金子大佑 院長の独自取材記事
パルマ動物病院
(相模原市南区/古淵駅)
最終更新日: 2023/01/22
ラテン語で手のひらという意味を持つパルマをクリニックの名前にしたのは「動物に触れて診ることを大事に」という考えにも由来すると教えてくれた院長の金子大佑先生。開業をめざしたのは勤務医時代、飼い主さんとコミュニケーションをとって仲良くなるのが好きだったから。幼少の頃から動物を愛し、犬や猫を守ることをしたいと考えてきた。現在は相模原の民間ボランティア団体と協力し、医療の側面から殺処分ゼロ活動に参加。神奈川県の猫に関しては昨年、多くの協力とボランティアの尽力により犬猫の殺処分ゼロを達成した。「今年から市とボランティアさんが共同事業という形になったので、今後ますます良い方向に動いていければ」と話す金子先生からボランティアのことだけでなく、診療にかける思いをじっくり語っていただいた。 (取材日2015年9月29日)
入りやすく話しやすい雰囲気を大切にしたクリニック
かわいらしいクリニックですね。開業にあたり、こだわった部分はありますか。
私の通っていた大学の教授がテナントのオーナーさんと知り合いで、動物病院を入れたいということでこちらでの開業が決まったため、もともとあった建物ではあるのですが、飼い主さんと動物にとって入りやすく、検査の堅苦しさを感じさせない雰囲気になるよう意識しています。クリニック内の掲示物は私が文章を書いて下書きをし、後は「かわいらしくしてください」と看護師さんにお願いして描いてもらっています。飼い主さんとしていらした保育園の園長先生もほめてくださいました。私が診療の際に心がけているのは、「飼い主さんと動物にとって負担をかけない診察をすること」。ストレスを与えないためには内装も大事だと思っています。
当クリニックの取り組みや診療ポリシーを教えてください。
病気の中でも知っていれば必ず防げるものがあります。業者さんからの啓発ポスターもいろいろありますが、堅いイメージのものや難しいものもありますので、オリジナルのポスターをつくって見やすくし、啓発活動にも力を入れています。診察の待ち時間を有効に過ごせると、好評なのでうれしいです。予防治療ということであれば定期的な健康診断もそうですが、体重測定だけでも来てほしいというのが本音です。それだけで来院するのに抵抗があるという方もいらっしゃいますが、体重の流れをこまめに見ていれば異常があったときでもすぐにわかります。たまに飼い主さんと病院前の歩道で会うと、「体重測っていく?」「じゃあ測っていこうかな!」といった感じで気軽に測ってくださる方もいらっしゃって、そのほうが動物にとっても負担が少なくて済むんですよね。自ら診察室に入ってくれる子もいるぐらいです。気兼ねなくふらっとお散歩がてらに立ち寄っていただけるぐらいで良いと思います。
勤務医のご経験があるとうかがっておりますが、開業までの経緯を教えてください。
場所にこだわりはなく獣医師として就職先を探す中で、静岡にある病院の院長さんがボランティア意識の高い方だったんです。しかも当時はすべてをお一人でされていて、その姿から学べることの多さを感じたため、そこで6年間お世話になりました。大学の研究室で繁殖を専門に学んだことが直接は診療に関わっていないものの、繁殖の際は子犬や子猫が生まれてから世話をすることも多く、静岡の病院でも野良は子猫がすごく多かったので、子犬や子猫の扱いは多少心得ているかと思います。小動物臨床については学校で習うのと実際の現場とではまったく別なので、在学時には開業したいと思っていませんでしたが、勤務医として働くうちに、患者さんともっと関わっていきたいという思いや病院が増えれば動物の殺処分も減らせるのではという思いが高まり、開業することを決めました。
ボランティアのサポートも積極的に行う
保護活動をしたいという思いが開業を後押ししたんですね。
思えば、子どもの頃からよく猫を拾っていました。拾った猫を学校に連れて行ってクラスの皆に話したら、皆が頑張ってお金を集めてくれて。死にそうな猫だったんですけど、そのお金で医療費をまかなえたんです。ただ、野良猫でも結構なお金がかかったので、だったら自分が獣医師になって安くすればいいじゃないかと思ったのが獣医師をめざしたきっかけですね。なので、今はその延長のような感じです。現在は神奈川県の民間ボランティア団体に協力させていただいています。里親を探している間に病気になってしまった子の治療を行うなど、主に医療の面でできる限りお手伝いさせていただいています。ボランティアの方々が日々頑張ってくださったお陰で、昨年の神奈川県の犬猫殺処分はゼロになりました。本当にうれしくて皆でよろこびましたね。神奈川県には社会貢献的意識を持つ人が増えているんだろうなと感じています。
診療の際に心がけていることを教えてください。
最初にもお話しましたが、負担をかけない診察をすることですね。飼い主さんだけでなく治療する動物たちが来やすいようにというのは常々心がけています。飼い主さんがリラックスすることで、動物たちも「これは散歩の延長かな?」と思ってくれるので、診察にちょっとした世間話を挟んでなるべく「さあ、やるぞ!」という意識を見せずに診療を行うようにしています。診察は勤務医時代の先生から、「手当ての語源は“手を当てる”だよ」と言われていたことを胸に、検査の数値だけを見るのではなく、実際に動物の体に触れて診ることを大事に、極力触って五感を使って治療をするようにしています。飼い主さんとの何げない会話から病気の原因が見えることもあるので、話して・触れてというコミュニケーションが大切だと感じていますね。
印象深い動物との出会いがありましたら教えてください。
珍しい病気にかかってしまった犬がいて、手術後もずっと経過観察をしないといけなかったので、飼い主さんに病院に通ってもらっていたことがありました。その後、その子は亡くなってしまったのですが、こちらもできる限り希望や要求に応えるようにした結果、安らかな最期を迎えることができ、最終的に亡くなってしまったのですが、飼い主さんに納得して満足してもらえたという感覚がありました。個人病院でできることに限界はあっても、そのできることをしっかり行えば、満足してくださる方はちゃんといるんだということを改めて思い知れましたし、飼い主さんとその子をどれだけ楽にさせてあげられるだろうと考えさせられた出来事でもありました。
散歩コースで気軽に立ち寄ってもらえれば
「楽にさせてあげる」というのは、具体的にはどういうことですか。
ペットの治療は飼い主さんには頑張っていただきたいのですが、病気の末期や老衰で寝たきりの子たちは、今をつらいと思いながら無理をして生きているわけでもないので、「この子はつらいんだ」と思う必要はないと伝えています。普段の診察でも「負担のかかることはさせない」と話しているので、「この先生は痛いことやつらいことは勧めないだろう」と思ってもらえていたのは、良かったと思っています。
お忙しいかと思いますが、休日はどのように過ごされていますか。
学生や勤務医の頃は剣道やヴァイオリンを楽しんでいましたが、今は保育園に通う息子と休日を合わせているので、一緒に家でゴロゴロしたり犬の散歩をしたりしています。千葉で野良犬だった子の里親募集として預かっている犬なんですが、フィラリアを持っていたことやほかの犬と仲良くなれない性格もあって、もう2年近く一緒に暮らしていますね。犬は人に喜んで抱きついて来るんですが、中型犬なので息子には痛いらしく、ちょっとおびえています(笑)。動物の健康のためにも家庭ではぜひ日常的に体に触ってあげてほしいです。そうすれば太ったか痩せたかがわかり、病気の発見にもつながります。特に毛が長い子は見た目だけではわからないので。今はインターネットでも病気の知識はたくさん手に入るので、ある程度自分で知ってみるのも良いですね。ただ疑問点は自分で判断せず、かかりつけ医に聞いてもらえればと思います。
クリニックとして今後、目指すところを教えてください。
散歩コースに気軽に立ち寄ってもらえる動物病院でありたいですね。「別の散歩コースもあるけど、あのクリニックがあるからこっちのコースにしてみよう」と言ってもらえたらうれしいです。スタッフを増やすことは考えていません。人が増えることによってできることは増えるかもしれませんが、担当の先生が変わることに不安を感じる飼い主さんもいらっしゃるので、今後も今の診療スタイルのままで、飼い主さんと動物にとって来やすくストレスを与えない診療を行っていきたいと思います。もちろん神奈川県の猫殺処分数が増えないように、そして犬殺処分数ゼロを目指して今後も継続してサポートしていきます。クチコミで来てくださる方が多いのもそういう姿勢をご支持いただいているのかなと思いますし、以前に来院された方が良かったよと紹介してくれる人ならお互いに信用もできます。そうやってコミュニケーションが増えていくのはとても良いなと思っています。