかった頃です。自分の手の中で命尽きていくハムスターをみて、「なぜただ見ているだけなのか。何か自分にできることはないのか!」と考えて、獣医師に辿りつきました。そこからは、とにかく獣医師になりたくて一直線でしたね。実際になってみてつらいことや想像を越える経験も積み重ねてきましたが、不思議なくらい自分の理想通り。むしろ現実は思い描いたものよりもっとすごいものだった! というのが実感です。ですので、毎日楽しいです(笑)。

開業の場所として浦安を選ばれたのはなぜですか?

獣医師として、勤務医の時からいつか開業したいという気持ちは持っていましたが、なかなかそういう機会はありませんでした。それが結婚して妻の実家があるこの町に骨を埋めることになり、妻や父親、周りの家族に大きく後押しされて開院することに決めました。実は浦安駅周辺は昔ながらの下町。それにちなんで病院の名前はシャレた横文字よりコテコテの日本語名にしました。また、あまり「病院」という意識を持ってもらいたくなかったので、院内のあちらこちらにピンク色を使ってみたり、待合室から診察室へ続く「足跡」をつけたりといった遊び心も取り入れてレイアウトを作ってみました。開業してみて一番いいなと思うのは、飼い主さんとの距離がすごく近いこと。これまでの経験からペットホテルやトリミングまでトータルでケアするのが僕の理想です。現在浦安ではトリミング施設まで併設している病院は他になく、代わりにお洒落なトリミングサロンがたくさんあって、分業しているのが主流です。ただ動物病院でもシャンプーやカット、ペットホテルをやってほしいという飼い主さんのニーズは非常に多く、獣医師のアドバイスの中で行うトリミングや、健康状態や性格を十分考慮したペットホテルが行えるのが当院の特徴です。

普段から気軽に来られる場所なわけですね。

はい。最初にお話した獣医師になった理由からのつながりになるんですが、僕の理想の姿は、飼い主さんとたくさんお話をしてできることを1つずつやっていく、ちょっとしたことでも気兼ねなく相談できる「町の獣医さん」です。最初に僕自身が勤めた病院でも、今のうちぐらいの規模からスタートして、勤めているうちに来院される人が増え、獣医師のニーズも多くなり、病院がどんどん大きくなっていく過程を真っ只中で体験し、CTを中心とする高度医療も担当しました。非常に良い経験だったと思います。しかし、高度医療ができるようになっても治すことができなかった患者さんと向き合ううちに、ふと立ち止まってしまったんです。そこで「自分はどんな獣医師になりたいのか、自分はどうやって動物たちと向き合いたいのか」をもう一度考えたのですが、その答え、自分の原点はやっぱり「町の獣医さん」というところにあったんですね。開院する時にもそう思いましたし、日々の診療でも感じています。トータルケア、常に飼い主さんの近くにいるということ、動物を目一杯触って触れ合うことが一番大事ですね。僕の性格にも合っていると思います。

診察室でしゃがむことで、上から目線では見えない発見がある

診療上、特に力を入れている分野などはありますか?

僕の原点は「町の獣医さん」であり、そうである以上何でも屋であるべきだと思いますので、あれが得意とかこれが得意とかいう前に何でもやります。ただ例えば以前手がけていたようなCT画像診断など、興味を持っているものはたくさんありますよ。現在の当院の設備では、デジタルレントゲン、超音波、内視鏡による検査や半導体レーザー治療などに対応が可能です。ただ、町の獣医師にとっては「何を持っているか」ということより、その道具や技術をどれだけ実際の治療の役に立てることができるか、個々の状態をきちんと把握してその子にとって本当に必要なことを見つけてあげられるかの方が、よっぽど大事なことですよね。もっとも、その子に対して一番良い治療は何かを判断するためには、「最先端」と呼ばれるものまで幅広い知識が必要になるので、それは常に持っているべきだと思っています。

内視鏡は最近導入されたのですね。

内視鏡外来自体は、僕ら小動物を診る獣医師の世界ではすでに一般的です。内視鏡を使うケースとして一番多いのは、何か食べちゃいけないものを食べちゃったという場合です。それを取り出すのにお腹を開くのはリスクがあり、他の方法で取ってあげられないかなという時に、内視鏡を使って取ることもできます。胃腸疾患が続く時も内視鏡を使って検査することで有用な情報が得られますね。今までは検査が必要な場合ほかの病院に行ってもらう必要があり、飼い主さんに手間をかけさせてしまっていたので、そのまま外来診療の中でできるようになったことが嬉しいです。ただ忘れてはいけない大事なことは、毎日のように何か飲んじゃったというケースは発生しますが、いつも手術をするわけじゃないし内視鏡を使うわけでもないということ。どう対応するか適切な判断ができるかが、僕ら町の獣医師の腕の見せ所ですね。内視鏡もあくまで治療や検査の方法の1つで、できることによって選択肢が1つ増えたということに過ぎません。それが最善でなければ「使わない」という選択肢もしっかり持っておくことは大切にしています。

先生が診療の際に大事にしていることを教えてください。

僕自身が風邪を引いて内科に行った時のことなのですが、お医者さんは聴診はしてくれた、けれど少しお話をしたら体に触れることもあまりなく、カルテが入っているパソコンの画面と向き合っていた、ということがあり、これは僕の目指す獣医師像ではないなと感じました。もちろん人と動物ではまた違いますし、その先生が悪いわけじゃありません。ただ、僕ら獣医師が毎日診させてもらっているのは生身の生き物で、言葉で伝えられない動物。だからまずは、たくさん時間をとって飼い主さんからどんな些細なことでもいいから目一杯話を聞くこと、それからどんな時でもペットの体を触らせてもらうことは大事にしています。もっとも、この辺りはおそらくどの先生もやっていらっしゃることですね。あと僕がもう1つやっていることがあって、それは診察室でしゃがむこと。診察する時に下から見るんです。というのも、立っているとどうしても見下ろす形になるんですが、そうなると動物たちの目線ではないんですね。しゃがんで動物と同じ目線からあるいは下から見ると、その子が見ている世界が見えたり、飼い主さんの気付かなかったことがわかったり。しゃがむことで発見したことも多いので、とても大事にしています。

飼い主さんにもスタッフにもどんどん口出ししてほしい

ペットに向き合う時はどんなことに注意しているのでしょうか。

割と好きなのは、どうしても噛んじゃうとか暴れちゃって爪が切れないとか……。他の場所で治療を断られてきた動物たちへの対応です。そういう子に対して僕は挑むんです(笑)。そういう子たちはやっぱり何か病院の雰囲気が嫌いだったり、されること自体が怖いからそういう風になっているんですね。例えば爪を切るのでも、最初から口輪をつけて抑えつけてされるのでは恐怖心や病院を嫌う気持ちが大きくなるだけ。だから敢えてそういう子には、何もなくてもできるように頑張ってみます。どうやってするかは僕の腕の見せどころ。無理せず動物の表情をみながら進めています。1回でできなければ2回、3回と。時間をかけてもいいから、最後にはしっかり改善して飼い主さんが喜んでくれることも結構あります。医療や治療とあれこれ言う前に、しっかり動物たちと向き合う気持ちを大切にしています。

スタッフさんともとても仲が良さそうですが、病院をまとめる上で工夫されていることはありますか?

飼い主さんに対してもそうなんですが、僕が決め過ぎないことです。僕はあくまでトータルケアの中の医学分野担当の位置。トリミングスタッフはトリミングに関しては僕より実際に動物たちの体を触っていたり、知識を持っていたりすることがあるので逆に教えてもらいますし、僕も「どう思う」とか「どうしたらいいと思う」とか問いかけています。そうして返ってきた答えを獣医師として組み直して飼い主さんにお話するんですが、これも僕がこうしますというのではなく、飼い主さんにも加わってほしいんですね。だから「こう思うんだけど何かほかの方法はありますか?」「方法AとBがあるけれどどっちの方がいいと思いますか?」と、逆に問いかけちゃうこともあります。そうすると例えば「うちの子ならAの方がいいかもしれない」と答えてもらったり。もちろん獣医師の役目として適切でない場合は矯正しますが、そうやってスタッフにも飼い主さんにもどんどん口出ししてほしいんです。それにより、飼い主さん自身にも自分のペットを今治しているんだという心構えもできてきますし、そんな風に思っている飼い主さんの気持ちは動物たちにも必ず伝わります。

今後取り組んでいきたいこと、将来の展望についても教えてください。

「町の獣医さん」であるというスタンスは変わらず、医療を中心としたトータルケアをそのままの形で同心円状に大きくしていくことです。現在、一般診療の他にも、市が助成を行っている地域猫活動に参加し、また警察署と協力して保護動物の救急診療を行うこともあります。また、微力ではありますが動物愛護センターへの支援協力を皆様に呼びかける活動もしています。飼い主様や地域の皆様、そして動物たちの中にはまだまだ僕の知らないニーズが、僕が獣医師として役立てることが眠っていると思うのです。そのためにももっとたくさんの方と話がしたいし、もっと勉強する必要があるなと感じています。それぞれに応えられるような柔軟性をつけていきたいですね。トータルケアの本質を変えずにまわりの方々と一緒になって地域密着型の大きな円を広げて行ければと思っています。

最後に地域の飼い主さんたちに向けてメッセージをお願いします。

医療行為はもちろんですが、みんなで動物たちを支えていく中で、医療部門のアドバイザーの1人として何かお手伝いできればなと思っています。病院には気軽に立ち寄りやすいようにもしていますので、どんな些細なことでも僕に声をかけてみてください。皆様のためにがんばります!

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