河辺純雄 院長の独自取材記事
行徳どうぶつ病院
(市川市/行徳駅)
最終更新日: 2023/01/22
東京メトロ東西線・行徳駅を最寄とする「行徳どうぶつ病院」は、千葉県と東京都内に複数の病院を構える動物病院グループの中核になっている。院長の河辺純雄先生が30年ほど前に開院し、その後各医院の特色を打ち出しつつ、トリミングショップなども経営している大きなグループだ。同グループのコンセプトは、動物医療の質を向上させること。まだ動物病院に専門科という意識があまりなかった頃から、率先して専門的な診療に取り組んできた。本院である同院は、各分野の専門家が曜日ごとに交代で診察を行っている。経営者との視点と獣医師としての視点を併せ持つ河辺院長に、同院の特徴的な設備や機材、診察中の気配り、グループ内での連携などを中心に話してもらった。 (取材日2015年7月27日)
グループの中核になっている動物病院
開院にあたり、この地を選んだ理由をお聞かせください。
大学時代の先輩がこのあたりで開業していたのですが、その方が地元の静岡に戻られることになり、その後を引き継いだのが当院の前身です。当初はこの場所ではなく、少し離れた建物の一階でした。僕もすぐ近くの篠崎に住んでいましたし、両親も江戸川区出身なので、このあたりは馴染みのあるエリアです。最近は新しい家やマンションができたり、転勤族の方が多くて人の出入りも激しいですが、全体的には下町という雰囲気も好きですね。
こちらに来る動物の年齢や性別、症状に傾向はありますか?
ペット全般を診ていますが、やはり犬や猫が多いですね。景気の影響もあってか、子犬を飼う人が減っているので、全体的に見ると猫のほうが少し多いかもしれません。猫に子どもを作らせる飼い主さんはたくさんいますが、犬を繁殖させる方はあまりいませんからね。となるとペットショップやブリーダーから買うしかありませんがそれもなかなか難しいですからね。ただ、衝動買いをする人が減ったのは良いと思います。症状では、人間と同じく動物が長生きできるようになったこともあり、腫瘍を診る機会が圧倒的に増えています。
動物が好きで獣医師をめざしたとのことですが、ご自身でも昔から動物を飼っていらしたのでしょうか?
はい。小さい頃から犬・猫・セキセイインコ・ジュウシマツなどがたくさん家にいましたね。小鳥については小屋で飼っていたので、ジュウシマツがかなり増えたこともありました。大学では大動物、いわゆる馬や牛についても学びましたが、そういった動物は治療するか、残念ながら処分するかという選択になってしまうこともあるので、より長く、専門的な治療を行うことができ最後まで診ていられる小動物のほうを選びました。
こちらには、さまざまな専門分野の先生がいらっしゃいますね。
当院が最初に掲げたコンセプトの一つに、「動物の医療を専門化する」というものがあります。人間の医師であれば、内科の中でも呼吸器科や消化器科など、細かい科に分かれていますよね。しかし、ここを開院した当時、動物の医療についてはそういう概念が世間的にあまりありませんでした。そこで、動物の医療を向上させたいと思い、各分野により詳しい先生をお呼びしています。僕は歯科と皮膚科を主に診ていて、他に腫瘍科の先生や、神経科の先生も曜日によって来ていただいています。動物病院だと神経科を専門に診られる先生は少ないのですが、当院ではてんかんや脳の病気など幅広い症状を診ることができます。
さまざまな面で動物への配慮を忘れない
犬舎と猫舎が分けられているのは、どういったお考えやメリットがあるのでしょうか?
犬は他の生き物や飼い主さん以外の人間をあまり気にしないことが多いのですが、猫は非常に気にするので、お互いにストレスを与えないためにこうしています。猫は、自分の家や飼い主さんから離れるという時点で大きなストレスになりますから。犬と猫はどちらもとても身近な生き物なので、同じように考えてしまいがちなんですが、そういった違いは他にもたくさんあります。
メタボリック・肥満科の外来というのは動物病院では珍しいですが、これはどのようなきっかけで始められたのでしょうか?
犬や猫の室内飼いが増えて、運動不足から肥満になってしまうことが多くなったからです。犬には運動療法をよく使います。ジェットバスで負担を和らげながら運動量を増やすという方法があるのですが、個人宅ではなかなかできませんよね。しかし、そういったリハビリをきちんとして、膝を悪くしていた犬が治ったこともありますので、動物でも運動療法は効果的だと思います。難しいのは猫ですね。理想を言えば、やはり運動をさせるのが良いのですが、遊んでいても飽きると動かなくなってしまいますから。猫はカロリー制限をしたり、便秘の改善を図るのがいいですね。乳酸菌を与えて腸内環境を良くしたり、お腹をマッサージしたりして便通を促すことで、ダイエットさせることもできます。
レーザー治療はどのような症状に使うことが多いのでしょう?
多種多様な症状に効くものなので、ほぼ一年中、一日に何回も使っていますね。今まで使った例ですと、外耳炎・関節炎・椎間板ヘルニア・歯肉炎・その他外傷やかゆみなどがあります。外耳炎が一番多いかもしれません。5〜10回照射すればほぼ確実に効果が出ますし、ほとんど痛みがないので、動物にとっても負担が少ない治療法です。キセノン光というもっと効果の高いものもあるのですが、「光」とついている通り、カメラのフラッシュのように一瞬強く光るので、動物が驚いてしまうため使っていません。レーザーは皮膚の下3センチ、キセノン光だと5センチまで届くといわれていまして、より深い部分の治療ができるというメリットもあるのですが、動物に負担のないほうを選んでいます。
初心を忘れず、グループ内での連携を強めていきたい
動物や飼い主さんに接する際、最も心がけていらっしゃることはどのようなことでしょうか?
飼い主さんにわかりやすい説明をすることと、心配や不安を解消して差し上げることですね。獣医師や看護士からすると「このくらいなら大丈夫」とわかるようなことでも、飼い主さんはとても心配してらっしゃるということはよくありますから。何をしてほしいのかうまく言葉にできない方もいますので、そこはくみ取れるように心がけています。コミュニケーションを積極的に取るということですね。これは他の先生やスタッフにもいつも言っています。
大変お忙しいと思いますが、趣味はおありですか?
海外旅行が大好きです。オーストラリアやタイ、台湾など比較的行きやすいところが特に好きですね。最近は国際情勢や物価の変動が激しくて、昔好きだったところが行きにくくなったりしてしまっているのですが、これは仕方ないですね。その代わりに発展して行きやすくなったところもありますし。今はタイがすごく発展していて、バンコクの日本人学校はパンクしてしまっているそうで、他の町に日本人街ができています。そのうちリゾート化するかもしれませんし、そういった変化を見ていくのも楽しいですね。
今後の展望についてお聞かせください。
「気楽に行ける、専門性の高い病院」になりたいなと思っています。ここはもちろん、他のグループ内の医院も特色をより磨いていくことで、飼い主さんや動物にとって頼れる病院になりたいです。今でも、犬や猫以外のエキゾチックアニマルについては、浦安市の今川どうぶつ病院をご案内することが多いです。また、当グループではトリミングショップも経営しているのですが、そちらとも連携して、皮膚病のアフターケアなどにも力を入れていきたいと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
家庭の事情やご自身がシニアになられて、「動物は好きだけれど飼えない」という方もたくさんいらっしゃいますが、動物とふれあうことで得られるものもたくさんあります。ペットのお世話をするために生活リズムが整ったり、撫でているだけで癒されたり、人と話をするきっかけになったりするんです。僕も以前、特別養護施設に自分の犬や猫を連れて行ったことがあるのですが、皆さんとても良い表情を喜んでくださいました。動物の持つ癒しの力は、世間で知られているよりずっと大きいものです。最近はシニアの方がペットを飼いやすいように支援している団体もありますので、興味のある方はそういったところへ相談して、動物の良さを感じていただきたいなと思います。今飼っていらっしゃる方は、定期的に動物病院に行って、何かあったときに話しやすい関係を作っておいてください。