若月 心 院長の独自取材記事
ジェットどうぶつ病院
(船橋市/東船橋駅)
最終更新日: 2023/01/22
千葉県内の中でも都心に近い立地にありながら、住宅地が広がり落ち着いた雰囲気の船橋市。2014年10月、東船橋駅から6分ほどの場所にジェット機好きな若月心院長が「ジェットどうぶつ病院」を開業した。「居心地の良い空間づくりにこだわった」という待合室は、温もりを感じる照明、飛行機型の時計や模型などが飾られているなど患者目線を重視されていて、初対面の患者同士の交流が深まることもあるという。自身も自宅で犬、猫と暮らす若月院長は、医院のサイトやSNSを通じて、飼い主目線での役立つ情報を数多く発信し、患者からも評判だ。ムダな空間がないように設計された院内には、2つの診察室、手術室、酸素室、レントゲン室などがL字型の空間に配置されている。若月院長に、動物医療への思いを聞いた。 (取材日2015年8月21日)
気軽に立ち寄ってもらえるように、待合室をアットホームな雰囲気に
「ジェットどうぶつ病院」という名前の由来を教えていただけますか?
ジェット機好きがこうじて「ジェットどうぶつ病院」という名前にして、ロゴもジャンボ機の尾翼をイメージしました。高校生の頃から飛行機が好きだったのですが、今でも時間があるときには、飛行機でいける旅行を計画するのが楽しみです。病院の待合室にも模型を飾っていますし、頂き物の手作りの時計も飛行機の形をしている珍しい物でとても気に入っています。待合室では、飼い主さんも不安でしょうし、中には落ち着かない子もいるので、ここにいるだけで落ち着く空間をつくりたいという思いがあって居心地の良さを重視した空間づくりをしています。待合室は北欧をイメージしたアットホームな雰囲気を大切にしていて、座り心地の良いベンチを配置し、床の色は落ち着けるウッド調にしています。
診察室が2つあるそうですね。
当初は、診察台を1つしか置いていなかったのですが、もともとどんなに狭いところでも診察室は2つ欲しかったので、春が来る前にもう一つ増やしました。2ヵ所あると、患者さんで混み合ったときや処置に長引く子がいても診察室に移動して待っていてもらえますし、ワンちゃんがいっぱいきているときにネコちゃんがきた場合は、ネコちゃんには空いている診察室で待っていてもらうこともできます。20坪という制限があるので、なるべく狭くならないように無駄な空間をなくして、すべての空間をL字の部屋に集める設計を採用しました。
先生が診療で大切にしていることは何でしょうか?
病院だから怖いというのではなく、気軽に来てもらえるような雰囲気を大事にしています。それから、飼い主さんの希望は尊重しつつ、いろいろある選択肢の中からどういう治療をするか決めていくことと、治療の際は動物に負担がかかるようなことは無理にしない、怖がる治療をしないということにも気を付けています。その点では、看護師さんが優しく患者さんや飼い主さんに話しかけて和ませたり、猫ちゃんの場合は、周りが見えると怖がるので、さっと顔を隠して周りが見えないようにしてくれたりといった、細かな配慮をしてくれるので助かっています。病院は、注射など動物にとって痛いこともしなければならないので、嫌われるものだと思っていましたが、お散歩の途中など用事がなくても立ち寄ってくれる子が何頭かいて、窓ガラスの外に張り付いて気付くまで尻尾を振って待っていてくれる様子を見るととてもうれしいですね。
看板犬の「ラジオ」と猫の「テレビ」とともに、患者さんの気持ちにより添う治療を
獣医師をめざしたきっかけを教えてください。
幼少期から動物好きだったのですが、輪をかけて家族が大の動物好きということもあり、実家ではハムスターやリス、それからヒメウズラやモモンガ、セキセイインコなど様々な種類の動物を飼っていました。ベランダが動物園のようで、当たり前のように動物好きになっていましたね。いつかここにも水槽を置いたり、鳥を飼ったりしたいと思っています。もともと動物が好きだったことと、医師という仕事へのあこがれからこの道に進みました。
大学時代の思い出のエピソードはありますか?
大学は、藤沢にある日本大学に通っていました。最初は、臨床の道に進むことに対して迷いがあったのですが、先生から夏休みに牧場を紹介されて、北海道に1ヵ月牧場の手伝いに行ってみたらとても楽しかった。それと、もともと動物の中でも馬が好きだったものですから、馬の獣医師になろうと考えるようになりました。その先生がいなかったら今の自分はないと思います。卒論も馬関係でした。大学時代の牧場実習もとても楽しかったですね。実習がない日にも友達と一緒に早起きして乳搾りに行っていました。当時は、全ての牛の名前、誰がどこの部屋に住んでいてということも覚えていました。卒業後は岩手県の動物病院に勤めました。盛岡競馬があるので馬の診察も多いのですが、実際には犬、猫との触れ合いも多くなり、診療が面白くなっていきました。横浜市内や船橋市内の病院で勤めた後、2014年10月に開院しました。
飼い主さんから、ブログの内容が好評だそうですね。
看護師さんと交代で好きなことを自由に書いています。「ラジオ」という犬と「テレビ」という猫のことも書いています。ラジオは、岩手で働いていた時に出会ったのですが、どうしても飼いたくて、当時の院長に熱い思いを綴った手紙を書いて、やっと譲ってもらいました。もともと散歩に行ってもすぐに帰りたがり、他のワンちゃんとも友達になれなかったのですが、当院に来るワンちゃんと会って一緒に遊べるようになってきて、11歳という老犬でも変化があるのですね。犬を飼うようになって、患者さんの目線が昔よりわかるようになりました。ラジオは、一時は歩けなくなったこともあって、地元の病院で手術をした経験もありますし、白内障も進行しているので、同じように犬や猫を飼う飼い主さんの気持ちがよくわかります。今では、ヘルニアではなく別の症状で歩けなくなっていたことがわかって、リハビリをして歩けるようになりました。当院でも、同じような症状の子が通っているので、すごく元気な飼い主さんであっても「自分だったら不安だろうな」という思いもあって、患者さんだけではなく、飼い主さんに対する心のケアにも配慮して治療にあたっていきたいと思っています。
健康であっても、食生活に注意することが大事
自宅での犬・猫の食事については、どんなことに注意するべきでしょうか?
テレビは、まだ4ヵ月の子猫。いたずらっ子で、先日も茹でる前のパスタの袋を開けてバリバリ食べていたので、まだまだ放っておけません。犬もそうですが、人の食べているものがおいしいとわかると自分のご飯を食べなくなったり、人の食べているものを催促したりするようになるので、あげる癖をつけないように育てています。病気などで食事制限が必要なときにも、偏食だと食べられるものがなくなってしまうので、日頃の習慣が大事です。それから、フード選びはとても大事なので、月に2回院内でフードの勉強会をしています。
休診日は週1日だそうですが、先生自身のリフレッシュ方法などはありますか?
今のところ丈夫なので、特別な事はしていませんが、休みの日は5時に起きて、買い物に出かけたり、わんちゃんと一緒に車に乗って出かけたりしていると一日が長く感じますし、充実するのでお勧めです。もともと、朝方人間なので、理想は朝5時から始めたいくらいなのですが、それだと患者さんが来ませんから、朝は8時から夜は19時までにして昼は長めに空けています。そうすると、手術などがあってもゆっくり対応できるので。
今後の抱負やメッセージをお願いします。
病院を大きくしたいとは思わないので、知識や技術をつけながら、じっくり続けていきたいと思います。忙しいという理由で、患者さんから「あまり時間をかけてもらえなくなった」と言われないように、今できている治療を続けていきたいという思いです。たとえ、病院に用事がないときであったとしても、お散歩の途中に体重を計るだけなどでも、気軽に立ち寄ってほしいと思っています。私自身、診察の合間に待合室で飼い主さんや患者さん同士が仲良く話したり遊んだりしているのを見るととてもうれしいので、今後も居心地のいい空間づくりに努めていきたいです。